香港、金融戦略を「規模から機能へ」転換。人民元・金・暗号資産規制を拡充

オフショア人民元ハブ機能を強化

香港政府が、暗号資産(仮想通貨)の売買・保管・助言・運用サービスを対象とするライセンス制度を整備し、関連する条例改正案を年内に提出する方針を示した。同政府のクリストファー・ホイ(許正宇)財経事務・庫務局長が10月5日、立法会財経事務委員会の政策説明会で説明した。

許局長によると、今回の政策方針では2つの戦略転換を進めるという。1つは、金融市場の「規模」の追求から、実体経済への貢献や価格発見といった金融の中核機能の強化への転換。もう1つは、「金融の都市」から、金融を軸にテクノロジーやグリーン、民生分野の発展を支える「金融が力を与える都市」への転換だ。

重点施策の1つが、オフショア人民元ハブとしての機能強化だ。

香港金融管理局(HKMA)は中国人民銀行と通貨スワップ協定の改善を協議しているほか、7日物のオフショア人民元流動性入札制度を導入し、オフショア人民元建ての短期債務証券の発行についても検討する。

また香港政府は人民元建て債券(点心債)の発行を適時増やす方針だ。香港取引所(HKEX)は「オフショア人民元債券指数」を導入する予定で、指数連動型商品の開発なども視野に入れる。

債券通(ボンド・コネクト)の北向け取引で保有する中国国債や政策性銀行債については、規制当局の承認を前提に、11月から担保として受け入れる範囲をHKEX傘下の3つの清算機関に拡大する予定だ。

政府は人民元建て収入を活用し、中国本土との取引に関連する一部支出を人民元で支払うことも検討する。一方、許局長は政府支出の中心は引き続き香港ドルになるとし、香港ドルの地位や米ドルとのペッグ制には影響しないと説明した。

新たな成長分野としては、金を起点とした商品取引エコシステムの構築を進める。

金の中央清算・決済システムは2027年第1四半期(1〜3月期)の正式稼働を予定している。HKEXは、新たな人民元建て・現物受け渡し型の金先物契約について、詳細を年内に公表する方針だ。

また中国本土や海外の金関連事業者による香港市場への参入を支援するため、ワンストップ型の専用窓口「ゴールド・ホットライン」も設ける。

暗号資産分野においては、香港政府は、暗号資産のディーリング、カストディ、助言、運用サービスを対象とするライセンス制度を整備するため、関連する条例改正案を年内に提出する方針だ。

香港ではすでに暗号資産取引プラットフォーム(VATP)を対象としたライセンス制度が導入されている。今回の方針は、取引プラットフォームに加え、暗号資産を取り扱う周辺サービスにも規制の枠組みを広げるものとなる。

政府は暗号資産について、投資家保護や金融安定性を確保しながら、市場の発展を促す方針を掲げている。ディーリングやカストディなどをライセンス対象とすることで、香港で暗号資産関連サービスを提供する事業者に対する監督体制をさらに整備する狙いがある。

株式市場では、HKEXが上場制度の競争力向上に向けた見直しの第2段階について意見公募を進めている。また2027年上半期には、特殊テクノロジー企業向け上場制度の見直しに関する意見公募にも着手する予定だ。

税制面では、重点産業の対象企業に対し、最長5年間、5%または通常税率の半分となる優遇税率を適用する制度の導入を目指す。法人の場合、通常税率の半分は8.25%となる。関連する条例改正案は年末までに提出する方針だ。

人材育成では、香港金融発展局(FSDC)が今後2年間で、若者向けに1,000人分の金融業界インターンシップ枠を提供する。

このほか香港では、10月後半にアジア太平洋経済協力会議(APEC)財務相会合、2027年1月26〜27日に第20回アジア金融フォーラムが開催される予定だ。

参考:発表
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

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