英政府、暗号資産を強制規制の対象に、EUと異なる米国型アプローチ採用

英政府が暗号資産規制草案を公表

英国は暗号資産(仮想通貨)を強制的な規制の対象とする方針であると、同国財務相のレイチェル・リーブス(Rachel Reeves)氏が4月29日に述べた。英政府は、デジタル資産に対する最適なアプローチを模索する中で、米国と緊密に連携していく姿勢を示している。

今回の規制草案は、暗号資産に関与する企業に既存の金融規制を拡張する内容であり、英国は業界特化の規則を構築している欧州連合(EU)ではなく、米国に歩調を合わせることになると専門家は述べている。

英国によるこの分野での初の規制草案は、米大統領ドナルド・トランプ(Donald Trump)氏が暗号資産を積極的に受け入れ、業界への規制緩和を誓ったことを受けての動きであり、この姿勢に対して批判的な声もある。ユーロ圏の財務相らは先月、米国の姿勢がユーロ圏の金融主権および金融安定に悪影響を及ぼす可能性があるとの懸念を示していた。

リーブス氏は、先週ワシントンを訪問した際に米財務長官スコット・ベセント(Scott Bessent)氏と暗号資産規制について協議したと明かし、両国はこの議題について6月にも追加協議を行う予定であると述べた。

リーブス氏の発表を受け、英財務省は声明を出し、「新たな規則のもとでは、暗号資産取引所、ディーラー、代理人が規制対象となり、不正行為者の取り締まりと正当なイノベーションの支援が両立される」と述べた。

さらに、「英国に顧客を有する暗号資産企業は、透明性、消費者保護、業務の継続性に関する明確な基準を満たさねばならない」と付け加えた。

政府によれば、英国の成人の約12%がビットコインやイーサリアムといった暗号資産を現在または過去に保有した経験があり、この割合は2021年の4%から上昇しているとのことである。

イングランド銀行総裁アンドリュー・ベイリー(Andrew Bailey)氏は、ビットコインについて、主流通貨のような安定的な価値保存手段とは見なしておらず、投資家にとってのリスクを以前から警告してきた。

一方で、米ドルなどの資産に対して一定の価値を維持するよう設計されたデジタル通貨であるステーブルコインについては、規制の必要性が高いと認識している。

政府の草案によれば、ステーブルコインの発行者は英国に拠点を置く場合に限り、規制対象となる。

財務省は、2023年に提示された初期提案を基に、今年末までにこの新法案を最終化する方針である。

一部の批判者は、こうした分野への規制導入が、実体的価値の乏しいデジタル証券に対するリスクに関して、国民に過度な安心感を与える可能性があると指摘している。

しかし、法律事務所オズボーン・クラーク(Osborne Clarke)の金融サービスおよび暗号資産の専門家ニック・プライス(Nick Price)氏は、本法案について「シンプルかつ明快な立法」であり、確実性、安定性、そして消費者保護をもたらすものだと評価した。

プライス氏はさらに、「今回の措置は、『暗号資産を証券と見なす』という米国のアプローチと明確に一致しており、EUのMiCAR規制のようなより特化型のアプローチとは異なる」と述べた。

法律事務所リンクレーターズ(Linklaters)の金融サービス弁護士サイモン・トレーシー(Simon Treacy)氏は、新たな規則は規制対象となる資産および活動の範囲を明確化する一方で、規制当局がさらに詳細な規則を策定する過程で多くの具体事項が明らかになると述べた。

また、リーブス氏は英国の金融サービス産業の成長と競争力の強化を図るための包括的な計画を、2025年7月15日に予定されている年次マンションハウス演説(Annual Mansion House Speech)で発表する予定であると述べた。この演説は、2024年11月に開始された協議プロセスの総括となる。

なお、昨年のマンションハウス演説においてリーブス氏は、世界金融危機以降の15年間で英国の金融規制当局がリスク排除に過度に傾いたと批判していた。

年次マンションハウス演説は、英国の財務大臣が毎年7月にロンドン市内にあるロンドン市長の公式公邸「マンションハウス」で行う重要な経済政策演説のことだ。

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
UK sets out new rules for crypto as it aligns with US on approach
(Reporting by David Milliken; Additional reporting by Sinead Cruise; Editing by William James, Hugh Lawson, Jan Harvey and Daniel Wallis)
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
画像:Reuters

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大津賀新也

「あたらしい経済」編集部
記者・編集者
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

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ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

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