シタデル・セキュリティーズ、トークン化証券とDeFiに取引所・証券会社規制の適用を提言。業界側から反発の声も

シタデル・セキュリティーズが意見書を提出 

米大手マーケットメイカーのシタデル・セキュリティーズ(Citadel Securities)が、トークン化された米国株式を取り扱うDeFi(分散型金融)プロトコルに対しても、取引所およびブローカー・ディーラーとしての規制を適用すべきだとする意見書を米証券取引委員会(SEC)に12月2日に提出した。

シタデル・セキュリティーズは書簡の中で、DeFiプロトコルを規制対象から広範に除外(exemptive relief)することは、公正なアクセス、市場監視、最良執行義務、フロントラン防止などの投資家保護を著しく損なうと主張。「同一の証券に対して2つの規制体制が併存することになり、証券取引法が掲げる技術中立の原則に反する」と警告した。

同社は、多くのDeFiプロトコルがアルゴリズムなどの非裁量型手法によって買い手と売り手を結びつけており、実質的には取引所の定義に該当すると指摘。また、DeFi取引アプリ、ウォレット事業者、自動マーケットメイカー(AMM)などの関係者についても、取引ベースの報酬を受け取っている点などから「ブローカー・ディーラーとして機能しているケースが多い」と主張している。

さらにシタデル・セキュリティーズは、DeFiに対する広範な規制免除が認められた場合、約定後の情報開示(ポストトレード・トランスペアレンシー)や市場監視(相場操縦・ウォッシュトレード対策)、フロントラン防止、最良執行義務、取引停止ルールやボラティリティ抑制措置といった重要な投資家保護の枠組みが実質的に機能しなくなると警告。その上でSECに対し、個別の規制免除ではなく、パブリックコメントを伴う正式なルールメイキングを通じて制度設計を行うべきだと提言した。

シタデルは一方で、株式のトークン化については、24時間365日の取引、即時決済、株主投票や配当処理の効率化といった潜在的な利点も認めているとした上で、あくまで「既存の投資家保護原則を前提に進めるべきだ」としている。

Uniswap創業者や業界団体が反発

このシタデル・セキュリティーズの動きに対し、暗号資産・DeFi業界からは強い反発が相次いでいる。

分散型取引所(DEX)ユニスワップ(Uniswap)の創業者であるヘイデン・アダムズ(Hayden Adams)氏はXで、「かつてConstitution DAOを潰したシタデル・セキュリティーズCEOのケン・グリフィン(Ken Griffin)が、今度はDeFiを潰しに来ている」と批判。「オープンソースでP2Pな技術によって流動性創出のハードルが下がるのを、不透明な手法で知られる伝統金融の大手マーケットメーカーの王が嫌がるのも当然だ」と皮肉った。

また、米暗号資産業界団体ブロックチェーン・アソシエーション(Blockchain Association)のCEOであるサマー・マーシンガー(Summer Mersinger)氏も声明を発表し、シタデル・セキュリティーズの主張について「過剰に広範で、現実的に実行不可能だ」と批判した。

マーシンガー氏は、「ソフトウェア開発者を金融仲介業者と同一視する解釈には、証券取引法、SECの過去の運用、司法判断、常識のいずれにも根拠がない」と指摘し、「このような規制は米国の競争力を損ない、イノベーションを海外へ流出させるだけで、投資家保護の実効性も高めない」と反論した。

さらに同氏は、「コードは言論である(Code is speech)」と強調し、ブロックチェーン・アソシエーションは今後も、修正第1条で保護されるコードを書くDeFiおよびオープンソース開発者のために闘い続けると表明。SECに対しても、シタデル・セキュリティーズの主張を退け、ユーザーとその資産の間に実際に介在する「真の仲介者」に規制の焦点を当てるよう強く求めている。

なお、シタデル・セキュリティーズは今年7月にもSECに対し、トークン化された株式について、伝統的な株式と同様の規制枠組みで扱うべきだとする意見を提出している。

一方でSECは現在、トークン化証券のエコシステム構築を促進する目的で、限定的な規制緩和措置(免除措置)の導入についても検討しているとされる。

これに対しシタデル・セキュリティーズは今回の書簡の中で、SECに対して改めて免除措置の適用を避けるよう求め、その代わりに、円卓会議(ラウンドテーブル)などを通じた議論や、公告および意見募集を伴う透明なプロセスを経て規則を策定すべきだと主張した。

同社はさらに、「SECには、免除申請を評価するにあたって、公告と意見募集を通じた透明性のある審議を行い、費用対効果を適切に検証する責任がある」とも指摘している。 

参考:シタデル意見書・ サマー・マーシンガー氏発言 
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

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