金融庁が「令和7年度の税制改正要望項目」を公表
金融庁が、令和6(2024)年度の税制改正要望を8月30日公表した。
主な要望項目は「『資産所得倍増プラン』及び『資産運用立国の実現』」、「『世界・アジアの国際金融ハブ』としての国際金融センターの実現」、「安心な国民生活の実現」の3つ。
暗号資産(仮想通貨)に関する言及箇所は「『資産所得倍増プラン』及び『資産運用立国の実現』」の「金融所得課税の一体化」の項目で触れられた。この項目は「損益通算の範囲拡大」に関する内容であり、農林水産省と経済産業省の共同要望として提出されている。
同項目では、金融所得課税に関する現状と課題が記された。金融商品間の損益通算の範囲は2016年から上場株式等に加え、特定公社債等にまで拡大されたものの、デリバティブ取引などは未だ損益通算が認められていないため、投資家が多様な金融商品に投資しやすい環境の整備は道半ばという問題点を挙げている。
要望事項としては、「証券・金融、商品を一括して取り扱う総合取引所が2020年7月に実現したことを踏まえ、投資家が多様な金融商品に投資しやすい環境の整備を図り、家計による成長資金の供給拡大等を促進する観点から、金融商品に係る損益通算範囲をデリバティブ取引・預貯金等にまで拡大すること」が掲げられた。
暗号資産に言及された箇所では、「暗号資産取引に係る課税上の取扱いについては、暗号資産を国民の投資対象となるべき金融資産として取り扱うかなどの観点を踏まえ、検討を行っていく必要がある」とだけ記載されているため、具体的な検討内容などは不明だ。しかし暗号資産が「国民の投資対象となるべき金融資産」にあたると判断されれば、暗号資産の税制改正や暗号資産上場投資信託(ETF)が国内で解禁される可能性も出てくる。
金融庁の井藤英樹長官は8月7日公開されたブルームバーグのインタビューにて、暗号資産に連動するETFを国内でも承認するかどうかは、「慎重に検討する必要がある」との考えを示している。
井藤氏によれば、投資信託は国民が長期的かつ安定的な資産形成を行うために作られた制度であり、その制度の趣旨に暗号資産が沿うかというと「必ずしもそうではないという見方もまだ多いのではないか」と述べている。
参考:税制改正要望について・ブルームバーグ
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