アプトス、新実行エンジン「MonoMove」を2027年導入へ。検証でスマコン実行速度が最大55倍に

デシベルの実取引データを再実行して性能を検証

レイヤー1ブロックチェーン「アプトス(Aptos)」の新たな実行エンジン「モノムーブ(MonoMove)」の概要と性能検証結果が、同チェーンを支援するアプトス財団(Aptos Foundation)によって10月6日に公表された。

あわせて同財団は、モノムーブの2027年のメインネット導入計画を示した。同財団は、モノムーブをネットワーク史上最大のスケーラビリティ・アップグレードと位置付けている。

モノムーブは、アプトスでスマートコントラクトを実行する仮想マシン「ムーブVM(Move VM)」と、その周辺の実行基盤を刷新するものだ。実行エンジンは、ブロックチェーン上で取引や決済などの処理内容を定めたスマートコントラクトを実際に処理する役割を担う。アプトスラボ(Aptos Labs)は、この処理を高速化するためにモノムーブを開発した。

アプトス財団によると、オーダーブックや担保の確認、価格フィード、決済など、オンチェーン市場では継続的にスマートコントラクトが実行される。そのため、グローバル市場をオンチェーンへ移行するには、市場が動く中でも処理を継続できる実行性能が必要になるとのことだ。

今回の検証に使われたのは、アプトス上のオンチェーン取引プラットフォーム「デシベル(Decibel)」だ。デシベルは今年2月27日にアプトスのメインネットで提供が開始されており、注文や約定、キャンセルがブロックチェーン上で処理される。

今回、アプトスの開発元であるアプトスラボは、デシベルのメインネット取引をモノムーブで再実行した。その結果、現在のVMと比較して、担保の引き出しで最大55倍、ボールト(Vault)へのリクエストで最大40倍、無期限先物市場へのリクエストで最大38倍、注文の発注で最大22倍の実行速度を記録したとのことだ。

ただし、これらは個別のスマートコントラクト処理を比較した結果であり、アプトス全体の処理性能が最大55倍になったことを示すものではない。

一方、アプトスラボは、オーダーブックでの取引や貸借、決済など、一連の金融処理を再現した内部ベンチマークも実施した。この内部ベンチマークでは、エンド・ツー・エンド(処理全体)のスループットが現在のVMと比較して最大11倍に向上したとのことだ。なおスループットとは、一定時間内に処理できる取引量を示す。

さらに、最大11倍を記録した内部ベンチマークでは追加の最適化や、複数の取引を並行して処理するアプトスの技術「ブロックSTM(Block-STM)」をモノムーブに組み合わせていない。アプトス財団は、この検証ではモノムーブによる実行性能の向上によって、処理性能を制限する主な要因が実行処理からストレージへ移ったと説明している。

一方、アプトスラボはモノムーブで、実行速度だけでなく安全性の向上も図る。アプトスのスマートコントラクト言語「ムーブ(Move)」には、デジタル資産の作成やコピー、移転を制御するルールが設けられている。モノムーブはこうしたルールを維持したうえで、プログラムを実行前に検証する仕組み「ベリファイア(Verifier)」やVMの実装にバグがあった場合に備え、追加のランタイムチェックを導入する。

またアプトスラボは、本番環境への導入に向けて差分テストを進めている。具体的には、現在の実行エンジンとモノムーブに同じ処理を実行させ、結果に食い違いがないかを確認する。さらに重要なコンポーネントについては、数学的な手法でプログラムが設計通りに動作することを確認する「形式検証(Formal Verification)」も予定されている。

アプトスラボは、今年末までにモノムーブの必要な機能を完成させることを目標としている。その後、ガバナンス投票による承認を前提として、2027年にメインネットへ導入する計画となっている。

なお、金融市場のオンチェーン化は、アプトス財団とアプトスラボが以前から注力してきた分野でもある。両者は今年5月7日、自社プロダクトや研究、プロトコル基盤、取引・AI分野のパートナー向け戦略ファンドなどに5,000万ドル(約79億2,000万円)以上を投じる方針を発表していた。

参考:ザ・ストリート・ビットコイニスト
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

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