与野党、採決直前まで協議
米上院が、暗号資産(仮想通貨)の市場構造を包括的に定める「デジタル資産市場明確化法(Digital Asset Market Clarity Act:CLARITY Act)」について、法案の審議入り動議に対する討論終結(クロージャー)動議の採決を9月15日に行った。採決は賛成49票、反対50票となり、可決に必要な60票に届かなかった。
今回否決されたのは法案そのものではなく、審議入りに向けた手続き上の動議だ。ただし、中間選挙を控えて議会日程が限られるなか、今回の否決によって年内成立への道は大幅に狭まった。現行の第119議会で成立しなければ、2027年に始まる第120議会で改めて法案提出などの手続きが必要になる。
クラリティ法案は、暗号資産をめぐる商品先物取引委員会(CFTC)と証券取引委員会(SEC)の管轄の線引きなど、米国の暗号資産市場構造に関する包括的な連邦規制の枠組みを整備することを目的としている。
採決直前まで、共和・民主両党による法案をめぐる協議が続いていた。
共和党は日曜夜、倫理規定やソフトウェア開発者の保護、上院農業委員会所管の条項などについて譲歩を盛り込んだ改訂案を提示した。またコミュニティ銀行からの預金流出への懸念に対応する「サーキットブレーカー」条項も新たに追加した。
共和党側は、民主党側の要求を受けて126項目の実質的な変更を加えたと説明し、改訂版を「最終提案」と位置付けていた。
一方、民主党側は月曜深夜に対案を提示。暗号資産の大量保有や扶養する子どもの扱い、有償プロモーションをめぐる倫理規定のさらなる強化に加え、「ブロックチェーン規制確実性法(Blockchain Regulatory Certainty Act)」の適用範囲をさらに限定することなどを求めた。
これに対し共和党側は、民主党が「ゴールポストを動かし続けている」と反発し、追加の譲歩には応じない姿勢を示した。
銀行業界からも法案への懸念が示された。全米銀行協会など8つの業界団体は、新たに盛り込まれたサーキットブレーカーについて、預金流出が相当程度進んだ後でなければ発動しないため実効性に乏しいと批判。ステーブルコインの利回りに関する規定のさらなる厳格化を求めた。
一方、ホワイトハウスの経済諮問委員会(CEA)は、ステーブルコインの利回り禁止が銀行融資に与える影響を試算する分析ツールを公開した。同委員会は関連資料で、USDCの成長とコミュニティ銀行の預金との間に統計的に有意な関係は認められなかったとする既存の実証分析を引用している。
民主党・無所属議員から相次いだ反対表明
採決に先立ち、エリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)上院議員は、法案が「家庭にとって甚大なリスクをもたらす」と主張し、反対を表明した。
またバーニー・サンダース(Bernie Sanders)上院議員も法案を「腐敗している」と批判。暗号資産業界が中間選挙に約3億ドルを投じる一方、トランプ大統領とその家族が暗号資産関連の取引で14億ドル(約2,174億円)以上を得ていると主張した。
これに先立ち、マーク・ウォーナー(Mark Warner)、ルーベン・ガレゴ(Ruben Gallego)、ラファエル・ウォーノック(Raphael Warnock)の各民主党上院議員も、トランプ大統領が受け入れた倫理規定案について、さらなる改善が必要との考えを示していた。
一方、共和党のシンシア・ルミス(Cynthia Lummis)上院議員は採決後、SNS上で民主党を「反消費者、反倫理、反自由企業」などと批判した。
また採決をめぐっては、キルスティン・ジリブランド(Kirsten Gillibrand)上院議員が党内で、まず審議入りを認め、本会議で交渉を継続すべきだと働きかけていたことが報じられている。ただしジリブランド氏自身も、今回のクロージャー採決では反対票を投じた。
さらに、6月の転倒・入院後、9月14日に約3カ月ぶりに上院へ復帰したミッチ・マコーネル(Mitch McConnell)上院議員も採決に参加し、賛成票を投じた。
なお共和党からは、スーザン・コリンズ(Susan Collins)、ジョシュ・ホーリー(Josh Hawley)、ジェリー・モラン(Jerry Moran)、トム・ティリス(Thom Tillis)の4議員が反対票を投じた。ティリス氏は当初賛成票を投じた後に反対へ票を変更している。上院の公式記録によると、これは再考動議を提出するための対応で、同氏は採決直後に同動議を提出した。
ビットコイン4%安、関連株も下落
暗号資産市場は採決結果が明らかになる前から軟調に推移しており、クラリティ法案をめぐる不透明感が強まるなか、ビットコイン(BTC)は15日に一時5%超下落した。
ビットコインは一時7万5,000ドル(約1,160万円)を割り込み、採決後も7万6,000ドル(約1,180万円)前後で推移した。
暗号資産関連株も下落した。15日の米株式市場で、大手暗号資産取引所コインベース(Coinbase、NASDAQ:COIN)は前日比10.1%安、ビットコインを大量保有するストラテジー(Strategy、NASDAQ:MSTR)は同5.4%安で取引を終えた。ビットコインマイニング関連銘柄も軟調に推移した。
クラリティ法は、CFTCとSECの監督権限の線引きなど、暗号資産業界が長年求めてきた規制の明確化を図る市場構造法案だ。
トランプ大統領も法案の成立を議会に求めていたが、今回のクロージャー動議の否決により、法案の今後の審議日程は不透明となっている。