米CFTCセリグ委員長、暗号資産・AI計算資源・予測市場の規制ロードマップ示す

「規制と革新は両立する」

米商品先物取引委員会(CFTC)のマイケル・セリグ(Michael Selig)委員長が、ワシントンで開催されたイノベーション諮問委員会(IAC)の初会合で8月20日に講演し、暗号資産、AI向け計算資源(コンピュート)、予測市場の3分野を柱とする政策構想「金融の新たなフロンティアに向けたロードマップ(Roadmap for the New Frontier of Finance)」を示した。

なおセリグ委員長は講演冒頭で、発言は自身の見解であり、必ずしもCFTC全体を代表するものではないと説明している。

セリグ委員長はまず、1974年のCFTC設立の経緯に触れた。当時、通貨先物や石油配分契約、政府抵当金庫(ジニーメイ)証券など、新たな金融商品の登場に法整備が追いついていなかったと説明した。

議会が「商品(commodity)」の定義を幅広く定めたことで、取引所が単一の連邦規制の枠組みの下で新たな商品を開発できる環境が整備されたと同氏は振り返った。現在CFTCは、世界全体で想定元本ベース約1,200兆ドル規模に上るデリバティブ市場の約半分を監督しているという。

その上で同氏は「今日、我々は再び転換点に立っている」と指摘。ブロックチェーン、AI、予測市場といった技術革新が金融市場を変革するのは時間の問題であり、重要なのは「どこで、誰がそのルールを書くか」だと強調した。

暗号資産についてセリグ委員長は、トランプ政権の発足後、前政権下の「取り締まりによる規制(regulation by enforcement)」からの転換を進めてきたと説明した。

証券取引委員会(SEC)のポール・アトキンス(Paul S. Atkins)委員長と共同で進める「プロジェクト・クリプト(Project Crypto)」を通じ、暗号資産のうち何が証券に該当し、何が該当しないのかについて分類の明確化を進めていると話した。SECとCFTCは2026年1月、SEC主導だった同プロジェクトを両機関の共同の取り組みとして進める方針を示している。

議会に対してセリグ委員長は、暗号資産の市場構造を定める超党派法案「CLARITY法案」の成立を改めて要請した。

一方、同法案が成立しない場合に備え、CFTCの既存権限を活用する選択肢の検討も進める。セリグ委員長はスタッフに対し、既存の登録業者や未登録の暗号資産取引所を「暗号資産市場(crypto asset market)」と呼ぶ指定契約市場(DCM)の一類型として指定し、CFTCの監督下でレバレッジや証拠金を伴う暗号資産取引を提供できるようにする可能性のある規則について、検討を始めるよう指示した。

また同氏は、CLARITY法案が成立しない場合には、こうした新たな規則の提案に迅速に動く方針を示した。

さらに、オンチェーン金融プロトコルの開発者が米国内で合法的に活動できる環境の整備にも取り組むという。セリグ委員長はスタッフに対し、オンチェーン金融プロトコルの開発者と協議し、開発者が米国内で適法かつ規制に準拠した形でプロトコルを提供できる方策を検討するよう指示した。

AI分野については、GPUクラスターなどの計算資源へのアクセスが今後の競争力を左右するとの認識を同氏は示した。

セリグ委員長は、AIモデルの訓練や運用に不可欠な計算資源について、価格発見やリスクヘッジが可能な市場を発展させる必要性を指摘。スポット市場やフォワード市場、デリバティブ市場を含む計算資源市場の形成を後押しする方針を示した。

その他セリグ委員長は、CFTCが計算資源市場の整備に向けて米商務省と連携していると説明した。CFTCは8月19日、その第一歩として、計算資源を参照するデリバティブ商品の上場に関する意見募集を開始した。

CFTCの公表資料によると、意見募集は主に指定契約市場(DCM)による計算資源デリバティブの上場を対象とし、スワップ執行施設(SEF)での取り扱いに関する論点などについても市場参加者から意見が募られている。

予測市場についてセリグ委員長は、多くの州がCFTCの専属管轄権に反し、CFTC登録のDCMに州の反賭博法を適用しようとしていると批判した。その上で、連邦レベルで明確な規制枠組みを構築するため、3つの取り組みを進めていると説明した。

第1は、CFTC規則40.11の改正だ。商品取引所法(CEA)では、戦争やテロ、暗殺、賭博、違法行為などに関連するイベント契約について、CFTCが公共の利益に反すると判断した場合に取引を禁止できると定められている。

しかし、同法では「賭博(gaming)」や「関与する(involve)」といった主要な用語が定義されておらず、公共の利益に反するかを判断する基準も明確ではなかった。

このためCFTCは、こうした用語や判断基準を明確化する規則40.11の改正案を提案した。

第2は、完全担保型のイベント契約(event contracts)に関する報告制度の近代化だ。CFTCは、市場監視に必要な情報を取得しながら、不要な複雑さや規制上の負担を軽減するための規則案をすでに提案している。

第3は、イベント契約を扱う指定契約市場(DCM)に関する規制の見直しだ。セリグ委員長は、DCMに適用されるコア原則や上場規則を近代化し、消費者保護要件を導入するCFTC規則第38部および第40部の改正案が近く提案されるとの見通しを示した。同改正案では、商品管理、市場設計、インセンティブプログラムに関する基準も明確化する予定だという。

セリグ委員長は講演の最後に、米暗号資産業界が反暗号資産の圧力や悲観論、多数の召喚状に直面しながらも、米国内でイノベーションを続けてきたとして業界関係者に謝意を示した。

その上で、今回初会合を迎えたイノベーション諮問委員会を通じて市場参加者との対話を深め、暗号資産、AI計算資源、予測市場を含む「金融の新たなフロンティア」を米国内で発展させる姿勢を改めて示した。

参考:発表
画像:Reuters

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

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