自称ビットコイン開発者クレイグ・ライトの25億ドル訴訟が裁判に

クレイグライトの25億ドル訴訟が裁判へ

自称ビットコイン発明者のクレイグ・ライト(Craig Wright)氏が、ビットコインネットワークの開発者に対し、数十億ドルの回収を求めている訴訟が正式に裁判になる。ロンドン裁判所が2月3日に発表した。

この裁判で下される判決は、開発者がデジタル資産の所有者に対し責任を負うかという審理の方向性を示すものである。一部の開発者の担当弁護士によれば、ライト氏が勝訴すれば、分散型金融(DeFi)の根幹に関わる課題へ問題提起することになると述べている。

オーストラリアのコンピューター科学者であるライト氏は、自宅のコンピューターがハッキングされたとされる際に、約11万1000BTC(現在の価値で25億ドル:日本円で約3,296億円)へアクセスする暗号鍵を紛失したとして15社の開発者を訴えている。

ライト氏が所有するセーシェル共和国拠点のチューリップ・トレーディング(Tulip Trading)は、3つの開発者に対し、ビットコインを取り戻すためのソフトウェアパッチを書く義務があると主張し、法的措置をとっている。

チューリップ・トレーディングのこの訴えは昨年却下されたが、控訴裁判所は2月3日、開発者は間違いなく所有者に対して責任があり、そのことについてはより上級な裁判で決定されるべきものであるという判決を下した。

コリン・バース(Colin Birss)判事は、「暗号資産(仮想通貨)はネットワーク開発者に『信託』されているため、例えば『所有者のビットコインを安全に転送できるようにコードを導入する』といった責務を開発者は負う可能性がある」というチューリップ・トレーディングの主張を引用しながら、同社にはもっともな主張があったとした。なおライト氏は声明で、この判決を喜んでいると述べている。

ライト氏は、2008年にサトシ・ナカモトというペンネームでビットコインのホワイトペーパーを書いたと主張しているが、この主張には多くの人が異論を唱えている。

彼の弁護士であるフェリシティ・ポッター(Felicity Potter)氏は、この判決は「適切に規制され、適切に管理されたデジタル資産のエコシステムに向けた一歩であり、潜在的なコイン保有者と現在のコイン保有者が同様に歓迎すべきもの」であると述べた。

上訴に関わった14人の開発者のうち13人の代理人を務めたジェームズ・ラムスデン(James Ramsden)弁護士は、ライト氏が勝てば巨額の賠償責任を負うことになるこの裁判について、コード開発者たちが「信じられないほど神経質」になっているとロイターに語った。また同氏は、裁判のいずれの結果も「価値のあるトークンやNFT、あるいはより広いブロックチェーン・システムに関わるかどうかにかかわらず、(分散型金融の)あらゆる側面に影響を与えるだろう」とも述べているという。

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※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
Self-proclaimed bitcoin inventor’s $2.5 billion lawsuit can go to trial – London court
Reporting by Sam Tobin;Editing by Sharon Singleton
翻訳:髙橋知里(あたらしい経済)
images:Reuters

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髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
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