既存市場でトークン化決済を統合
米証券取引委員会(SEC)が、米ナスダック(Nasdaq)による証券のトークン化取引を可能にするルール変更「SR-NASDAQ-2025-072」を3月18日に承認した。これにより、ブロックチェーン技術活用によるトークン化された株式および上場投資信託(ETF)の取引・決済が、既存の株式市場の枠組みの中で試験的に実施されることになる。今回の変更により、ナスダック市場では特定の証券をブロックチェーン上のトークン化証券として取引できるようになる。
今回の枠組みは、米証券決済機関デポジトリー・トラスト・カンパニー(DTC)が実施するトークン化パイロットプログラム(DTC Pilot)と連動している。ナスダック参加者のうち、このパイロットに参加する資格を持つ市場参加者は、対象となる証券の取引をトークン化形式で決済することを選択できる。
トークン化株式は、従来の株式と同一のティッカーやCUSIP番号を持ち、配当、議決権など同じ権利が付与される。また、ナスダックの同一オーダーブック上で従来株と並行して取引され、価格や執行優先順位も同様に扱われる。
対象となる証券は、サービス開始時点で、ラッセル1000指数に含まれる銘柄やS&P500やナスダック100指数に連動する主要指数連動ETFなどが想定されている。
注文時には、対象となる市場参加者がトークン化決済を希望する場合、専用フラグを付与することで意思を示す。取引成立後、ナスダックがその情報をDTCへ通知し、DTCを通じてトークン化された形で決済される仕組みだ。
なお、ナスダックの取引システムや注文タイプ、取引セッションなどは従来の株式と同様に運用され、トークン化の有無によって取引手続き自体が変わることはないとしている。また市場監視やデータ報告も既存の枠組みの中で行われる。
SECは今回の承認について、「投資家保護や市場の公正性を損なうものではなく、証券取引法の要件と整合すると判断した」と説明している。
ナスダックは、必要なインフラと決済サービスの整備が完了次第、トークン化証券の取引を開始する予定で、少なくとも開始の30日前には市場参加者へ通知するとしている。
なおナスダックは2025年9月に本規則案をSECへ提出していた。今回の動きは、同社が2026年3月9日に発表した暗号資産取引所クラーケン(Kraken)との戦略的提携による株式トークン化に向けた新たな設計「株式トークン設計(equity token design)」の取り組みとあわせ、デジタル資産領域への展開を進める一環とみられる。
株式や債券などの伝統的金融資産をブロックチェーン上で扱う「RWA(実世界資産)トークン化」は、近年急速に拡大している領域だ。トークン化により、取引時間の柔軟化や決済の効率化、グローバルな流通といった新たな金融インフラの実現が期待されている。
こうした流れの中で、暗号資産(仮想通貨)領域だけでなく、ナスダックなどの伝統的証券取引所もトークン化対応を進めている。従来は主に債券やファンドなどを中心にトークン化の取り組みが進められてきたが、株式のトークン化については、規制や投資家保護の観点から主流市場への導入は限定的だった。
今回のナスダックの取り組みは、既存の株式市場の枠組みを維持したままトークン化を導入する点が特徴だ。従来の証券と同一の権利や取引環境を維持する設計とすることで、既存制度との整合性を確保した形でトークン化を実現する狙いがある。
またSECが本件を承認したことは、規制当局が一定条件下での証券トークン化を認めた事例として重要といえる。既存の市場監視や投資家保護の枠組みを維持することで、証券法との整合性が確保されたと判断されたためだ。
参考:発表
画像:Reuters