ミステンラボとグーグルクラウド、AIエージェント検証基盤「VAA」を共同開発

AIエージェント向け証拠レイヤー「VAA」を共同開発

レイヤー1ブロックチェーン「スイ(Sui)」の開発を手掛けるミステンラボ(Mysten Labs)が、AIエージェント向け証拠レイヤー「ベリファイアブル・エージェント・アービター(Verifiable Agent Arbiter:VAA)」をグーグルクラウド(Google Cloud)と共同開発していると10月6日に発表した。

なおVAAの一般提供に先立って企業顧客への初期導入が予定されている。ただし初期導入・一般提供のどちらについても日付や時期は示されていない。

VAAは、企業がAIエージェントに「何をする権限を与えたのか」と「実際に何をしたのか」を、後から検証できるようにする仕組みだ。ここでいうAIエージェントとは、利用者から与えられた目的や権限に基づき、外部サービスの利用や他のAIエージェントとのやり取り、取引などを実行するAIを指す。

ミステンラボによると、AIエージェントは取引の実行や他のエージェントとの交渉など、企業の境界を越えた活動を担うようになっている。一方、異なる企業のAIエージェント同士が取引する場合、一方の企業が管理する活動記録だけでは、取引相手や監査人、規制当局などがその記録を独立して検証することが難しい。

この問題に対応するため、VAAでは、AIエージェントに与えられた権限、実際の行動、その結果を検証可能な記録として残す。具体的には、AIエージェントの詳細な活動記録と、その記録が改ざんされていないことを確認するための暗号学的証明を分離して管理する。

プロンプトやモデルの出力、外部ツールの呼び出し、設定されたルールに基づく判断などの詳細なデータは、顧客が管理するクラウドストレージサービス「グーグル・クラウド・ストレージ(Google Cloud Storage)」内で非公開のまま保持される。一方、活動記録に対する暗号学的証明は、ミステンラボ開発の分散型データプラットフォーム「ウォルラス(Walrus)」に保存され、スイ上で調整される。

これにより、第三者は、企業が詳細な活動データそのものを公開しなくても、AIエージェントの活動記録が後から改ざんされていないことを検証できる。

VAAの企業向け用途の一つが、「エージェント・ツー・エージェント(Agent2Agent:A2A)」を介した取引の検証だ。A2Aは、異なるAIエージェント同士が通信・連携するためのオープン規格だ。

具体的には、2つの組織がA2Aを通じてAIエージェント間で取引した場合、両者は同じ検証可能な記録を利用できる。これにより、何が約束され、何が提供され、どこで問題が発生したのかを確認できるとのことだ。

またセキュリティ上の問題が発生した場合には、その前後における指示やルール、判断、出力、ツール操作を再構築できる。これにより、悪意ある指示をAIに読み込ませて意図しない動作を引き起こす「プロンプトインジェクション攻撃」や、設定されたルールの回避、モデルの障害、インシデント発生後のログ変更などを区別できるとのこと。

さらにVAAでは、保存された証拠と元の記録との関連性を維持したまま、耐量子暗号を含む将来の暗号標準を使って証拠を再証明できるとのことだ。欧州連合(EU)のAI規制法「EU AI法(EU AI Act)」など、今後の規制要件への対応も想定されている。

VAAは、AIエージェント向け決済基盤「スイ・エージェント・ペイメンツ(Sui Agent Payments)」とも直接接続する。同基盤では、AIエージェントが事前に設定された権限や予算の範囲内で有料APIなどのサービスを利用し、料金を決済できる。

またVAAは、ウェブ上でサービス利用料などの機械間決済を行うための規格「x402」を使った取引について、AIエージェントへの権限付与や支出判断、サービス提供を暗号学的に記録する。

スイで進むAIエージェント向け決済の取り組み

ミステンラボは以前から、グーグルが進めるAIエージェント向け決済の取り組みに参加している。グーグルは2025年9月、AIエージェントによる決済のためのオープンプロトコル「エージェント・ペイメンツ・プロトコル(Agent Payments Protocol:AP2)」を発表。ミステンラボは、マスターカード(Mastercard)やコインベース(Coinbase)、ペイパル(PayPal)など60以上の企業・組織とともに協力企業として参加していた。

AP2は、AIエージェントが利用者に代わって商品やサービスを購入する際に、エージェントの取引権限を認証、検証、伝達するための共通基盤だ。グーグルは、人間が自ら購入を承認することを前提とした従来の決済システムでは、AIエージェントが自律的に決済する際の承認や真正性、説明責任などが課題になると説明している。

一方、スイ側でもAIエージェントによる経済活動を支える取り組みが進められている。スイ財団(Sui Foundation)は今年9月2日に公開した公式ブログで、AIエージェントが利用者に代わってサービスの利用や取引、決済などを行う「エージェンティック・コマース(Agentic Commerce)」に必要な仕組みを紹介した。

その一つが、複数の処理を一つの取引として実行する「ペイメント・インテント(Payment Intents)」だ。例えばAIエージェントが市場データを取得した後、資産の交換、運用サービスへの預け入れ、データサービスへの料金支払いといったオンチェーンの処理を一つの取引にまとめて実行できる。いずれかの処理が完了できない場合はすべての処理を成立させないことで、一部だけが実行されることを防ぐ。

またスイ財団は、AIエージェントに与える支出権限を制限する仕組みも説明している。AIエージェントが利用できる金額や期間、支払先などをあらかじめ設定し、その制限をスイのプロトコルレベルで適用することで、人間が設定した範囲内でAIエージェントに取引を任せられるとのことだ。

参考:ミステンラボ・ブログ・スイ
画像:PIXTA

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渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

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