仮想通貨・ブロックチェーンベンチャーが生き残るために必要なこと PoT #02-2 GMOインターネット熊谷正寿 × Aerial Partners沼澤健人

藤本真衣

仮想通貨・ブロックチェーン業界の企業が長く生き残り続けるためには

藤本:前回の記事で、インターネットバブルの時に沢山の企業ができたけど現在はその多くは淘汰されてしまった、とお話にありましたが、そんな中でもGMOインターネットさんはどんどん大きくなっていきましたよね。それは本当にすごいと思います。そんな会社を作って成長させた熊谷さんからみて、今多くの仮想通貨・ブロックチェーン業界に増えてきている企業が、長く生き残り続けるためにはどのようなことが大事だと思いますか?

熊谷:正直言うと、残る会社、残らない会社というのは、おそらく最初から決まっていると思います。残りやすい会社や事業もあります。

一方、ダメな事業、ダメな会社、ダメな案件というのは見分け方があります。まず大前提として、会社もサービスも、誰しも失敗しようと思って始める人は、一人もいないわけですよ。

それはインターネットや仮想通貨などに関わらず、例えばラーメン屋とかファンションブランドとかでも始める時に誰も失敗してお金損しようと思っていませんよね。むしろ絶対上手くいくと思って始めているわけです。

でも一説によると、スタートアップというのは5年で7割近くが消えて、10年で約9割が消える。20年も保っている会社というのは、なんと0.3%と言われています。つまりそうやってビジネスを始めた人たちが仮に1000人いたら、20年経つと997人は失敗しているわけなんですよね。

ではなぜそうなるかというと、みんな同じことやって差別化できなくなってしまうからだと思っています。でも他の人と同じことやってちゃダメというのは当たり前な話だからこれは置いといて、ではさらに何が大切かというと、その市場の中で残りやすい領域、残りやすい業態、残りやすい課金形態といったものは必ずあるわけで、それをビジネスの構造をよく見て判断できているかが大切だと思うんです。

そして仮想通貨業界に関しては、現時点ではまずビジネスの領域を大きく3つに分けることができると思います。それは、決済領域、エクスチェンジの領域、マイニングの領域です。

仮想通貨は金(ゴールド)のように資産の保存手段なのか、あるいはお金(通貨)のように決済に使えるものになるのか?

ではその前提の上で仮想通貨が歴史的に金(ゴールド)となるものなのかというのを考えなければいけない。つまり仮想通貨は金(ゴールド)のように資産の保存手段なのか、あるいはお金(通貨)のように決済に使えるものになるのか。

この答えは正直に言って今現在は誰も正確に回答できる人はいないと思っています。だって未来のことですから。それを証明できるのは歴史だけです。

しかし今の状況をみて、僕は少なくとも仮想通貨は金(ゴールド)である可能性は高いと思っています。つまり資産の保存手段である可能性が高いということです。では仮に仮想通貨が金(ゴールド)だとする、さきほどの想定できる3つのビジネス領域の中で生き残れるのは、まずはマイニング関連かエクスチェンジ関連なんだということが予想できます。そして将来、仮想通貨がお金(通貨)のようなものになった時は、決済関連の領域の会社も生き残れるわけです。

まずはこのようにその業界の仕組みとか構造から、どの領域が生き残る可能性が高いかをきちんと考えるのはすごく大事なんですね。こうやって理路整然とロジカルに考えていくと、残りやすい会社が見えてくるわけです。

だから僕らはエクスチェンジはまず間違いないだろうと確信して参入しました。そして同じ理屈からマイニングに参入したんです。マイニング事業はもちろん自らマイニングもしますが、マイニングマシンの製造もしています。それはゴールドラッシュに例えると金を掘っている人もよかったけど、さらに良かったのはスコップを売ったり、ジーパンを売ったりしていた人たちだからです。実際、Bitmain社さんが大変な利益を出しているのは、スコップを売っているからなんです。

仮想通貨投資支援というビジネス領域

藤本:このお話、私も経営者として非常に勉強になります。ところで沼澤さんはブロックチェーン・仮想通貨のどの領域からお仕事を始められたんですか?

沼澤:仮想通貨交換業のサポートをし始めたのが2016年の末くらいからです。当時会計や税務の領域で、ブロックチェーン・仮想通貨の分野を守備範囲にしている方たちがいなかったので、そこで白羽の矢が立って僕が始めたんです。そして現在でも金融庁にリスティングされている幾つかの交換業者のサポートをさせてもらっています。

僕はその領域でto Bのサポートを事業にしていました。今はかなり厳しくなっていますが、海外のプロジェクトが日本に来る時に日本のレギュレーションに基づいて正しく事業を行えるようなサポートのような、いわゆるコンサルタントみたいな事業をはじめたんです。

そしてそんな中、仮想通貨のマーケットキャップが昨年の3月末くらいからぐっと伸びてきましたよね。それこそ億り人というワードが流行り出したころです。そのタイミングで仮想通貨投資家の方がすごい勢いで増えてきたんです。

当時私自身も一個人の投資家として仮想通貨投資していました。そして私自身、たくさんの取引所やウォレットがあるなかで確定申告が非常に困難なことに気がついたんです。過去の相場情報とか、取引所のAPIをエンジニアと一緒に叩いてみて時価情報を取ってきても全然値が返ってこない、私自身非常にこれは問題だなと思いました。そしてそれは私だけではなく、この時期の増えた多くの仮想通貨投資家の方の悩みになると思ったんです。おそらくこんな状況ですので、確実に正しく税金を納められている人って、去年は一人もいなかったのではと思っています。

これはまずいと感じました。それで去年の春くらいから自分にできることをしようと思って、まずはTwitterで情報発信をスタートしたんです。そしてTwitterのダイレクトメールを開放して、仮想通貨の税金に関する質問にすべて回答します、ということを始めたんです。そしたらツイッターを始めてから3ヶ月ぐらいで常時DMで連絡し合っている人が500人ぐらいになったんです。

当時は朝起きて深夜寝るまで仕事そっちのけでずっとダイレクトメールを返して税金の質問に答えていました。そして仮想通貨の投資家が100万人を突破したころに、これはもう個人て対応できるレベルではないし、むしろこれだけ困っている人がいるのだから助けたい、そう思って個人の投資家の投資支援の領域に参入していったんです。

実は僕、熊谷さんオタクでして、ナンバーワンになれる領域だけとにかく投資をしていくGMOインターネットさんが取っているような戦略や、あとは今のマイニングの話やリーバイス戦略などもすごく勉強させて頂いています。

でも我々はまだまだベンチャーですし、大手としのぎを削って取引所のビジネスだとかマイニングだとか決済の領域でナンバーワンにはなれないですよね。だからエクスチェンジ、決済、マイニングの3つのプレイヤーがある程度競争が終わった時に、自分たちの持っている専門性と技術の力をかけ合わせて、すべてのプレイヤーをお客さんにして市場を取るということならできるのではと思ってこの領域で頑張ろうと思っています。そしていろんな事業者を使っている投資家が、我々の提供しているサービスを間接的に使っていくという形を目指していこうと考えました。

だから現在は仮想通貨投資支援の領域を主な事業として提供しています。

熊谷:まさにゴールドラッシュの時のスコップのようですね。収益モデルが、スポットじゃなくてストック型にするのは僕もいいと思います。そういうモデルをちゃんと作っていくことが重要だと思います。

沼澤:ありがとうございます。

(第3回に続く)

→続き第3回はこちら「日本が仮想通貨・ブロックチェーンで世界に勝つために必要なこと PoT #02-3

→前回第1回はこちら「仮想通貨業界の熱気は、あの頃のインターネット業界の熱気と似ている。PoT #02-1

インタビューイ・プロフィール

熊谷正寿
GMOインターネット株式会社 代表取締役会長兼社長 グループ代表
1963年7月17日長野県生まれ。東証一部上場のGMOインターネットを中心に、上場企業9社を含むグループ111社、パートナー約5,700名超を率いる。(2018年6月末時点) 「すべての人にインターネット」を合言葉に、日本を代表する総合インターネットグループとして、インターネットインフラ事業、インターネット広告・メディア事業、インターネット金融事業、仮想通貨事業を展開。 2017年に参入した仮想通貨事業では、交換事業とマイニング事業を展開。仮想通貨領域で世界ナンバーワンを目指し取り組んでいる。また、2018年7月からはGMOあおぞらネット銀行がインターネット銀行事業を開始。 主な受賞歴に、米国ニューズウィーク社「Super CEOs(世界の革新的な経営者10人)」(2005年)、経済誌「経済界」による第38回 「経済界大賞 優秀経営者賞」(2013年)、経済誌「財界」による第58回「財界賞・経営者賞」(2016年)、経営誌「企業家倶楽部」による第19回「企業家大賞」(2017年)などがある。 著書は「一冊の手帳で夢は必ずかなう」(かんき出版)、「20代ではじめる「夢設計図」」(大和書房)など。

沼澤健人
株式会社Aerial Partners 代表取締役
仮想通貨取引計算サポートと税理士紹介を行う『Guardian』、仮想通貨取引計算ツールである『G-tax』を提供。Twitterの仮想通貨アカウント「二匹目のヒヨコ(@2nd_chick)」中の人としてブロックチェーン業界の会計・税務領域を中心に啓蒙活動を行っている。会計コンサルティングファームであるAtlas Accounting代表として、仮想通貨交換業者やブロックチェーンプロジェクトの顧問を務めており、一般社団法人日本仮想通貨税務協会理事も兼任。

(編集:設楽悠介・小俣淳平)

Proof Of Talkについて

「あたらしい経済」と「グラコネ」の仮想通貨・ブロックチェーン業界に質の高いコンテンツを生み出し、業界のさらなる活性化を目指す共同企画第1弾「Proof Of Talk(PoT)」がスタートしました。グラコネ代表であり、ミスビットコインとして仮想通貨界を牽引してきた藤本真衣と、あたらしい経済を切り開くトップランナーたちとの鼎談企画です。

第2回はGMOインターネット株式会社 代表取締役会長兼社長 グループ代表 熊谷正寿氏と株式会社Aerial Partners 代表取締役 沼澤健人氏とのトークセッションを全3回でお届けします。

(今までのすべてのProof Of Talk(PoT)」はこちら

この記事の著者・インタビューイ

藤本真衣

Intmax Co-Founder
2011年にビットコインと出会って以来、国内外でビットコイン・ブロックチェーンの普及に邁進。海外の専門家と親交が深く「MissBitcoin」と呼ばれ親しまれている。
自身は日本初の暗号通貨による寄付サイト「KIZUNA」やブロックチェーン領域に特化した就職・転職支援会社「withB」ブロックチェーン領域に特化したコンサルティング会社「グラコネ(Gracone)」などを立ち上げる。
暗号通貨とBlockchainをSDGsに活用することに最も関心があり、ブロックチェーン技術を使い多様な家族形態を実現する事を掲げたFamiee Projectや日本円にして17億円以上の仮想通貨寄付の実績を誇るBINANCE Charity Foundationの大使としても活動している。
NFT領域に関しては、2018年よりNFTに特化した大型イベントを毎年主催している他、Animoca Brands等の、国内外プロジェクトのアドバイザーも多数務める。2020年以降は、事業投資にも力を入れており、NFTを使った人気ゲーム、Axie Infinity」を開発した Sky Mavis 、Yield Guild Games、Anique等に出資している。現在はイーサリアムのLayer2プロジェクト「Intmax」のCo-Founderとして活動中。

Intmax Co-Founder
2011年にビットコインと出会って以来、国内外でビットコイン・ブロックチェーンの普及に邁進。海外の専門家と親交が深く「MissBitcoin」と呼ばれ親しまれている。
自身は日本初の暗号通貨による寄付サイト「KIZUNA」やブロックチェーン領域に特化した就職・転職支援会社「withB」ブロックチェーン領域に特化したコンサルティング会社「グラコネ(Gracone)」などを立ち上げる。
暗号通貨とBlockchainをSDGsに活用することに最も関心があり、ブロックチェーン技術を使い多様な家族形態を実現する事を掲げたFamiee Projectや日本円にして17億円以上の仮想通貨寄付の実績を誇るBINANCE Charity Foundationの大使としても活動している。
NFT領域に関しては、2018年よりNFTに特化した大型イベントを毎年主催している他、Animoca Brands等の、国内外プロジェクトのアドバイザーも多数務める。2020年以降は、事業投資にも力を入れており、NFTを使った人気ゲーム、Axie Infinity」を開発した Sky Mavis 、Yield Guild Games、Anique等に出資している。現在はイーサリアムのLayer2プロジェクト「Intmax」のCo-Founderとして活動中。

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