トークン化市場の本格導入へ向けた実行計画示す
英国政府が進めるホールセール金融市場(銀行や証券会社など金融機関同士が取引する市場)のトークン化について、その実現に向けた第1次報告書が7月13日に公表された。同報告書では、トークン化された金融商品の発行だけでなく、取引や担保利用、決済まで含めた市場全体を段階的に整備する業界ロードマップが示されている。
今回の報告書は、英国政府から「ホールセール・デジタル市場チャンピオン(Wholesale Digital Markets Champion)」に任命されたクリストファー・ウーラード(Christopher Woolard)氏が取りまとめたものだ。同氏は、英国政府が進めるホールセール金融市場のトークン化戦略について、業界側の立場から実行計画を提言する役割を担っている。
報告書では、英国政府が進めるデジタル国債「DIGIT」の2027年第1四半期までの試験発行や、DIGITなどのトークン化資産を担保として利用するレポ取引(国債などを担保に短期資金を調達する取引)の実証などを優先施策として提言している。なお、英国財務省はDIGITパイロットの準備を進めており、2026年2月にはHSBCをパイロット発行のプラットフォーム提供事業者として選定している。
今回の報告書では、トークン化市場は金融市場の次世代インフラとなる可能性があると説明している。RWA(現実資産のトークン化)市場は2035年までに約88兆ドル(約1京4,274兆円)規模へ拡大する可能性がある一方、英国が対応を遅らせれば、流動性や市場標準、金融インフラの主導権が海外へ移る可能性があると指摘した。また、英国では2035年までに年間最大330億ポンド(約7.18兆円)の経済生産と、年間140億ポンド(約3.04兆円)の税収増加が見込まれると試算している。
今回の報告書は、英国金融行為規制機構(Financial Conduct Authority:FCA)とイングランド銀行(Bank of England)が今年5月に公表した共同ビジョンと同様、英国政府のホールセール金融市場デジタル戦略に基づくものだ。共同ビジョンが規制当局の立場から市場の将来像を示したのに対し、今回の報告書では業界側の立場から、その実現に向けた優先施策や実行計画を取りまとめている。
報告書では、トークン化市場では金融商品を発行するだけでは十分ではないとしている。売買に加え、担保利用や資金調達、決済まで一体で機能する市場を整備する必要があるとのことだ。
具体的には、DIGITなどのトークン化資産を担保に利用したレポ取引の実証や、ステーブルコイン、トークン化預金、中央銀行マネーに対応した決済インフラの整備を提言している。
英国では既にデジタル証券サンドボックス(Digital Securities Sandbox:DSS)でトークン化銀行預金による証券決済が認められている。また、2026年6月からは、DSS参加企業が一定の要件を満たすステーブルコインを決済資産として利用するための申請も可能となっている。
報告書では、技術だけでなく制度面の整備も重要課題として挙げている。法的確実性の向上や技術中立的な税制、金融犯罪対策、デジタルIDなどについても、政府、規制当局、業界が連携して取り組む必要があるとのことだ。
報告書では今後12カ月間で9つのアクショングループを設置し、業界横断で具体的なユースケースの実証を進める計画も示された。まずはレポ取引のエンドツーエンド実証を行い、その成果を基にホールセール金融市場全体のトークン化を段階的に進める考えを示した。
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