議論は「隔離」の定義の違いに収束
ソラナ(Solana)基盤のDEXアグリゲーター「ジュピター(Jupiter)」のレンディング機能「ジュピター・レンド(Jupiter Lend)」に関するリスク説明を巡り、ジュピターと競合プロジェクトであるカミノ(Kamino)の関係者との間で12月6日から7日にかけて議論が交わされた。きっかけはジュピターがXで「担保は隔離されており、伝染リスクがゼロ」と説明した投稿が不正確であると指摘されたことによるものだ。
この議論を受け、ジュピターの最高執行責任者カッシュ・ダンダ(Kash Dhanda)氏は12月7日、自身のXアカウントに動画声明を投稿した。同氏は「担保は隔離されており、伝染リスクがゼロ」という説明が100%正確ではなかったと認め、該当投稿を削除したことを説明した。その上で「さらなる誤解を避けるためだったが、本来は削除と同時に訂正すべきだった」と述べた。
今回ジュピターの説明に最初に疑義を呈したのは、レンディングプロトコル「カミノ(Kamino)」の共同創業者マリウス・チュボタリウ(Marius Ciubotariu)氏だ。同氏は、ジュピターが「隔離された担保」と宣伝している一方で、実際には預かった担保資産が他の貸付などに再利用される再担保(リハイポセーション)を採用しており、リスクが完全に独立しているとは言えないのではないかと指摘した。そのためジュピターの「伝染リスクゼロ」という表現は誤解を招くと批判した。
カミノはこの対応の一環として、ジュピター・レンドが提供する「リファイナンス(Refinance)ツール」によるカミノ上のポジションへのアクセスをブロックした。カミノ側のスマートコントラクトでジュピター・レンドのリファイナンスコントラクトをブラックリスト化し、少なくともカミノからジュピター・レンド側への一方向のポジション移行ができないようにする措置を取ったと説明している。
一方ダンダ氏は、ジュピター・レンドが再担保を行っていること自体は認めている。同氏は「ある場所で供給された資産が、別の場所の借入ポジションに再利用されることは事実だ」と述べた。そのうえで、各担保プールには「個別のLTV設定」、「清算しきい値」、「資産ごとの供給上限」、「清算ペナルティ」など、プールごとに個別の設定が存在している点を挙げた。つまり「隔離」の意味はあくまで「構成上の独立性」を指しており、リスクが完全に分離されるとの意味ではなかったと説明している。
このように両プロジェクトの主張の違いは、「隔離」という用語の定義をどのレベルで捉えるかに起因している。ジュピターは設定レベルでの独立性を強調し、カミノは「リスク波及が起きないことこそ隔離である」と主張する。再担保が行われている以上、担保間のリスクは完全に切り離されないというのがカミノ側の立場だ。
議論が過熱する中でチュボタリウ氏は、過去の投稿の一部で表現が強すぎたことを認め訂正する姿勢を見せている。またカミノ側はジュピター・レンドからのリファイナンスツールのブロック解除について、ジュピターがユーザー向けのリスク説明を改善し、ツールを双方向(カミノからジュピターだけでなく、ジュピターからカミノにも移行できる形)にするのであれば前向きに検討すると述べている。
ソラナ財団プレジデントのリリー・リウ(Lily Liu)氏もこの一連のやり取りに言及し、「ソラナのレンディング市場規模は約50億ドルで、イーサリアムや伝統的金融に比べれば小さい。互いを批判し合うより成長に注力すべきだ」とXに投稿した。
今回の議論は、分散型金融(DeFi)が抱える担保モデルの透明性や、プロトコルがユーザーに提供するリスク説明のあり方を巡る根本的な論点を浮き彫りにしたものだ。
yuck
— Marius | Kamino (@y2kappa) December 5, 2025
i feel really dumb today https://t.co/G36Jv1MaDy
clarification on today’s skirmish
— Kash (🐱, 🐐) (@kashdhanda) December 6, 2025
(btw I misspoke on the video – fluid’s architecture is 2 years old, the instadapp team itself is 7!) pic.twitter.com/Lb0ieZB1Xe
画像:iStocks/namaki