テザーCEO、S&PのUSDT格下げに「財務基盤は強固」と反論

USDTの安定性評価が引き下げ

米ドル建てステーブルコイン「USDT」発行元のテザー(Tether)CEOであるパオロ・アルドイーノ(Paolo Ardoino)氏が、同社の財務状況に関する懸念に対する反論を、自身のXアカウントから12月1日に投稿した。同氏の投稿は、S&Pグローバル・レーティングがUSDTの安定性評価を引き下げたとする「ブルームバーグ(Bloomberg)」の11月27日の報道を受けたものだ。

ブルームバーグによると、S&PはUSDTの評価を従来の「制約あり(Constrained)」から最下位の「弱い(Weak)」へ変更したという。その理由は、USDT準備資産におけるビットコイン(BTC)など高リスク資産の比率上昇が、価格下落局面で担保不足を招く可能性や、保管機関(カストディアン)、取引相手、銀行口座提供者の信用力に関する情報提供が限定的なことが挙げられた。

これに対しアルドイーノ氏は、2025年第3四半期(Q3)のアテステーション(保証業務)を引用し、「テザーは数十億ドル規模の超過準備バッファを維持しており、グループ全体の自己資本は300億ドルに近づいている」と反論した。同氏によれば、テザーはQ3末時点で約70億ドルの超過自己資本に加え、約230億ドルの留保利益を有しているという。

また同氏は、S&Pの分析が「米国債利回りによって毎月約5億ドルの基礎利益が生じている点を考慮していない」と指摘し、USDTの裏付け資産に関する財務的健全性は維持されているとの認識を示した。

アルドイーノ氏は投稿で、テザーグループの総資産は約2,150億ドル(約33兆4500億円)、ステーブルコインの負債は約1,845億ドル(約28兆7000億円)であると説明し、十分な資本水準を保持していると強調した。同氏は一部の批判について「数学が苦手なのか、あるいは競合を利する意図があるのか」と述べ、SNS上で拡散された懸念を否定した。

テザーは2021年以降、四半期ごとのアテステーション(保証業務)を公開しており、「認証済みユーザーからの償還要求を拒否したことは一度もない」としてUSDTの安定性は揺らいでいないと主張している。

今回の評価引き下げを巡っては、暗号資産取引所ビットメックス(BitMEX)の元CEOであるアーサー・ヘイズ(Arthur Hayes)氏も自身のXアカウントで見解を示している。

ヘイズ氏は、テザーが米国債利回りの低下による収益減少を見越して、ビットコイン(BTC)や金(Gold)などリスク資産の保有比率を高めている可能性があると指摘した。同氏は、仮に「金とBTCの価格が30%下落した場合、テザーの自己資本が毀損し、理論上はUSDTが債務超過となる可能性がある」と述べている。ただしこれはあくまでヘイズ氏の個人的な分析に基づく見方である。

同氏はまた「市場参加者はリアルタイムのバランスシート開示を求めるようになるだろう」と述べるなど、ステーブルコイン発行体における透明性が重要であることを強調した。

参考:ブルームバーグ
画像:iStocks/Максим-Ивасюк・Thinkhubstudio

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