外部投資家への募集・販売は行わず
三菱UFJアセットマネジメント、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、三菱UFJ信託銀行の3社が、デジタル証券(セキュリティトークン:ST)の発行・管理基盤を提供するProgmat(プログマ)とともに、国内籍のトークン化投資信託に関する実証実験を開始した。4社が9月3日に発表した。
4社は同実証を目的とするファンドを8月31日に設定したとのこと。国内籍のトークン化投資信託の設定は、三菱UFJアセットマネジメント調べで国内初だという。
同ファンドは、投資信託受益権のトークン化に関する法的整理や業務フローの構築を経て設定された。運用・受託・権利管理・システム運営などの一連のプロセスについて、実運用環境で検証するという。
本件におけるトークン化では、投資信託受益権の権利を券面に表示したうえで、原簿管理をオンチェーン(ブロックチェーン上)で実施する予定とのこと。
「あたらしい経済」編集部がプログマ代表取締役の齊藤達哉氏に取材したところ、今回利用するブロックチェーンは「アバランチ(Avalanche)」との回答を得た。プログマは7月13日、STの発行・管理基盤「Progmat」で利用する分散型台帳について、「コルダ5(Corda 5)」から「アバランチL1(Avalanche L1)」への移行を完了したと発表していた。
また「日本経済新聞」によると、同ファンドは残存期間3カ月以下の短期国債に投資する円建て投信で、日々の購入・解約が可能な設計とのこと。三菱UFJアセットマネジメントがシードマネーとして自己資金2億円を拠出したという。齊藤氏は同取材で、これらの報道内容に相違ないと回答した。
ファンドの設定額については「非公開」との回答だった。
なお同ファンドは、トークン化投資信託の組成・運営に関する実務的知見の蓄積が目的だという。そのため機関投資家や個人投資家といった外部投資家への募集・販売は行われないとのことだ。
オンチェーン管理と法的な権利移転は別
齊藤氏はXで共有した自身のnote記事で、今回の実証は単にブロックチェーン上でトークンを発行する技術検証ではなく、国内法に基づく投資信託を実際に設定し、金融商品として継続的に運営できるかを確かめる取り組みだと説明した。
投資信託では、設定後も資産の運用や基準価額の算定、受益権の管理、追加設定・一部解約、収益分配、各種の照合・報告など、多数の業務が継続する。今回の実証では、こうした継続業務を見据え、まず運用・受託・権利管理・トークン化基盤に関する一連のプロセスを実運用環境で稼働させるという。
また齊藤氏は、原簿をオンチェーンで管理することと、トークンの移転だけで法的な権利移転が完結することは同義ではないと指摘している。
投資信託法第6条では、委託者指図型投資信託の受益権を受益証券によって表示するよう定めている。一方、一般的な投資信託では投資信託振替制度により受益証券がペーパーレス化され、振替口座簿で権利が管理されている。齊藤氏によると、保振の振替制度を利用しない非振替型の国内籍投資信託をオンチェーン化する場合、同法に恒久的な「券面不発行制度」がないことが大きな課題になるという。
このため同氏は、今回の取り組みについて、トークン化投資信託の「完成」を宣言するものではなく、現行制度のもとで実運用を始め、今後の制度整備に必要な論点を具体化するための第一歩だと位置づけている。
4社は今後、外部投資家向けの提供拡大に加え、ステーブルコインやトークン化預金とのシームレスな連携によるオンチェーン金融サービスの高度化について、段階的に検証範囲を広げる方針だ。
齊藤氏は、トークン化の本質的な価値は24時間365日の売買だけでなく、権利・資金・担保・業務指図をプログラム可能な形で連携できる点にあると説明。将来的な活用例として、余剰資金をトークン化投資信託で運用し、決済時にステーブルコインやトークン化預金へ切り替えることや、投資信託の担保利用、証券の引き渡しと資金の支払いを同時に行うDvP(Delivery versus Payment)などを挙げている。
円建てTMMFの商品化に向け協業
4社は2025年12月、国内初となるトークン化投資信託の商品化を目指し、トークン化マネー・マネージメント・ファンド(TMMF)の基盤整備に関する協業を開始していた。
マネー・マネージメント・ファンド(MMF)は、株式を組み入れず、国債や社債など信用度の高い短期金融商品で運用する公社債投資信託の一種だ。当時4社は、2026年に円建てTMMFを機関投資家向けに提供することを目指すとしていた。
ただし、今回設定された実証用ファンドがTMMFに該当するかは、今回の発表では明らかにされていない。
— 齊藤達哉|Progmat(プログマ) (@tatsu_s1203) September 3, 2026
参考:プレスリリース
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