炭素クレジットのトークン化を試験、透明性と標準化を目指す
米銀行大手J.P.モルガン・チェース(JPMorgan Chase)のブロックチェーン部門「Kinexys(キネクシス) ※旧Onyx」が、S&Pグローバル・コモディティ・インサイツ(S&P Global Commodity Insights)と提携し、炭素市場におけるアセット記録や決済のためのブロックチェーン利用の有用性を検証していると7月2日発表した。
今回の取り組みでは、S&Pが提供する「環境レジストリ」インフラを活用する。
S&Pの「環境レジストリ」は、再生可能エネルギー、植林、DAC(直接空気回収)などの温室効果ガス削減・除去プロジェクトを一覧化・検証するための基盤だ。
レジストリは、プロジェクトを追跡・検証し、カーボン・クレジット・オフセットを発行する。
今回の提携では、ブロックチェーン技術を用いてカーボンクレジットをレジストリ層でトークン化し、不変性や透明性、信頼性の高い記録管理体制を構築。特に、ボランタリー型炭素市場における標準化の遅れや情報の断片化といった課題の解消を目指す。
技術面においては、スマートコントラクトによるプロジェクト管理やクレジットのライフサイクル全体の自動化、さらに二重計上の防止やNDC(国別温暖化対策計画)への対応を強化する。これにより、国際的な気候変動目標の達成にも貢献する方針だ。
キネクシスでデジタル資産部門のプロダクト責任者を務めるキールティ・ムードガル(Keerthi Moudgal)氏は、「自主的炭素市場(ボランタリー・カーボン・マーケット)は今まさに革新の好機を迎えており、私たちは参加者と協力しながら新たなブロックチェーン技術の開発と実装に取り組むことを楽しみにしている。共通の目標は、情報と価格の透明性を高める標準化されたインフラを構築し、金融革新と市場の流動性拡大への道を切り開くことだ」と述べた。
ちなみにキネクシスは、2015年の立ち上げ以降、累計で1.5兆ドル以上の資産トークン化取引を処理しており、現在では1日あたり20億ドル超の取引が行われているという。
炭素市場における口座管理、プロジェクト運営、クレジットライフサイクル管理の技術検証を進める両社は、将来的な金融インフラの構築を見据え、標準化の実現可能性を模索している。
参考:発表
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