アイルランド中銀、コインベース現地法人に約325万ユーロの制裁金。顧客資金保全などに不備

コインベース・アイルランドに制裁金

アイルランド中央銀行(Central Bank of Ireland)が、暗号資産(仮想通貨)取引所大手コインベース(Coinbase)の現地法人コインベース・アイルランド(Coinbase Ireland Limited)に対し、顧客資金の保全および業務委託管理に関する規制違反を理由に、325万2,618ユーロ(約5.7億円)の制裁金を科すことで合意したと10月22日に発表した。

同行によると、同社は2020年11月1日から2025年8月19日まで、アイルランドの2011年電子マネー規則(EMR 2011)に定められた義務に違反していたという。

コインベース・アイルランドは、コインベース・グループ傘下の電子マネー機関(EMI)だ。同社は法定通貨と引き換えに電子マネーの発行・償還を行っており、顧客は発行された電子マネーを使い、グループのオンラインプラットフォームで暗号資産を購入している。

中銀が指摘した主な問題は、業務委託の管理体制、顧客資金の保全、規制当局への報告体制の3点だ。

同社は顧客資金の保全プロセスや内部統制の実施を、米国に拠点を置くコインベース・グループに過度に依存していた。また、顧客資金の管理・保全を適切に監督するための人材や専門知識が、アイルランド現地法人内で不足していたという。

さらに、システム設計の不備や内部統制のテスト不足により、顧客資金の保全口座では少なくとも18カ月にわたり日次の資金不足が発生していた。

中銀が公表した和解通知書によると、1日当たりの最大不足額は2023年に340万ユーロ(約5.9億円)、2024年には520万ユーロ(約9.1億円)に達した。該当期間における1日当たりの平均不足額は、保全義務額の0.54%だったという。

また、4年以上にわたり、コインベース・アイルランドの顧客資金と他のグループ会社の顧客資金が適切に分別されず、混在していたことも判明した。

このほか、顧客資金の保全に関する重要な変更を把握し、中銀に報告するための内部統制や報告手続きも不十分だった。

中銀は、こうした不備により、仮に同社が破綻した場合、顧客が資金を速やかかつ全額回収できない可能性があったと指摘している。一方、コインベースは同日公表した声明で、今回の問題による顧客の金銭的損失や資金へのアクセス不能は発生しておらず、関連する問題はすべて是正済みだと説明した。

コインベース・アイルランドは今回の違反を認め、10月21日に中銀と和解した。

中銀は当初、正式な戒告と464万6,597ユーロ(約8.1億円)の制裁金が相当と判断したが、和解制度に基づく30%の減額を適用し、最終的な制裁金額を325万2,618ユーロ(約5.7億円)とした。制裁はアイルランド高等裁判所の承認を経て発効する。

中銀の執行局長カレン・オリアリー(Karen O’Leary)氏は、適切に管理されていない業務委託が企業のオペレーショナル・レジリエンス(業務継続能力)を脅かす可能性を指摘。顧客資金の保全は決済・電子マネー事業者の根本的な義務だと強調し、同社が認可取得時の確約を守らず、重要な変更を中銀に報告しなかったことについて「到底容認できない」と批判した。

さらに同氏は、アイルランドでの認可取得がEU市場全体へのアクセスにつながることを踏まえ、認可審査で企業が示す情報や確約の重要性を強調。同社が認可取得時の確約を守らず、重要な変更を中銀に報告しなかったことについて「到底容認できない」と批判した。

参考:アイルランド中央銀行・和解通知書 
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

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