韓国MZ世代が「メタバース(仮想世界)」への流入を加速させる

韓国MZ世代が「メタバース」への流入を加速させる

韓国のエンジニアであるショーン氏は、最近数百万ウォン(数十万円)で購入した土地を長期的な収益源とするために開発するという大きな計画を持っている。

この30歳の投資家はロイターに対し「K-POPのライブや韓国ドラマの上映に適した建物を設計するつもりです。23年後には収益性の高いビジネスモデルになるでしょう」と語った。

コロナウイルスのパンデミックによる労働力不足やコスト増加の影響で、彼の建設が妨げられることはない。なぜならショーン氏の壮大なプロジェクトは、すべてブロックチェーンベースの仮想世界「Decentraland」の中にあるからだ。

メタバースは、世界の大半の国の人々にとっては未来の話かもしれないが、韓国では徐々に現実味を帯びてきている。住宅価格の高騰と所得格差が韓国で広がるにつれ、MZ世代と呼ばれる人々が現実の代替となる仮想世界に誘い込まれている。

彼らのデジタルアバターは、ゲームや友達との散歩やパーティーなどを楽しむ傍らで、仮想世界の上に都市を構築し、収益性の高いビジネスを展開することを目論んでいる。

ショーン氏もDecentralandに魅了された一人であり、この3年間で徐々にこのプラットフォームにのめり込んでいった。

Decentralandのユーザーは、仮想世界で土地を購入し、入場料を課すナイトクラブなどのような実際のビジネスを展開することができる。現実の世界と同じように、ビジネスやその周辺のコミュニティが成功すれば、その土地の価値も上がる。

ショーン氏のような一般ユーザーのみならず、投資顧問会社や通信会社、さらには韓国政府までもが、この仮想世界に参入している。

サムスン・アセット・マネジメント(Samsung Asset Management)は、サムスン・グローバル・メタバース・ファンド(Samsung Global Metaverse Fund)を6月下旬に立ち上げた。このファンドには毎日1020億ウォン程度の資金が流入し、2021年末までに1,000億ウォン(約95億円)の資金を集めるという目標を容易に達成すると見込まれている。

サムスン・アセット・マネジメントの副社長であるチェ・ビョングン氏は、パンデミック以降、人々が遠隔地で仕事をするようになり、メタバースへの関心が高まったと述べている。サムスンのメタバースファンドが発売されたのは、KB・アセット・マネジメント(KB Asset Management)によるKB・グローバル・メタバース・エコノミー・ファンド(KB Global Metaverse Economy Fund)の発売からわずか2週間後のことだった。

チェ氏は「Facebookのような世界的な大手ハイテク企業がビジネスの方向性をメタバースにシフトさせているため、この業界に資金が集まっています」と述べている。

韓国最大の携帯電話会社であるSKテレコムは、7月にメタバース「ifland」を開設した。このサイトでは、ユーザーが他のアバターとミーティングを開いたり、他のミーティングに参加したりすることができる。

SKテレコムの関係者はロイターに対し、「パンデミックの影響で非対面が社会のトレンドになったことで、(メタバースサービスへの)需要が急増しました。毎日何千ものルームが作られ、毎日何万人ものユーザーが参加しています」と述べている。

SKテレコムは、韓国政府が5月中旬に立ち上げた「メタバース・アライアンス」の一員である。このメタバース・アライアンスには200以上の企業や機関が参加している。

韓国の国家行政機関の一つである科学技術情報通信部の関係者はロイターに対し「政府はメタバース産業において主導的な役割を果たしたいと考えています」と述べている。また韓国政府は先週発表した2022年の6044,000億ウォン(約57兆円)の予算の中で、デジタルトランスフォーメーションの加速とメタバースのような新産業の育成に93,000億ウォン(約9,000億円)を計上している。

MZ世代とは?

韓国の人々は、メタバースがどこまで現実世界を再現することが可能なのか、開発にどれくらいの時間がかかるのかなどの疑問がまだはっきりしていないにもかかわらず、メタバースに没頭している。

社会専門家によると、このような関心の中心には不満を抱えたMZ世代(ミレニアル世代とZ世代を統合した、1981年から2010年代前半生まれの人々)が存在しているという。

コロナウイルスの流行が長引くにつれ、韓国では「接触」経済の反対語である「非接触」経済という新しい言葉が生まれている。

江原(カンウォン)大学の産業工学部教授で、2020年後半にメタバースに関する2冊のベストセラーを出版したキム・サンギュン氏は「メタバースの流行は、社会の二極化を原因とするMZ世代の悲しみと怒りを反映しています」と語る。

さらにキム氏は「MZ世代の人々はメタバースを現実世界の代替とは考えてはおらず、自分たちの生活の一部と捉えています。彼らは上の世代と違って、生まれたときからデバイスを通して世界とコミュニケーションをとってきた世代なのです」と続けた。

37歳のチェ・ジウン氏は、現実世界での不動産価格や規制への不満から、ジオロケーションベースのプラットフォーム「Earth 2」で不動産を購入した。

チェ氏はEarth 2でソウルの江南地区の一部を5,000万ウォン(約470万円)を購入した。これは現実世界では夢のような話である。

「購入するのも簡単で、思っていたよりも高くなかった」と彼は語っている。

Decentralandを始めとする、多くのメタバース・プラットフォームを支えているのはNFTである。NFTはアート作品やビデオ、服やアバターなどあらゆるものを含む無形のデジタル資産であり、暗号資産で購入することができる。

Decentralandでは、限られた数のデジタル土地区画(LAND)をNFTとして提供しており、ユーザーはゲーム内の通貨として機能するトークンであるMANAを使って購入することができる。アルトコインであるMANAは、暗号通貨取引所で法定通貨を用いて購入したり、ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産と交換することで取得することができる。

現実世界と同じように、人気のある地区に近い土地は、他よりも価値が高くなる。2017年にDecentralandが立ち上がったときには2,000円程度で売られていたが、今では数千万円で取引されている土地も存在する。

ショーン氏をはじめとする土地所有者は、プラットフォームの発展に伴い、自分の土地をコンサート会場の建設や公演の入場料徴収などのようなビジネスに利用することで収益を上げることができると考えている。

Decentralandの変更や開発は、ユーザーのために活動する非営利団体として設立されたDecentraland Foundationによって監督されている。

(次ページに続く)

この記事の著者・インタビューイ

小俣淳平

「あたらしい経済」編集部
一橋大学2年生
真面目で温厚な20歳。大学1年生のころにブロックチェーンに出会い、その革新性に衝撃を受け、ブロックチェーン業界に足を踏み入れた。勢いのままに学内で「OneLab」というサークルを立ち上げ、週一で活動している。

「あたらしい経済」編集部
一橋大学2年生
真面目で温厚な20歳。大学1年生のころにブロックチェーンに出会い、その革新性に衝撃を受け、ブロックチェーン業界に足を踏み入れた。勢いのままに学内で「OneLab」というサークルを立ち上げ、週一で活動している。

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