ストラテジー創業者マイケル・セイラー、ビットコイン改善提案「BIP110」に反対

BIP110めぐる議論にセイラー氏も反対表明

米ストラテジー(Strategy)の創業者で会長のマイケル・セイラー(Michael Saylor)氏が、ビットコイン改善提案(Bitcoin Improvement Proposal:BIP)「BIP110」への反対姿勢を7月19日に自身のXアカウントで改めて示した。

同氏は、X上で「BIP110が悪いアイデアである110の理由(110 Reasons BIP 110 Is a Bad Idea)」と題した長文記事を公開した。BIP110の提案者らが掲げる目的には理解を示しつつも、「私はその目的を共有しているが、対応策には反対する」と述べた。

同氏は7月11日にも、「ビットコインにとってスパムより危険なものは110ある」と投稿し、現在有効で手数料を支払っている一部の取引を無効化する前例が残ることへの懸念を示していた。

BIP110は、大容量の任意データをビットコインブロックチェーンへ記録する手法に、約1年間の期間限定のコンセンサス制限を設けるソフトフォーク提案だ。

セイラー氏は、「個人でもノードを運営し、取引を検証できる状態を保つこと」や「ビットコインを健全な通貨として維持すること」といった目的には賛同する一方、その実現手段としてコンセンサスルールを変更することには反対する考えを示した。

その理由について同氏は、コンセンサスルールの変更は、明確かつ重大で広く認識された不具合へ対処する場合に限るべきだと主張した。その上で同氏は、BIP110はインフレ、署名検証、二重支払い、既知の重大なバグを修正するものではないと指摘した。

また同氏は、BIP110が制限する対象は「現在有効で手数料も支払われている一部の取引が含まれる」と指摘した。

さらに同氏は、ビットコインのコンセンサスは、取引に含まれるデータがどのような目的で使われるのかを判定できないと説明した。そのため、「スパム」はネットワークが客観的に判定できる概念ではなく、特定の利用方法を理由に有効な取引を制限すべきではないとの考えを示した。

同氏は、BIP110がタップルート(Taproot)などの将来のアップグレードに備えて設けられた機能を一時的に制限し、技術的な選択肢を狭める可能性も問題視した。

また、BIP110がノード負荷や分散化、決済手数料にどの程度の改善をもたらすのかについて、十分な定量的根拠が示されていないと指摘した。

加えて同氏は、任意データへの対応は、手数料市場やノードのリレーポリシー、マイナーの取引選択といった既存の仕組みに委ねるべきであり、コンセンサスルールによって解決すべきではないと主張した。

同氏は、BIP110のルールが約1年で失効しても、現在有効な取引をコンセンサスルールによって制限した前例は残ると指摘した。今後、ほかの利用方法にも同様の制限が提案されるリスクがあるとの見方を示した。

最後に同氏は、「ビットコインに必要なのは純粋性の守護者ではない。中立性の守護者だ」と締めくくった。

BIP110とは

BIP110の提案書は、ビットコインを汎用的なデータ保存基盤ではなく、通貨や決済のためのネットワークとして維持することを目的に掲げている。

なお、BIP110は6月25日に提案書のステータスが「Complete」となった。ただし、これは提案者が仕様を完成させ、採用を推奨していることを示すものであり、ビットコインコミュニティの合意やネットワークへの採用を意味しない。

近年のビットコインでは、送金に加え、インスクリプション(Inscription)などを通じて画像やテキストといった送金に直接関係しない情報をブロックチェーンへ記録する利用が広がっている。

BIP110の提案者らは、こうしたデータがノード運営者の負担を増やし、決済取引とブロックスペースを奪い合っていると問題視している。

また、ビットコインの主要なノードソフトウェアであるビットコインコア(Bitcoin Core)v30.0で、画像やテキストなどの送金に直接関係しない情報を記録した取引を標準的なノードで中継しやすくする方向へデフォルト設定が変更されたことも議論の背景にある。具体的には、OP_RETURNを利用する取引について、ほかのノードへ中継する際のデータサイズに関するデフォルト上限が大幅に緩和された。

この変更は、取引の有効性を定めるコンセンサスルールの変更ではなく、ノード運営者が設定によって従来の設定へ戻すこともできるとのこと。ただしBIP110の提案者らは、送金に直接関係しない情報を含む取引が標準的なビットコインコアノードで中継されやすくなるとして反発した。

こうした背景から提案されたのがBIP110だ。BIP110では、約1年間の期間限定で、OP_RETURNや一部のウィットネス(Witness)などデータの記録に利用される一部機能などにサイズ制限を設けるほか、将来的にデータ保存へ利用される可能性がある一部機能の使用も一時的に制限する。

また、BIP110では通常より低い55%の賛同で早期に有効化できる仕組みを採用するほか、最終段階では提案へ賛同しないブロックを拒否する仕組みも盛り込まれている。

BIP110の提案書は、任意データの記録を抑制することで、ノード運営者の負担増を防ぎ、ビットコインを健全な通貨として維持できると主張している。

一方、セイラー氏ら反対派は、任意データへの対応はノードやマイナーのポリシーに委ねるべきであり、現在有効な取引をコンセンサスルールによって無効化すべきではないと主張している。

画像:Reuters

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

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