欧州消費者機構、欧州委員会にSNSの暗号資産広告規定強化求める

主要ソーシャルメディアが軒並み標的に

ヨーロッパの消費者団体の上部団体である欧州消費者機構(BEUC)と9つの加盟組織(デンマーク、フランス、ギリシャ、イタリア、リトアニア、ポルトガル、スロバキア、スペイン)が、インスタグラム(Instagram)、ユーチューブ(YouTube)、ティックトック(TikTok)、ツイッター(Twitter)らに対し、暗号資産広告の規定を強化するよう欧州委員会(EC)と消費者当局に申し立てを行った。

発表によればBEUCは、それらSNS企業には広告とインフルエンサーを用いて、暗号資産(仮想通貨)について誤解を招くような広告を行った責任があると指摘。

こういったことからBEUCは、消費者保護協力ネットワークに対し、ソーシャルメディアプラットフォームに次のことを要求するよう呼びかけている。

1つ目に「プラットフォームにおける暗号資産広告に関する広告ポリシーの厳格化(およびその実施)」、2つ目に「インフルエンサーが暗号資産の性質について消費者を誤解させることを防止する措置の導入」、3つ目に「消費者保護のために導入された措置の有効性について欧州委員会に報告すること」だ。

さらにBEUCは、欧州の消費者当局に対し、欧州の金融サービス監督当局と協力し、プラットフォームが暗号資産の誤解を招く宣伝を防止するために広告方針を変更することも求めている。

BEUCのモニク・ゴエンス(Monique Goyens)事務局長は「消費者は、ソーシャルメディア上の広告やインフルエンサーによって、『一攫千金』の投資を約束されることが増えているが、残念ながらほとんどの場合、こういった主張は事実とするには良すぎるものであり、消費者は司法に頼ることなく大金を失う高いリスクにさらされている」とし、「暗号資産は、新しい暗号資産市場規制(MiCA)によってまもなく規制されるが、この法律はソーシャルメディア企業には適用されない。このためインスタグラム、ユーチューブ、ティックトック、ツイッターが暗号資産詐欺や偽りの約束から消費者を保護する義務を果たすよう、消費者保護を担当する当局に頼っているのだ」と述べている。

インフルエンサーによる暗号資産宣伝

インフルエンサーによる暗号資産の違法宣伝はしばしばニュースになっている。

昨年10月には米SEC(証券取引委員会)が、モデルや実業家、リアリティー番組への出演などの活動で知られるキム・カーダシアン(Kim Kardashian)氏を提訴している。

カーダシアン氏は自身のインスタグラムにてEMAXのウェブサイトへのリンクを含め投稿していた。この行為により、同氏が潜在的な投資家に対しEMAXを購入するための知識を提供したとSECは判断。またこの投稿の報酬として、同氏は25万ドル(約3,600万円)を受け取っていたという。

この指摘について、カーダシアン氏は認めることも否認することもせず、罰金の他、不正に得た利益、判決前の利息を合わせて126万ドル(約1.8億円)の支払いに同意したとのこと。また暗号資産証券を3年間は宣伝しないことにも同意している。

なおカーダシアン氏とEMAXをめぐる問題は、同氏が昨年6月に当時2億2,800万人ものフォロワーを抱える自身のインスタグラムでEMAXの宣伝を行ったことから始まっている。その後EMAXの価値は24時間で3分の1まで暴落していた。

またそれと同時期に、元プロボクサーのフロイド・メイウェザー(Floyd Mayweather)氏や元プロバスケットボール選手のポール・ピアース(Paul Pierce)氏もEMAXの宣伝を行っていたことが報じられていた。

カーダシアン氏、メイウェザー氏、ピアース氏らを含めたEMAXのプロモーターらは昨年1月に、この宣伝行為に関して、投資家らから集団訴訟を受けていた。

この件についてSECのゲーリー・ゲンスラー(Gary Gensler)委員長は「有名人やインフルエンサーが暗号資産証券を含む投資機会を支持しても、それらの投資商品がすべての投資家に適しているとは限らない。投資家には自身の目的に照らし、潜在的なリスクと機会を検討することを我々はお勧めしたい」とコメントしている。

なおその後、12月にカーダシアン氏らへの訴訟は米カリフォルニア州の連邦判事により棄却された。棄却の理由としては、原告らの訴えには「インフルエンサーらの宣伝を見たか」についてや、「具体的な時期」について述べられていなかった。そのため主張は不明瞭と判断したのとのことだった。

しかし6月7日に裁判所は、原告による新たな申し立てを受け、裁判を続行する姿勢に転換。

新たな申立てで原告は、2022年5月のカーダシアン氏のソーシャルメディアへの投稿は「虚偽」であり、6月の投稿は「EMAXトークンが希少であると偽っているため誤解を招く」ものであったと主張している。

MiCAについて

現在EUは暗号資産市場規制法案(MiCA/マイカ)の法制化への歩みを順調に進めている。

5月16日には、EU全メンバー国の財務大臣からなる経済金融問題理事会がMiCAを採択。MiCAは今夏に欧州連合広報に掲載され、発効予定とのこと。ステーブルコインに関する規制は1年以内に、その他の規制は1年半後に施行されるという。このプロセスを経てMiCAは正式にEU法となる予定だ。

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参考:BEUC
デザイン:一本寿和
images:iStocks/richterfoto

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

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