巨額送金受け取りのCZ氏関連企業、過去にバイナンスUSプラットフォーム上で営業か=報道

メリットピークがバイナンスUS上で過去にサービス提供

バイナンスCEOのCZ氏が経営する取引会社メリットピーク(Merit Peak)が、バイナンスUS(Binance US)のプラットフォーム上でマーケットメイカーとして運営されていたことが発覚した。

ロイターは2月16日、銀行記録や社内メッセージを引用し、バイナンスがバイナンスUSの口座からメリットピークへ巨額の資金を秘密裏に送金していたことを報じた。具体的には2021年1月から3月にかけて、4億ドル(約538億円)以上の送金が行われている。

この報道後、バイナンスUSは「バイナンスUSのプラットフォーム上で運営されていた『メリットピーク』というマーケットメイキング会社は存在していたものの、2021年にはプラットフォーム上でのすべての活動を停止した」とツイート。しかし、停止時期の詳細についての説明はなく、メリットピークにおけるCZ氏の役職についてもコメントしていない。

グローバル版のバイナンスは米国での営業ライセンスを得ていない。しかし今回発覚したメリットピークへの送金は、「完全に独立したアメリカにおけるパートナー」と公言して活動しているバイナンスUSの財務を、バイナンスがコントロールしていることを示唆するものである。

その2月16日の報道が出る前、バイナンスUSはロイターに対し「メリットピークはバイナンスUSのプラットフォームで取引及び何らかのサービス提供も行っていない」と述べていたが、それ以上の詳細は明かさなかった。

またロイターが確認したバイナンスUSの社内メッセージによれば、バイナンスUSの幹部は、自ら関知しないところで送金が行われていたため流出を懸念していたという。

このことについてバイナンスの広報担当者は、ロイターの質問には応答しなかったが、コインデスクの質問に対し「(送金は)バイナンスUSの問題である」と回答している。

CZ氏は2月17日、バイナンスが米国への潜在的投資を引き揚げたとツイートしている。これは最近のSEC(証券取引委員会)による暗号資産(仮想通貨)企業に対する監視強化を受けての発言とみられる。

昨年11月の大手取引所FTX崩壊以来、マーケットメイカーの活動はことさら規制当局と政治の注目を集めている。

規制当局は、一部のマーケットメーカーが暗号取引所から公表されていない特別扱いを受けており、顧客に不利益を与える可能性があることを懸念している。

SECは昨年12月、FTX元CEOサム・バンクマン・フリード(Sam Bankman-Fried)氏に対し、FTX子会社「アラメダ・リサーチ(Alameda Research)」へ特別な権限を与え、数十億ドルもの顧客資産を搾取させたと告発。サム・バンクマン・フリード(Sam Bankman-Fried)氏は無罪を主張している。

ロジャー・マーシャル(Roger Marshall)上院議員はロイターに対し、「明らかに不審なことが起こっている。議会は答えを求めており、バイナンスUSとシルバーゲート銀行には説明責任がある」とコメントしている。

CZ氏及びバイナンスの動き

CZ氏はこれら報道について言及はしていないが、彼が1月3日にツイートした「2023年をシンプルにするために心がけること」の中の4番目「FED(悪い噂)、フェイクニュース、攻撃を無視する」を引用しながら、これに倣うというツイートを1月17日に行っている

バイナンスのパトリック・ヒルマン(Patrick Hillmann)最高戦略責任者はウォールストリートジャーナルとブルームバーグに対して2月15日、バイナンスがバイナンスUSに対するSECの調査解決のため罰金を払うつもりだと明かし、「バイナンスは法律や規則に疎いエンジニアによって作られたが、現在、規制遵守のギャップは解消されている」とコメントしている。また、同氏は「これはとてつもない重圧であり、私たちはただ、それを過去のものにしたい」とブルームバーグに述べている。なおヒルマン氏はロイターによる詳細な質問にへ応じていない。

昨年相次いだ大手暗号資産会社の倒産は、規制当局が米国の銀行と暗号通貨分野の関連性の評価を明確化するよう求める政治家の声もあおっている。

昨年12月、米上院議員のエリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)氏とティナ・スミス(Tina Smith)氏が金融規制当局へ送った、暗号業界が銀行へ与えるリスクを問う文書では「暗号顧客に大きく依存した銀行」としてシルバーゲートが引用されている。

この報道後、シルバーゲートの株価は1日の最安値17.35ドルを記録し、約22%下落した。2021年11月の史上最高値以来、約90%下落したかたちとなる。

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※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
Binance’s U.S. partner confirms firm run by CEO Zhao operated on exchange
Reporting by Tom Wilson and Angus Berwick in LondonEditing by Susan Fenton and Matthew Lewis
翻訳:髙橋知里(あたらしい経済)
images:Reuters

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

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