GENIUS法の実施ルール整備進む
米国の複数の規制当局が、ステーブルコイン規制法「ジーニアス法(GENIUS Act)」に基づき、許可済み決済ステーブルコイン発行者(PPSI)に対して、銀行や信用組合に適用される顧客識別プログラム(CIP)と同等の基準を導入することを求める共同規則案を6月18日に公表した。
今回の規則案は、米連邦準備制度理事会(FRB)、米財務省金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)、通貨監督庁(OCC)、連邦預金保険公社(FDIC)、全米信用組合管理機構(NCUA)が共同で公表したものだ。同規則案は6月18日に公表され、米官報(Federal Register)への正式掲載は6月22日に予定されている。コメント期限は、Federal Register掲載日から60日後となる。
同法では、一定の要件を満たしたステーブルコイン発行者を「PPSI」として位置付けるとともに、銀行などと同様にマネーロンダリング対策の対象となる金融機関として扱うことを定めている。
ジーニアス法は昨年成立した米国初の包括的な連邦ステーブルコイン規制法だ。ジーニアス法は昨年成立したものの、多くの条項については規制当局による詳細ルールの策定が必要とされている。昨年9月には実施ルール策定に向けた意見募集が行われており、今回の規則案はその後の検討を踏まえて公表された形だ。
FRBは、銀行や信用組合に適用される「顧客識別プログラム(CIP)」と同等の基準を発行者へ導入する規則案だと説明している。
CIPとは、銀行や信用組合が口座開設時などに実施する本人確認制度を指す。規則案によると、PPSIは顧客の氏名、住所、生年月日または設立日、識別番号などの情報を取得し、本人確認を実施する必要がある。また、本人確認に利用した情報や確認手続きに関する記録の保存も求められる。さらに、政府機関が提供するテロリストおよびテロ組織リストとの照合を行う手続きも含まれる。
共同規則案では、PPSIが預金取扱金融機関の子会社である場合、親会社と子会社で単一のAML/CFTプログラムやCIPを用いることも認められ得るとされている。ただし、その場合でも、親会社と子会社それぞれに適用される法規制上の義務を満たす必要がある。
また、一定の条件を満たす場合には、PPSIが他の金融機関による本人確認手続きに依拠することも可能とされる。
今回の規則案では、CIP上の顧客情報収集の対象を、発行・償還などでPPSIが顧客と直接関係を持つ一次市場の顧客に限定している。一方で、二次市場での利用実態を踏まえ、当局はCIP要件をステーブルコインの二次市場取引へ拡張すべきかについても意見を求めている。
なお、米当局はこれまでにも、ジーニアス法の実施に向けた規則案を段階的に公表している。FDICは2025年12月、FDIC監督下の預金取扱金融機関が子会社を通じて決済ステーブルコインを発行する際の申請手続きに関する規則案を公表した。
NCUAも2月、同庁の管轄下でPPSIとなるための申請手続きに関する規則案を公表し、5月にはNCUA認可PPSI向けの運用・リスク管理基準案を公表している。
また、財務省は4月、州レベルのステーブルコイン規制制度が連邦規制枠組みと実質的に類似しているかを判断するための原則案を公表した。FinCENと米財務省外国資産管理局(OFAC)も同月、PPSIに対するAML/CFTプログラムや経済制裁コンプライアンスに関する規則案を公表している。
FDICも4月、準備資産、償還、資本、リスク管理、カストディ、預金保険上の扱いなどに関するFDIC監督下PPSI向けの健全性規制案を公表している。
今回の顧客識別プログラム規則案も、こうした制度整備の一環として位置付けられる。