ブラジル中銀が暗号資産の規制強化へ
ブラジル中央銀行が、暗号資産(仮想通貨)を含む仮想資産の取引に関する待望の新規則を11月10日に公表した。これにより、既存のマネーロンダリングおよびテロ資金供与対策に関する規制が仮想資産サービス提供会社(SPSVA)にも適用されることになる。
ラテンアメリカ最大の経済規模を持つブラジルでは、2022年に暗号資産の法的枠組みが承認されていたが、その施行は中央銀行による補完的な規制整備に委ねられていた。中央銀行はその後、この問題について4回の公開協議を実施しており、今回の新ルールはその集大成となる3つの決議として示された。これにより、SPSAVの定義や認可プロセス、業務区分、監督対象が明確化された。
一方で同国では暗号資産の利用が急増しており、中央銀行総裁ガブリエル・ガリポロ(Gabriel Galipolo)氏は、米ドルなど実世界資産(RWA)に連動するステーブルコインの利用拡大が、違法行為に用いられる可能性に懸念を示していた。
中央銀行の規制担当ディレクター、ジルネウ・ヴィヴァン(Gilneu Vivan)氏は記者会見で、「新ルールにより、詐欺や不正行為、仮想資産市場を利用したマネーロンダリングの余地が減少する」と述べた。
新規制は来年2月に施行
中央銀行の発表によると、新たな規則は2026年2月に発効し、外国為替・証券ブローカーおよびディストリビューター(販売業者)、ならびにSPSVAの認可プロセスを対象とする。既存事業者には発効日から9カ月の移行期間が設けられ、この期間内に必要な認可取得や体制整備、自己資本要件を満たせない場合、ブラジル市場での業務継続は認められない。
新枠組みでは、SPSAVを「仲介」「カストディ」「ブローカー」の3類型に区分し、それぞれに応じた最低自己資本を設定。最低資本額は1,080万レアル(約200万ドル、約3億円)から3,720万レアル(約700万ドル、約10.8億円)までの範囲とされ、当初の協議案(100万〜300万レアル)より大幅に引き上げられた。
また、海外拠点からブラジル居住者向けにサービスを提供する暗号資産関連企業についても、ブラジル国内にSPSAVとしての法人を設立し、同国法に基づく監督を受けることが求められるとされる。従わない場合、ブラジル向けサービスの提供停止を命じられる可能性がある。
外国為替・資本規制の枠組みに正式に組み込み
政策当局は、ビットコインのような暗号資産に比べて価格変動が小さいステーブルコインについて、投資というよりも決済用途で利用される傾向が強く、多くの利用者が監督や課税がより厳しい従来型の決済システムを回避する手段として用いていると指摘している。
新規制のもとでは、法定通貨に連動する仮想資産の売買や交換は、すべて外国為替取引として扱われる。同様の分類は、仮想資産を利用した国際送金や支払いにも適用され、カード決済やその他の電子的な支払手段を通じて義務を履行する場合も含まれる。
さらに今回の枠組みでは、ステーブルコインに限らず、一部の暗号資産を用いた国際決済や自己管理型ウォレットとの間の送受金、暗号資産と法定通貨の交換など、クロスボーダー資本移動に関わる取引を、外国為替および資本取引規制の監督対象として位置付ける方向性が示されている。こうした取引を扱う認可業者には、一定額(コインデスクの報道によれば1件あたり10万ドル相当)の上限設定や、取引内容の月次報告義務なども課される見通しだ。
中央銀行は、この規制により、利用者保護、透明性、マネーロンダリング対策およびテロ資金供与対策に関する既存の規制をSPSAVにも適用するとともに、ガバナンスおよびセキュリティ要件、内部統制、報告義務その他のコンプライアンス上の義務を通じて、急拡大する仮想資産市場を正式な金融規制の枠内に取り込む狙いを示している。
※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
Brazil central bank tightens rules for virtual assets, cryptocurrency
(Reporting by Marcela Ayres; Editing by Toby Chopra and Conor Humphries)
参考:ブラジル中銀・コインデスク
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
画像:Reuters