ステーブルコイン、今後3年に新興国から1兆ドル流入の可能性=スタンダードチャータード

ステーブルコインが今後3年に新興国から1兆ドル流入の可能性

英銀行大手スタンダード・チャータード(Standard Chartered)は10月7日に公表した報告書で、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領の暗号資産(仮想通貨)政策が後押しする米ドル連動のステーブルコインの急成長が、今後約3年間で新興国市場の銀行から1兆ドル(約147兆8,321億円)規模の預金を吸い上げる可能性があるとの試算を示した。

世界のステーブルコインの約99%は米ドルに連動し、経済学者らは事実上のドル建て銀行口座になっているとみなす。ステーブルコインは通貨危機が起こりやすい世界の一部地域で安全な資産として魅力が高まっている。

スタンダード・チャータードは預金がなくなってしまうことを避けたいとの願いから、個人や企業が自らの資金を銀行でなくステーブルコインのウォレットに移す動きが進むだろうと述べた。

米国の新しい暗号資産関連法は規制に従ったステーブルコインの発行体に対して、銀行口座の金利に相当する利息を直接支払うことを禁止し、預金流出の動きを和らげようとしている。しかしスタンダード・チャータードは新興国市場の人々はそれでもステーブルコインを求めるとみている。ステーブルコインを預金手段とする資金が現在の約1,730億ドルから2028年末までに1兆2,200億ドルに急増すると予測している。

スタンダード・チャータードのアナリストによれば、この金額は預金流出が起こる「リスクが高い」とされる16カ国の銀行預金のわずか2%に過ぎないという。ここ数年間で通貨危機に見舞われたエジプト、パキスタン、バングラデシュ、スリランカ、モロッコ、ケニアなどのほかにトルコ、インド、中国、ブラジル、南アフリカのような経済規模の大きな国もリスクの高い国に含まれる。

報告書では「中国を除くこれらの多くの国は経常赤字と財政赤字という双子の赤字を抱えており、世界的なリスク回避の流れや急激な通貨下落に対してもろい状態にある」と述べられた。

複数の国の政策当局者は既に、ステーブルコインが危機発生時に資本流出を容易にしかねず、また資本流出を食い止めるのが難しくなるとの懸念を示している。

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
ステーブルコイン、今後3年に新興国から1兆ドル流入の可能性
(Reporting by Marc Jones)
画像:Reuters

関連ニュース

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

あたらしい経済 編集部

「あたらしい経済」 はブロックチェーン、暗号通貨などweb3特化した、幻冬舎が運営する2018年創刊のメディアです。出版社だからこその取材力と編集クオリティで、ニュースやインタビュー・コラムなどのテキスト記事に加え、ポッドキャストやYouTube、イベント、書籍出版など様々な情報発信をしています。また企業向けにWeb3に関するコンサルティングや、社内研修、コンテンツ制作サポートなども提供。さらに企業向けコミュニティ「Web3 Business Hub」の運営(Kudasaiと共同運営)しています。

これから「あたらしい経済」時代を迎える すべての個人 に、新時代をサバイバルするための武器を提供する、全くあたらしいWEBメディア・プロジェクトです。

「あたらしい経済」 はブロックチェーン、暗号通貨などweb3特化した、幻冬舎が運営する2018年創刊のメディアです。出版社だからこその取材力と編集クオリティで、ニュースやインタビュー・コラムなどのテキスト記事に加え、ポッドキャストやYouTube、イベント、書籍出版など様々な情報発信をしています。また企業向けにWeb3に関するコンサルティングや、社内研修、コンテンツ制作サポートなども提供。さらに企業向けコミュニティ「Web3 Business Hub」の運営(Kudasaiと共同運営)しています。

これから「あたらしい経済」時代を迎える すべての個人 に、新時代をサバイバルするための武器を提供する、全くあたらしいWEBメディア・プロジェクトです。

合わせて読みたい記事

【12/15話題】リップルやサークルらが連邦信託銀行の条件付承認、SECの個人投資家向け暗号資産カストディ解説資料など(音声ニュース)

ブロックチェーン・仮想通貨(暗号資産)・フィンテックについてのニュース解説を「あたらしい経済」編集部が、平日毎日ポッドキャストでお届けします。Apple Podcast、Spotify、Voicyなどで配信中。ぜひとも各サービスでチャンネルをフォロー(購読登録)して、日々の情報収集にお役立てください。

Sponsored

米DTCC子会社DTC、SECからノーアクションレター取得。規制下のトークン化サービス検証へ

米国の金融市場インフラを担うデポジトリー・トラスト・アンド・クリアリング・コーポレーション(Depository Trust & Clearing Corporation:DTCC)が、子会社であるデポジトリー・トラスト・カンパニー(Depository Trust Company:DTC)について、米証券取引委員会(SEC)の取引市場部門スタッフからノーアクションレターを取得したと12月11日に発表した