米上院銀行委員会が「CLARITY法」可決、上院本会議審議へ前進

業界歓迎の一方、倫理規定をめぐる対立も

米上院銀行委員会が、暗号資産(仮想通貨)業界を連邦レベルで包括的に規制する暗号資産市場構造法案「クラリティ法案(CLARITY Act)」を賛成15・反対9の超党派の賛成多数で米国時間の5月14日に可決した。米国史上でも重要な暗号資産関連立法の一つとして注目される同法案は、暗号資産業界から歓迎を受ける一方、倫理規定をめぐる議論は継続しており、上院本会議での成立に向けてはなお調整が続く見通しだ。

今回の採決では、共和党議員が全員賛成したほか、民主党からルベン・ガレゴ議員(Ruben Gallego)とアンジェラ・アルソブルックス議員(Angela Alsobrooks)の2名が賛成に回り、超党派での可決となった。ただし、ガレゴ議員は賛成票を投じながらも、「大統領・副大統領・連邦政府関係者とその家族による特定の暗号資産取引を禁じる倫理規定」が盛り込まれなければ、上院本会議では反対票を投じると明言した。またアルソブルックス議員も、「今回の賛成票は誠実に作業を続けるための票であり、本会議でクラリティ法に賛成票を投じることを意味するものではない。まだやるべき仕事がある」との声明を発表した。

業界からは法案の委員会通過を歓迎する声が相次いだ。コインベース(Coinbase)のCEOであるブライアン・アームストロング(Brian Armstrong)氏は、委員会採決後にXへ投稿し、「暗号資産にとって、そして米国のデジタル資産の将来にとって歴史的な日だ」と評価。トークン設計やトークン化、DeFi、CFTC権限などの面で当初案から大きく改善されたとした上で、「クラリティ法を成立させよう」と訴えた。

米国の暗号資産業界団体のクリプト・カウンシル・フォー・イノベーション(Crypto Council for Innovation:CCI)のCEOであるジ・キム(Ji Kim)氏は、今回の超党派採決を「決定的な転換点」と表現し、賛成派・反対派の双方が強い信念を持って議論した点が印象的だったと振り返った。また、アルソブルックス議員がスモールビジネスや若年層の資産形成機会について語った点にも言及し、米国が責任あるイノベーションと開発者保護を両立する枠組みを整備する必要性を強調した。

業界団体「DeFi Education Fund(DEF)」も声明で法案通過を歓迎しつつ、ソフトウェア開発者保護に関する条文にはなお修正の余地があると指摘。特に「セクション301」について、非カストディアルな開発者やサービス提供者を保護するため、引き続き調整が必要との認識を示した。

ブロックチェーン協会(Blockchain Association)のCEOであるサマー・マーシンガー(Summer Mersinger)氏は、「米国には明確な暗号資産ルールが必要という認識が党派を超えて広がっていることを示した採決だ」と述べ、長期的なデジタル資産政策は超党派の合意の上に構築される必要があると強調した。

一方、上院銀行委員会の民主党筆頭理事であるエリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)議員は、今回の法案に強く反対した。

ウォーレン議員は委員会冒頭で、「この法案は1929年以来投資家を保護してきた証券法に大きな穴を開けることになる」と批判。米国の家計が食料品や医療費の高騰に苦しむ中で、「暗号資産業界のために書かれた法案」の審議を優先すべきではないとの考えを示した。

さらに「この法案はドナルド・トランプ(Donald Trump)の暗号資産汚職を加速させる」とも主張し、倫理規定なしに法案を前進させることへの強い懸念を示した。

ウォーレン議員はこれまでも、トランプ大統領とその家族が暗号資産関連事業から少なくとも14億ドル規模の利益を得ていると主張しており、ジャック・リード(Jack Reed)議員と連名で、ワールド・リバティ・ファイナンシャル(World Liberty Financial)を含むトランプ大統領関連の暗号資産事業について、司法省および財務省に調査を求める書簡を送付している。

リード議員は審議の進め方についても、「このような進め方は見たことがない。これは協力し合っている姿ではない」と強く批判した。

今回の審議で最大の争点となったのは倫理規定だ。クリス・ヴァン・ホーレン(Chris Van Hollen)議員が提出した、大統領・副大統領・連邦政府関係者およびその家族によるデジタル資産の保有や宣伝を禁じる修正案は、13対11の反対多数で否決された。

ホワイトハウスの暗号資産顧問パトリック・ウィット(Patrick Witt)氏は、大統領からインターンに至るまで一律に適用されるルールには賛成する一方、特定の役職者を名指しする条項は受け入れられないとの立場を示している。

 米暗号資産業界団体デジタル・チェンバー(The Digital Chamber)のコーディ・カーボン(Cody Carbone)代表は、上院本会議ではフィリバスター(議事妨害)回避のため60票が必要になることから、倫理問題をめぐる合意形成は本会議入り前に完了する可能性が高いとの見方を示した。

今後は上院銀行委員会版と、上院農業委員会が1月に民主党支持なしで前進させたデジタル資産関連法案との調整・統合が進められる見通しだ。

統合後の法案が上院本会議に提出されると、討論終結には60票以上の賛成が必要になる。そのため、倫理規定をめぐる修正協議が引き続き焦点となる見通しだ。

さらに、下院は2025年に独自版のクラリティ法をすでに可決しているため、上院版との相違点を調整する両院協議会(Conference Committee)が設置される可能性もある。

最終的に調整済み法案が上下両院で可決されれば、大統領署名を経て成立となる。業界関係者の間では、2026年11月の中間選挙前の成立を目指す動きが強まっている。

参考:報道報道報道
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

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