【取材】経産省、三菱UFJ信託やアクセンチュアのブロックチェーン実証計画を認定

経産省、三菱UFJ信託やアクセンチュアのブロックチェーン実証計画を認定

経済産業省(経産省)が、三菱UFJ信託銀行やアクセンチュアの取り組む規制のサンドボックス制度に係る実証計画を認定したことが3月29日に分かった。

具体的には両社のブロックチェーン技術を活用した電子的取引における第三者対抗要件に関する実証に関する取り組みを認定した。

規制のサンドボックス制度とは、参加者や期間を限定すること等により、既存の規制の適用を受けることなく、新しい技術等の実証を行うことができる環境を整えることで、迅速な実証を可能とするとともに、実証で得られた情報・資料を活用できるようにして、規制改革を推進する制度だ。

また第三者対抗要件とはすでに効力がある権利関係の変動などを第三者に主張するための要件のことだ。

基本的に債権の譲渡は、債務者への通知又は債務者の承諾が確定日付のある証書によってされなければ債務者以外の第三者に対抗することができないとされている。しかし現在はデジタル取引の増加により、時代錯誤になりつつあるという。

アクセンチュアは「アクセンチュアSTOソリューション」を活用し、第三者対抗要件に関する検証を行なっていくようだ。

「アクセンチュアSTOソリューション」とは、記録の改ざんが困難とされるブロックチェーン技術を利用して受託者による信託受益権の譲渡の承諾の日時及び内容を正確に記録し、受託者が当該情報システムに接続するアプリケーションを通じて、当該記録を容易に確認することを可能とするAPIを提供するシステムとの語と。

一方三菱UFJ信託銀行はこの実証に、ブロックチェーン基盤「プログマ(Progmat)」を活用するという。「プログマ」はブロックチェーンを活用した独自のデジタル証券発行・管理プラットフォームであり、エンタープライズ向けブロックチェーン「Corda(コルダ)」が採用されている。

「プログマ」は実際に、三井物産デジタル、三菱UFJ信託、野村証券が協業して行う草津温泉旅館のSTOや三菱UFJ信託、ケネディクス、大和証券、SMBC日興証券らの資産裏付型STOの公募などでの基盤として活用されている。

三菱UFJ信託銀行はSTOに関する現状の課題について次のように説明している。

「受益証券発行信託以外の信託受益権や、匿名組合出資持分等の集団投資スキームを前提としたST (セキュリティ・トークン)では、ブロックチェーン上のST移転記録だけでは、実体法上の権利は移転していても第三者に対抗することができません。具体的には、確定日付のある証書(内容証明郵便、公正証書等)による通知又は承諾が必要となり、デジタル完結で安定的な権利移転を実現するためには、本邦ST業界全体としては課題を抱えている点を認識しておりました」

また今後プログマは、実証を経て認定新事業計画に従って提供される情報システムとなった場合、受益証券発行信託以外のスキームについてもデジタル完結で安定的な権利移転が可能となり、ST発行を希望する事業者にとっての選択肢を拡げることが可能になるとしている。

加筆:3/30日(木)17時30分

三菱UFJ信託銀行の齊藤達哉氏へ取材

あたらしい経済編集部は、三菱UFJ信託銀行経営企画部デジタル企画室のプロダクトマネージャーである齊藤達哉氏へ取材を行なった。

−−これまでの第三者対抗要件の課題は、具体的にどのようなものだったのでしょうか?

受益証券発行信託以外のスキームでは、ブロックチェーン上の記録のみでは常に二重譲渡のリスクがあり、取引が不安定化してしまうため、わざわざ公証役場に行って確定日付を取得した上で書面による通知又は承諾取付を実施する必要がありました。

ブロックチェーン上のトークンにする最大のメリットは移転をスムーズにする点であるはずですが、これでは全くそのメリットを活かせません。 では受益証券発行信託を使えばいい、という点はそのとおりです。我々三菱UFJ信託銀行にご相談いただければ、このスキームをご利用いただけます。

但し課題は不動産等のアセットを公募の受益証券発行信託でトークン化可能な事業者が、かなり限られているということです。 我々は既にこのスキームで4件/100億円超の実績はありますが、公募の受益証券発行信託でトークン化している事例は、22年3月時点で我々以外に存在していません。

Progmatは先日の発表のとおりオープン化して”無色化”していきますが、ノウハウ保有者が偏在しているようであれば、真に分権化は図れません。そこで、どんなスキームでもトークン化できるように、プラットフォームそのものが対抗要件として機能するようにしたいと考えました。

−−ブロックチェーン技術を活用した第三者対抗要件が本格的に利用されるようになるまで、どのようなハードルを乗り越えていく必要がありますか?

認定プロセスとして、「実証の認定」、「実証」、「実証結果を踏まえたシステム開発」、「情報システム認定」の段階があります。実証が終わってもそこで完了ではなく、その結果を踏まえた本番システム開発と認定プロセスがあるのですが、Progmatの場合は既に本番システム稼働済みで、多額の発行実績があり、既に認定の諸要件を満たした当該システムを使ってそのまま検証可能なため、実証からシステム認定までのプロセスは比較的容易に済むと想定しています。

システム認定にあたっては、システム機能のみならず所定のISOを取得している必要もあり、運用面セキュリティ面で相応にハードルは高いと思われます。Progmatとしては、高いハードルを乗り越え、実績面でも機能面でも優れたプラットフォームとなることを目指しています。

参考:経産省三菱UFJ信託
デザイン:一本寿和
images:iStocks/Who_I_am・MARHARYTA-MARKO

この記事の著者・インタビューイ

竹田匡宏

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。
「あたらしい経済」の編集者・記者。

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。
「あたらしい経済」の編集者・記者。

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