BTQテクノロジーズ、ビットコイン量子耐性提案「BIP360」をテストネットで初実装

BTQがBIP360をテストネットで初実装

量子対策技術企業のBTQテクノロジーズ(BTQ Technologies)が、ビットコイン(Bitcoin)の量子耐性に関する改善提案「BIP360」の初の動作実装を、同社の「ビットコイン・クアンタム(Bitcoin Quantum)」テストネットv0.3.0上で展開したことを3月19日に発表した。

今回実装されたBIP360は、「ペイ・トゥ・メルクルルート(Pay-to-Merkle-Root:P2MR)」と呼ばれる新たな出力タイプを導入する提案だ。P2MRでは、複数の送金条件をまとめて一つのデータとして扱うことで、その詳細をオンチェーン上に直接公開せずに取引を行うことができる仕組みとされる。

BTQによると、同提案は将来的に量子コンピュータが発展した場合に想定されるビットコインのセキュリティリスクへの対応が目的だ。現在のビットコインでは、特定の条件下で公開鍵がオンチェーン上に露出する可能性があり、これが将来的な攻撃対象となるおそれがあるとされる。

今回の実装では、こうしたリスクへの対処を目的とした新たな出力タイプや関連機能が導入されている。また、ユーザーが実際にこれらの仕組みを試せるよう、トランザクションの作成や署名、送信を行うためのウォレット機能も提供されるという。

同社は、今回のリリースによりBIP360が概念段階から実際に検証可能な環境へ移行したとしており、トランザクションの一連の処理をテストネット上で実行できるようになったと説明している。

テストネットv0.3.0ではこのほか、ブロック生成間隔や報酬設計などの基本的なネットワーク設定に加え、トランザクション処理に関する複数の改善も行われているという。

BTQによると、同テストネットにはすでに50以上のマイナーが参加し、これまでに100,000超のブロックが生成されている。また、暗号学者や開発者、マイナーなど100人以上が参加するオープンソースコミュニティが形成されているとのことだ。

同社は、米国や欧州連合(EU)、カナダなどでポスト量子暗号への移行に向けた動きが進んでいることを背景に、量子耐性インフラの検証環境の重要性が高まっていると説明している。

BIP360の位置付けと論点

今回の提案については、その技術的な位置付けをめぐり複数の見方が示されている。

チェーントープ(Chaintope)CTOの安土茂亨(Shigeyuki Azuchi)氏は自身のXアカウントにおいて、BIP360で導入されるP2MRはタップルート(Taproot)の設計からキーパス支出を除いた構造に過ぎず、公開鍵の露出を抑える既存の仕組みの延長線上にあるものであり、ビットコインに本質的な量子耐性をもたらすものではないとの見解を示している。

一方で、VCおよびリサーチャーのヴィカシュ・シン(Vikash Singh)氏は、安土氏の投稿を引用した上でP2MRについて将来的な量子耐性署名への移行を見据えた構造であると説明している。ただしこれに対して安土氏は、現時点で量子耐性署名の仕様やオペコードが確定していないことから、その有効性を疑問視している。

こうした技術的な評価に加え、実装の前提条件についても指摘されている。ビットコイン専門メディア「ビットコインマガジン(Bitcoin Magazine)」によると、ビットコイン・クアンタムはビットコイン本体とは独立したブロックチェーンであり、今回の実装は別チェーン上での検証として提供されているという。

また同メディアは、同提案は将来のトランザクションに対する保護を目的としたものであり、すでに公開鍵が露出している既存アドレスなどを遡って保護するものではないとしている。

以上の点を踏まえると、今回のBIP360は完成された量子耐性の解決策というよりも、将来的な暗号方式の変更や移行を見据えた設計の一部を検証する取り組みと位置付けられる。

参考:プレスリリースビットコインマガジン
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

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