アプトスのAPTで「透明性と機密性」の両立模索
レイヤー1ブロックチェーン「アプトス(Aptos)」が、ネイティブトークン「APT」に機密性機能を付与する提案「AIP-143(Enable APT for Confidentiality)」を4月22日より実施した。なお同提案は4月25日に可決・実行された。
ガバナンスプラットフォーム「ゴブスキャン(GovScan)」上の情報によると、投票は4月25日4:24(UTC)に終了し、その後4:35に実行された。投票結果は賛成が100%、反対は0%で、約3億APT以上が賛成票として投じられた。
AIP-143は、APTの残高や取引金額を暗号化する機能「コンフィデンシャルAPT(Confidential APT)」をプロトコルレベルで実装するものだ。
コンフィデンシャルAPTは、ユーザーが自身の資産残高や送金額を暗号化できる一方で、送信者と受信者のアドレスはオンチェーン上で可視化される設計となっている。完全な匿名性ではなく、コンプライアンス対応を前提とした「機密性(confidentiality)」の実現を目的としている。
また同機能では、ゼロ知識証明(ZKP)によりトランザクションの正当性が検証される仕組みが採用されている。これにより、金額情報を公開することなく、二重支払いの防止や供給量の整合性が保証されるとのこと。
さらに、ユーザーは任意で特定の第三者に対して取引内容や残高情報を開示できる「選択的開示(Selective disclosure)」機能も備える。規制当局や監査対応などへの柔軟な対応が可能になる設計だ。
アプトスは、こうした機密性機能について、金融機関や企業の実務において不可欠な要素と位置付けている。公開ブロックチェーンではすべての取引や残高が閲覧可能となる一方で、完全匿名の仕組みでは規制対応が困難となるため、両者の中間的な設計が必要とされていると説明している。なお同機能は完全なオプトイン方式であり、従来通りの透明性を維持した利用も可能だ。
今回の提案では、機密性を単一機能ではなく複数レイヤーで構成する方針も示されている。アイデンティティ層では「キーレスアカウント(Keyless Accounts)」により外部認証を利用しつつアドレスと分離し、アカウント層では残高と金額の暗号化、インテント層ではトランザクション内容を確定まで非公開とする「暗号化メンプール(Encrypted Mempool)」の導入が検討されている。
こうした設計により、フロントランニングやサンドイッチ攻撃など最大抽出可能価値(MEV)に関連するリスクの低減も図られるという。
なおブロックチェーンにおける機密性機能を巡っては、複数のネットワークで対応が進んでいる。イーサリアム(Ethereum)のレイヤー2ネットワーク「スタークネット(Starknet)」では、4月20日にアップグレード「シノビ(Shinobi)」がメインネットで稼働し、プライベートトランザクション実現に向けた基盤インフラが導入された。
同アップグレードでは、ゼロ知識証明の検証をプロトコル内で直接処理する仕組みが導入されており、従来はアプリケーション側で実装する必要があったプライバシー機能をネットワークレベルで提供する方向性が示されている。
さらに、米決済大手ストライプ(Stripe)および暗号資産ベンチャーキャピタルのパラダイム(Paradigm)がインキュベートしたレイヤー1ブロックチェーン「テンポ(Tempo)」も、企業向けの非公開取引環境「ゾーンズ(Zones)」を4月16日に発表している。同機能は、給与支払いや財務管理、決済といった用途において、取引内容を公開せずに実行できる環境を提供するものだ。
さらに、ソラナ(Solana)においても、昨年4月にトークン機能拡張として「コンフィデンシャル・バランス(Confidential Balances)」が導入されており、取引金額や残高の秘匿化と検証可能性を両立する設計が進められている。
これらの動きを踏まえると、アプトスの今回の提案は、ブロックチェーンにおける「透明性」と「機密性」の両立を目指す流れの一環と位置付けられる。
It’s here. The governance proposal for Confidential APT is now LIVE!
— Aptos (@Aptos) April 21, 2026
Encrypted balances. Encrypted amounts. Identities stay onchain. Entirely opt-in. pic.twitter.com/HTt6tcIJvL