仮想通貨業界の熱気は、あの頃のインターネット業界の熱気と似ている。PoT #02-1 GMOインターネット熊谷正寿 × Aerial Partners沼澤健人

藤本真衣

Proof Of Talkについて

「あたらしい経済」と「グラコネ」の仮想通貨・ブロックチェーン業界に質の高いコンテンツを生み出し、業界のさらなる活性化を目指す共同企画第1弾「Proof Of Talk(PoT)」がスタートしました。グラコネ代表であり、ミスビットコインとして仮想通貨界を牽引してきた藤本真衣と、あたらしい経済を切り開くトップランナーたちとの鼎談企画です。

第2回はGMOインターネット株式会社 代表取締役会長兼社長 グループ代表 熊谷正寿氏と株式会社Aerial Partners 代表取締役 沼澤健人氏とのトークセッションを全3回でお届けします。

(今までのすべてのProof Of Talk(PoT)」はこちら

仮想通貨・ブロックチェーン業界に参入の理由

(写真左から沼澤健人氏、熊谷正寿氏、藤本真衣氏)

藤本真衣(以下 藤本):お二人は仮想通貨・ブロックチェーン業界になぜ参入されたんでしょうか?

沼澤健人(以下 沼澤):私はブロックチェーンによってもたらされる「革命」に興味関心がありました。当然ですが産業革命の時、私は生まれていませんでした。そして2000年代に情報革命が起きたときも、熊谷さんをはじめ時代を作った立役者の皆さんの背中をただ指をくわえて見ていたのが私の世代です。

そしてブロックチェーンという技術によって、次の新しく革命が起きていくと感じた時、私自身も革命の立役者の一人になりたい、そういう純粋な思いがありました。

その思いから仕事として仮装通貨交換業者の金融庁登録のサポートをしはじめたのが参入のきっかけです。そこから個人の投資家の方の仮想通貨投資支援の領域に参入して、今は業界内で縁の下の力持ちになるべく事業活動をしています。

熊谷正寿(以下 熊谷):ちなみに沼澤さんは今おいくつですか?

沼澤:今年31歳になります。

熊谷:では、仮想通貨やブロックチェーンにめぐりあったのはいつですか?

沼澤: 2014年なので26歳の頃です。マウントゴックスの破綻の後で、東京で3ヶ月に1回くらい勉強会が行われるのをすごく楽しみにしていた時代です。そこでまずブロックチェーンの技術に出会って強い興味を持って勉強しました。そして仮想通貨を自分でも持ってみようと思い、投資をしはじめました。そして興味を持ってどんどんのめり込んでいってから、実際に仕事として関わるようになったのが30歳のころです。

熊谷:偶然なんですけど、僕がインターネットに巡り合ったのがちょうど沼澤さんと同じくらいの歳の頃でした。それが1993~4年頃で、僕が30歳くらいのときです。当時僕もインターネットがこの世の中を変えると感じ、自分で事業をしようと思ったのです。

そして1995年、32歳のときにインターネットの事業を開始しました。まずはプロバイダの事業をスタートしました。その後、36歳と一ヶ月で店頭公開し、それから一年の間にネットバブルが起こって、という流れでした。だからまさに僕がインターネットに出会って仕事を始めた頃と、沼澤さんが仮想通貨に出会って仕事を始めた頃はちょうど同じ30歳ぐらいの頃なんですね。

沼澤:なんだか嬉しいです。

ブロックチェーンは革命だ!

熊谷:当時のインターネットへのわくわく感と、今の仮想通貨へのわくわく感はとても似ていると僕は感じています。仮想通貨やブロックチェーンは、10年前にサトシ・ナカモトさんの論文が世に出てから、最初はニッチな人たちだけしか認知していなかったと思います。それから4、5年経って僕が初めて仮想通貨を知ったのは堀江貴文くんがきっかけでした。

当時出所直後の堀江くんが家に遊びに来て、仮想通貨のことを教えてくれたんです。それから仮想通貨の業界のいろんな方を何度もご紹介頂いたりしました。そこから僕も仮想通貨に関心を持ち始めたんです。

そのあとタイミングを同じくしてGMOクリック証券を作った高島会長が「ブロックチェーンに参入しないとダメです」と、僕にダイレクトメールを送ってきて。それから一気にブロックチェーンのことを勉強し始めて、これは革命であるということに気づきました。

その後、GMOインターネットグループでは、渋谷近辺で働くパートナー(従業員)約3千人が集まり、地方オフィスはライブ配信で参加する、「グループ全体ミーティング」という会を四半期に一回開催しています。僕はそこで「ブロックチェーンは革命だ。記録コストの激安革命で、ここに参入しなきゃダメ。グループ各社各部署、ブロックチェーンの研究をしなさい」という指示を出したのを覚えています。それが2016年のことです。

仮想通貨交換の事業化(GMOコイン社)については、今から4年前、この時には既に検討を進めていて、翌年の春には、営業を開始したのです。

実はその後、僕はちょっと病気になってしまって2ヶ月ほど入院することになってしまったんです。突然の入院生活で時間ができてしまい、ちょうどいいから治療のついでに古くなってしまっていたかもしれない自分の知識も手術しようと思い立ちました。

2ヶ月間丸々かけて、Googleさん、バイドゥさん、Facebookさん、Amazonさん、そして日本のベンチャーが、それぞれ何やっているのか、ブロックチェーンの動きも含めて全部調べました。

それから、自分自身マイニングに参入しようと思って、退院直後に自社でのマイニングマシンの製造と、既存のマシンを使ったマイニング事業への参入を意思決定し、9月から一気に作りはじめました。仮想通貨・ブロックチェーンとの出会いから今日に至るまでの流れは、まとめるとそんな感じです。

沼澤:そう考えるとかなり長いですね。

熊谷:そうですね。最初に堀江くんに仮想通貨教えてもらったのが彼が出所した頃なので、約5年前からですね。

藤本:ちょうどそのころ私も堀江さんになんとかお会いできないかと思っていた時期でした。当時堀江さんが「ホリエモンちゃんねる」を開始して、そこで大石哲之さんをゲストに招いて、ビットコインのことをお話しされていたのを見たんですよ。

当時ビットコインのことは本当にほとんどの人がよくわかっていなくて、耳すら傾けてくれなかった。だから堀江さんのような著名なビジネスパーソンが仮想通貨の可能性を発信してくれることは、一般の人たちが仮想通貨に興味を持つ大きなきっかけになると感じていたんですよね。

だから私は早く堀江さんに、日本でビットコインを拡げる活動をしていたロジャー・バーを会わせるべきだと思って堀江さんにしつこいくらい連絡をしていたんですよ。当時は無視されていましたけど(苦笑)。

ちなみに堀江さんに初めて仮想通貨の話を聞いたときに、熊谷さんは個人的に仮想通貨を購入したりしたんですか?

熊谷:僕は割と慎重派で、その時は一切買ってないです。当社は金融事業もやっているので、下手なことやって何かあるとよくないとも思って買いませんでした。あと自分たちも仮想通貨取引所をやろうと思っていたんで、競合のサービスを使う気にもなれなかった。だから僕自身が実際に仮想通貨を売買したのはグループ会社として立ち上がった「GMOコイン」ができてからですね。ちなみにかなり大口の投資をしています。GMOコインで僕が一番の大口の投資家じゃないかな(笑)

藤本:額が気になる(笑)

熊谷:(笑)

仮想通貨業界の熱気は、あの頃のインターネット業界の熱気と似ている

藤本:先ほどの熊谷さんの話の中で、インターネットの黎明期と同じものを感じるという話を頂きました。そこから見る未来像、仮想通貨やブロックチェーンについて熊谷さんが予想する未来像はどのようなものですか?

熊谷:仮想通貨の何が一番インターネットに似ているかというと、まさに藤本さんもその一人なんですけど、その仮想通貨やそれをささえるブロックチェーンといった新しいテクノロジー生まれてきた中で、それに熱中していて、まるで恋をしているような人たちが沢山いるというところです。そのテクノロジーの周りの集まる人の熱の強さが、インターネットが盛り上がってきた当時とそっくりだと感じています。

インターネットの黎明期、僕はインターネットに恋をし、これに懸けようという強く決意しました。渋谷のビットバレーにあの頃乱立した会社は、今は雨後の筍のごとくほとんど消えてしまったり、集約されたりしてしまいましたが、当時の渋谷には本当にそういう雰囲気の人たちがいっぱいでした。

その熱気が似るんですよね。インターネットの黎明期に渋谷に集まっていた人たちと、現在の仮想通貨界隈に集まっている人たちの熱気が、本当に同じ雰囲気なんです。

そしてもうひとつ違う角度で当時とそっくりだと思うのは、この盛り上がりに対して毀誉褒貶が激しいというところです。当時もインターネットに魅力を感じて「わーっ」とみんな来てみたら、ネットバブルが崩壊してインターネットなんか誰が使うんだよと一旦みんな引いていった。今の仮想通貨に対する社会の評価もまったく同じだなと思っています。ネットバブルのごとく去年はビットコインの価格が200万円ぐらいまで上がって、その時はどこまでいくかわからない状況だったのに、今年になって暴落していますよね。それで社会的にももう仮想通貨は終わったとか言われ始めている。

人々も、そして政府もこの頃は仮想通貨に対して冷たくなってきているように思います。こういう雰囲気もインターネットの黎明期とそっくりだなと思っています。だから僕は個人的にはまた反転して、仮想通貨の値段が上がると思っているんですが。

今ビットコインの価格は、僕はまだまだ全然こんなもんじゃないんじゃないかと思っています。あくまで個人的な考えですし、投資は自己判断ですが。ただ、仮想通貨については今こそ参入のタイミング、チャンスじゃないかなと思っています。

(第2回につづく)

→第2回はこちら「仮想通貨・ブロックチェーンベンチャーが生き残るために必要なこと PoT #02-2 」

インタビューイ・プロフィール

熊谷正寿
GMOインターネット株式会社 代表取締役会長兼社長 グループ代表
1963年7月17日長野県生まれ。東証一部上場のGMOインターネットを中心に、上場企業9社を含むグループ111社、パートナー約5,700名超を率いる。(2018年6月末時点) 「すべての人にインターネット」を合言葉に、日本を代表する総合インターネットグループとして、インターネットインフラ事業、インターネット広告・メディア事業、インターネット金融事業、仮想通貨事業を展開。 2017年に参入した仮想通貨事業では、交換事業とマイニング事業を展開。仮想通貨領域で世界ナンバーワンを目指し取り組んでいる。また、2018年7月からはGMOあおぞらネット銀行がインターネット銀行事業を開始。 主な受賞歴に、米国ニューズウィーク社「Super CEOs(世界の革新的な経営者10人)」(2005年)、経済誌「経済界」による第38回 「経済界大賞 優秀経営者賞」(2013年)、経済誌「財界」による第58回「財界賞・経営者賞」(2016年)、経営誌「企業家倶楽部」による第19回「企業家大賞」(2017年)などがある。 著書は「一冊の手帳で夢は必ずかなう」(かんき出版)、「20代ではじめる「夢設計図」」(大和書房)など。

沼澤健人
株式会社Aerial Partners 代表取締役
仮想通貨取引計算サポートと税理士紹介を行う『Guardian』、仮想通貨取引計算ツールである『G-tax』を提供。Twitterの仮想通貨アカウント「二匹目のヒヨコ(@2nd_chick)」中の人としてブロックチェーン業界の会計・税務領域を中心に啓蒙活動を行っている。会計コンサルティングファームであるAtlas Accounting代表として、仮想通貨交換業者やブロックチェーンプロジェクトの顧問を務めており、一般社団法人日本仮想通貨税務協会理事も兼任。

(編集:設楽悠介・小俣淳平)

この記事の著者・インタビューイ

藤本真衣

Intmax Co-Founder
2011年にビットコインと出会って以来、国内外でビットコイン・ブロックチェーンの普及に邁進。海外の専門家と親交が深く「MissBitcoin」と呼ばれ親しまれている。
自身は日本初の暗号通貨による寄付サイト「KIZUNA」やブロックチェーン領域に特化した就職・転職支援会社「withB」ブロックチェーン領域に特化したコンサルティング会社「グラコネ(Gracone)」などを立ち上げる。
暗号通貨とBlockchainをSDGsに活用することに最も関心があり、ブロックチェーン技術を使い多様な家族形態を実現する事を掲げたFamiee Projectや日本円にして17億円以上の仮想通貨寄付の実績を誇るBINANCE Charity Foundationの大使としても活動している。
NFT領域に関しては、2018年よりNFTに特化した大型イベントを毎年主催している他、Animoca Brands等の、国内外プロジェクトのアドバイザーも多数務める。2020年以降は、事業投資にも力を入れており、NFTを使った人気ゲーム、Axie Infinity」を開発した Sky Mavis 、Yield Guild Games、Anique等に出資している。現在はイーサリアムのLayer2プロジェクト「Intmax」のCo-Founderとして活動中。

Intmax Co-Founder
2011年にビットコインと出会って以来、国内外でビットコイン・ブロックチェーンの普及に邁進。海外の専門家と親交が深く「MissBitcoin」と呼ばれ親しまれている。
自身は日本初の暗号通貨による寄付サイト「KIZUNA」やブロックチェーン領域に特化した就職・転職支援会社「withB」ブロックチェーン領域に特化したコンサルティング会社「グラコネ(Gracone)」などを立ち上げる。
暗号通貨とBlockchainをSDGsに活用することに最も関心があり、ブロックチェーン技術を使い多様な家族形態を実現する事を掲げたFamiee Projectや日本円にして17億円以上の仮想通貨寄付の実績を誇るBINANCE Charity Foundationの大使としても活動している。
NFT領域に関しては、2018年よりNFTに特化した大型イベントを毎年主催している他、Animoca Brands等の、国内外プロジェクトのアドバイザーも多数務める。2020年以降は、事業投資にも力を入れており、NFTを使った人気ゲーム、Axie Infinity」を開発した Sky Mavis 、Yield Guild Games、Anique等に出資している。現在はイーサリアムのLayer2プロジェクト「Intmax」のCo-Founderとして活動中。

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