円ステーブルコイン「JPYC」、韓国アップビット上場直後に価格乖離で一時約4円に急騰

韓国初の円建てステーブルコイン上場、JPYC価格が大幅乖離

日本企業JPYC社が発行する日本円建てステーブルコイン「JPYC」が、韓国の暗号資産(仮想通貨)取引所アップビット(Upbit)で9月17日の取引開始直後に価格が大幅に上昇した。

また今回の価格乖離を受け、JPYCを発行し、同ステーブルコインの価格が上昇したDEX(分散型取引所)で交換する裁定取引(アービトラージ)を行ったとの利用者の報告がX上で複数確認された。同日にはJPYCの供給量も大幅に増加し、JPYCのオンチェーンデータを集計する「JPYC Info」では17日の供給量が約42.58億JPYCとなった。

JPYCは、日本の資金決済法上の「電子決済手段」にあたり、日本円の預貯金や国債を裏付け資産としている。同社が運営する「JPYC EX」では、JPYCを1JPYC=1円で発行・償還している。対応チェーンは、イーサリアム(Ethereum)、ポリゴン(Polygon)、カイア(Kaia)、アバランチ(Avalanche)。韓国の暗号資産取引所が円建てステーブルコインを取り扱うのは今回が初となる。当初、JPYCの入金対応ネットワークはイーサリアムのみだったが、同日18:44にポリゴンとカイアからの入金対応が開始された。

アップビットは9月17日18:00、韓国ウォン(KRW)、ビットコイン(BTC)、テザー(USDT)の3市場でJPYCの取引を開始した。アップビットなどの取引所では利用者同士の売買によって市場価格が形成されるため、JPYCの取引価格が常に1円になるとは限らない。一方、JPYC EXでは1JPYC=1円で発行できるため、市場価格との価格差が裁定取引の機会となる。

アップビットの取引データによると、JPYCは12ウォン(約1.32円)で取引を開始し、その後価格が急騰した。一時37.60ウォン(約4.14円)まで上昇し、取引開始価格の約3.1倍となった。1JPYC=1円の発行・償還価格からも大きく乖離した。

価格上昇はアップビット以外の市場でも確認された。コインマーケットキャップ(CoinMarketCap)の価格チャートでは、1円前後で推移していたJPYCが17日18時台から上昇し、同日19:30時点で約2.52円となった。ブロックチェーン総研がゲッコーターミナル(GeckoTerminal)のデータを基に集計したところ、分散型取引所(DEX)のユニスワップ(Uniswap)でも同日19:30時点で、イーサリアム(Ethereum)が約3.11円、ポリゴン(Polygon)が約2.71円まで上昇した。流動性の薄いポリゴンの市場では、19時15分の15分足の高値が一時約6.07円となった。

一方、価格上昇の幅は市場によって異なった。韓国通信社の連合ニュースによると、17日18:42時点のコインマーケットキャップではJPYC価格が9.65ウォン(約1.06円)だったのに対し、同時刻のアップビットでは35.7ウォン(約3.93円)となり、3倍を超える価格差が生じていた。暗号資産にはすべての取引所に共通する単一の市場価格があるわけではなく、それぞれの市場の需給や流動性によって価格差が生じる場合がある。

こうした価格変動が続く中、アップビットは同日、JPYCの取引に関する注意事項を公表した。同取引所は、JPYCは1JPYC=1円で償還できる一方、韓国の利用者がJPYC EXを通じて直接1円で償還するには利用要件上の制約があると説明した。また、市場状況や流動性などによって、ステーブルコインの市場価格が連動対象資産の価値と乖離する場合があるとして、JPYCを取引する際には、償還の可否や利用要件、市場価格の変動性を確認するよう注意を呼びかけた。

なお、今回の価格上昇の具体的な理由は明らかになっていない。アップビットが説明した韓国利用者の償還制約や市場の流動性などが、実際の値動きにどの程度影響したかも確認されていない。

その後、JPYC価格は1円に近い水準まで低下した。コインマーケットキャップでは17日19:30時点の約2.52円から下落し、18日2:25時点では約1.02円となった。

JPYC側の動き

JPYC株式会社は17日20:34、イーサリアムでJPYCの発行予約を一時停止したと公式Xアカウントで発表した。同社は22:19、ポリゴンでも発行予約を停止した。その後、イーサリアムは23:43、ポリゴンは18日0:22までに復旧した。同社は停止時、原因を調査中だと説明しており、供給量の増加や価格変動との関連について記事執筆時点では明らかにしていない。

なお、JPYC代表取締役の岡部典孝氏は価格上昇を受け、自身のXアカウントで、ステーブルコインは取引所への上場によって価値が上昇するものではないとの認識を示した。そのうえで、BOTによる取引や初期流動性を狙った取引の可能性に言及したが、いずれも推測として示したものだ。

また連合ニュースは、韓国の暗号資産取引所ではステーブルコインの価格が大幅に変動する事例が以前にも発生していると報じている。ビッサム(Bithumb)とアップビットが今年8月28日に取り扱いを開始したユーロ建てステーブルコイン「EURC」は、9月中旬に両取引所で価格が大幅に上昇した。同メディアはEURCなどの価格変動について、新規上場銘柄に取引が集中した影響との見方を伝えている。

一方、アップビットを運営するドゥナム(Dunamu)は連合ニュースの取材に対し、個別資産の価格変動や相場について別途見解を示すことは難しいと回答した。

参考:連合ニュースソウル経済ブロックチェーン総研アップビット1アップビット2コインマーケットキャップJPYC株式会社(X)1JPYC株式会社(X)2 JPYC株式会社(X)3
画像:PIXTA

関連ニュース

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

合わせて読みたい記事

米SECとCFTC、暗号資産規制を既存権限で推進へ。クラリティ法案は前進せず

米商品先物取引委員会(CFTC)のマイケル・セリグ(Michael Selig)委員長と米証券取引委員会(SEC)のポール・アトキンス(Paul Atkins)委員長が、両機関に現在与えられている法的権限の範囲内で暗号資産(仮想通貨)の規制整備を進める姿勢を9月16日にそれぞれ自身のXアカウントで示した

【9/17話題】韓国アップビットにJPYC上場、サークルのArcがメインネット一般公開、SBIと韓国教保生命がカントンで日韓送金を実証など(音声ニュース)

ブロックチェーン・仮想通貨(暗号資産)・フィンテックについてのニュース解説を「あたらしい経済」編集部が、平日毎日ポッドキャストでお届けします。Apple Podcast、Spotify、Voicyなどで配信中。ぜひとも各サービスでチャンネルをフォロー(購読登録)して、日々の情報収集にお役立てください。

Sponsored