北朝鮮、盗んだ暗号資産1億4750万ドルを資金洗浄、国連専門家パネルが報告=ロイター

トルネード・キャッシュを通じて

北朝鮮が昨年、暗号資産(仮想通貨)取引所から盗んだ1億4750万ドルを、暗号資産プラットフォーム「トルネード・キャッシュ(Tornado Cash)」を通じて3月に洗浄したことが、国連制裁専門家パネルの極秘資料で明らかになった。同資料をロイターが5月14日に確認した。

5月10日に提出された文章にて専門家パネルは、国連安全保障理事会の制裁委員会に対し、2017年から2024年の間に暗号資産企業に対する北朝鮮のサイバー攻撃の疑いがある97件(約36億ドル相当)を調査してきたことを報告。

その中には、昨年末に暗号資産取引所HTXから盗まれた1億4750万ドルが今年3月に洗浄された攻撃も含まれていると、専門家パネルは暗号資産分析会社ペックシールド(PeckShield)とブロックチェーン調査会社エリプティック(Elliptic)の情報を引用して委員会に伝えている。

2024年だけでも、専門家パネルは「11件の暗号資産窃盗……5470万ドル相当」を調査していると述べ、その多くは「暗号資産関連の小企業に偶然雇われた朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)のIT労働者によって行われた可能性がある」と付け加えた。

国連加盟国や民間企業によれば、海外で働く北朝鮮のIT労働者は、「北朝鮮にかなりの収入をもたらしている 」という。

北朝鮮は、2006年以来国連の制裁下にある。弾道ミサイルや核開発計画の資金を削減するために、その制裁措置は年々強化されている。

ニューヨークの国連北朝鮮代表部はコメントの要請に、すぐに返答はなかった。

米国は2022年、北朝鮮を支援しているとして、暗号資産ミキシングサービスの「トルネード・キャッシュ」を制裁した。その共同設立者の2人は2023年、北朝鮮とつながりのあるサイバー犯罪グループのためになど、10億ドル以上のマネーロンダリングを促進した罪で起訴された。

9月に米国での起訴に対して無罪を主張した「トルネード・キャッシュ」の共同設立者であるローマン・ストーム(Roman Storm)氏の弁護士は、コメントの要請にはすぐに応じなかった。

「トルネード・キャッシュ」のような暗号資産ミキサープラットフォームでは、多くのユーザーの暗号資産を預かり、資金の出所や所有者を隠すためにそれらを混ぜ合わせている。

専門家パネルは、任期延長が否決され、4月末で打ち切られた。ロシアが専門家パネルの任期延長の決議案に拒否権を行使したためである。

一部の専門家パネルはやり残した仕事を提出し、それは国連理事会の北朝鮮制裁委員会と5月10日に共有された。

従来だと、専門家パネルによる報告書はまず8カ国すべてのメンバーによって合意される。委員会に提出された未完成の報告は、そのプロセスを経ていない。

専門家パネルは、凍結された北朝鮮資産3000万ドルのうち900万ドルをロシアが放出し、平壌が南オセチアにあるロシアの銀行に口座開設することを許可したため、国際的な銀行ネットワークにアクセスしやすくなったという、2月6日付のニューヨーク・タイムズ紙が報じた記事について調査していたという。

専門家パネルはまた、北朝鮮とロシア間の武器取引に関与した疑いのある船舶が、北朝鮮の羅津(ラジン)港とウラジオストクやボストーチヌイを含むロシアの港との間でコンテナを運ぶ航海を続けていたことを報告。

専門家パネルによれば、アンガラ号と呼ばれる特定の1隻が2月以来、中国の寧波(ニンポー)港に停泊しており、そこでメンテナンスを受けていた可能性があるという。ロイターは、中国がこの船に係留場所を提供していると報じている。

ニューヨークのロシア国連代表部は、専門家パネルの活動に関するコメントを拒否した。中国の国連代表部はコメント要請に、すぐに返答していない。

米国などは、ロシアが2022年2月のウクライナ侵攻で使用した兵器は北朝鮮によって提供されていると非難した。モスクワと平壌はこれを否定しているが、両国は昨年には軍事関係の強化を誓約している。

先月、国連の制裁専門家パネルは、1月2日にウクライナの都市ハリコフに着弾したミサイルの破片が、北朝鮮の「華城11」シリーズの弾道ミサイルのものであったことを国連安全保障理事会に報告した。

安保理は石炭、鉄、鉛、繊維製品、水産物を含む北朝鮮の輸出を禁止し、原油と石油精製品の輸入を制限している。

「北朝鮮とその斡旋者は、北朝鮮による船舶の継続的な取得、船舶間輸送を含む石油精製品の輸入、石炭の輸出など、海上手段を通じて制裁を回避し続けている」と専門家パネルは報告している。

専門家パネルは、北朝鮮の貨物船が中国沿岸海域で石炭を積み出すために208回航海したという、匿名の加盟国からの情報を調査していると述べ、そのほとんどが船舶間輸送で行われた可能性が高いと付け加えた。

「中国沿岸警備隊の船舶が、中国海域で石炭を積み出した疑いのある北朝鮮船舶に近接していることが何度か確認された」と、専門家パネルは記している。

中国の国連代表部はコメントの要請にすぐに応じなかった。

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※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
Exclusive-North Korea laundered $147.5 million in stolen crypto in March, say UN experts By Michelle Nichols
Reporting by Michelle Nichols; Editing by Don Durfee and Deepa Babington
翻訳:髙橋知里(あたらしい経済)
images:Reuters

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髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

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