ステーブルコイン規制緩和の方針
オーストラリア証券投資委員会(Australian Securities and Investments Commission:ASIC)が、ステーブルコイン仲介業者に対し、特定の条件下で金融サービス免許の取得義務を免除する計画を9月18日に発表した。
今回の免除は、オーストラリア金融サービス(AFS)ライセンスを保有する発行体のステーブルコインに関連するサービスを提供する仲介業者に適用される。これにより仲介業者は、従来必要だったAFSライセンスやオーストラリア市場ライセンス、決済・清算施設ライセンスを別途取得する必要がなくなる。
ASICは、適格なステーブルコイン発行体がAFSライセンスを取得するにつれて、今回の救済措置をそのステーブルコインを流通させる仲介業者に段階的に拡大する方針を示した。一方で、免除を受ける仲介業者は、対象ステーブルコインの製品開示書を顧客に提供する義務がある。
ASICは2024年12月に「暗号資産・デジタル資産に関するガイダンス(INFO 225)」の更新案について意見募集を実施。意見募集文書では、現行法の明確化を目的に、金融商品の定義がデジタル資産および関連商品に適用される具体例を追加するなど、一連の更新を提案した。
対象にはステーブルコイン、暗号資産(仮想通貨)取引所のネイティブトークン、ミームコイン、商品連動型トークン、ラップドトークンなどが含まれ、発行者や仲介業者、取引所も影響を受ける。意見募集文書では一部のステーブルコインが現行法上の金融商品に該当するとし、発行者にライセンス取得義務があるとの見解を示した。
ASICは現在INFO225の更新の最終段階にあり、今後数週間以内に公表する予定だ。
また、意見募集文書への対応として寄せられた主要テーマと公的意見書も同時に公表する見込みだ。
ASICはさらに、政府のデジタル資産改革に向け財務省と連携しており、この改革には2023年に意見募集を行った決済用ステーブルコインの枠組みも含まれる。
また2025年7月、ASICはデジタル資産イノベーション支援の一環として、「プロジェクト・アカシア(Project Acacia)」の参加者に規制緩和を提供し、トークン化資産の取引やデジタルマネーの実世界での試験運用を行っている。
規制強化案も
一方、オーストラリア財務省は同国の暗号資産規制を強化するため、暗号資産交換業者や特定の暗号資産サービス提供者に対し、AFSライセンスの取得を義務付ける法案を9月25日提案した。
財務省が同日に開始したパブリックコンサルテーションによると、この法案は2001年会社法(Corporations Act 2001)を改正し、「デジタル資産プラットフォーム(DAP)」および「トークン化カストディプラットフォーム(TCP)」を新たな金融商品として位置付けるものだ。
これにより、DAPとTCPは自動的に金融商品として扱われ、既存のライセンス規制や消費者保護の枠組みに従うことになる。財務省の説明資料によれば、規制の焦点はデジタル資産そのものではなく、顧客の資産を預かる事業者に置かれるとのことだ。
今回の改正案により、DAPやTCPは投資ポートフォリオ運用者などの既存の金融仲介業者と同様の規制枠組みに入れられることになる。DAPには暗号資産取引所やブローカーが含まれ、TCPにはトークン化された現物資産を扱うプラットフォームが含まれる。
財務省は、この法案への意見を10月24日まで募集している。