パブコメには2件、いずれも対象法域の追加に関する意見
金融庁が、暗号資産・電子決済手段の移転時に送付人・受取人の情報を通知する義務、いわゆる「トラベルルール」の対象法域に、アンギラ、オマーン、キューバ、ドミニカ国、ボツワナの5法域を新たに追加すると7月7日に公表した。改正告示は同日付で公布されており、8月3日から適用される。
トラベルルールは、マネーロンダリングやテロ資金供与対策を目的に、FATF(金融活動作業部会)が定めた国際基準に基づく制度だ。日本では、暗号資産や電子決済手段が移転される際、送付人・受取人に関する情報を暗号資産交換業者や電子決済手段等取引業者(VASP)間で通知することが義務付けられている。
一方で、通知先の国・地域で制度が整備・施行されていなければ通知の実効性を欠くことから、日本では自国の通知義務に相当する規制が定められている法域に所在する外国業者への移転に限って、この義務を課している。今回の改正は、各法域におけるトラベルルールの施行状況を踏まえ、対象法域を追加するものとなる。
今回の追加により、対象法域はこれまでの58法域から63法域に拡大する。既存の対象法域には、米国、英国、シンガポール、韓国、香港、ドイツ、フランスなど主要国・地域が含まれている。
金融庁は改正案について5月1日から31日までパブリックコメントを実施し、2件の意見が寄せられた。
寄せられた意見の一つでは、「日本国内に在住者が多く、かつ脱税者の割合が高い中国・ベトナム」や、「世界的なサービスを開発するロシア」を対象法域に加えるべきとの意見が示された。これに対し金融庁は、通知対象の法域は日本の通知義務に相当する規制が定められていることが前提であり、現時点では中国、ベトナム、ロシアにはそのような規制が整備されていないため、トラベルルールの対象外となると説明した。
あわせて、トラベルルールの対象外となるウォレットとの取引についても、暗号資産交換業者や電子決済手段等取引業者には、犯収法施行規則に基づき、その所有者情報を収集・保存する義務が課されていることを説明している。
もう一件は米国を対象法域に加えるべきという意見だったが、金融庁は米国については既に対象法域に指定済みであると回答した。
対象法域の拡大により、国内の暗号資産交換業者や電子決済手段等取引業者では、トラベルルールに基づく通知義務の対象範囲が広がることになる。これまで対象外として取り扱っていた法域の一部が対象となるため、該当法域の海外事業者との暗号資産・電子決済手段の送受に関するオペレーションやシステム対応が求められそうだ。
一方、パブコメで追加を求める意見があった中国、ベトナム、ロシアなど利用者数や取引需要の大きい法域は引き続き対象外となっている。今後は各法域における制度やトラベルルールの施行状況に応じて、対象法域の追加や見直しが行われる可能性があり、今後の動向が注目される。
参考:金融庁
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