イーサリアム財団、プライバシー包括ロードマップ公開

イーサリアム財団プライバシー担当チームによる包括的プライバシーロードマップ

イーサリアム財団(Ethereum Foundation)のプライバシー・スケーリング・エクスプローレーションズ(PSE:Privacy & Scaling Explorations)チームが、プライバシー・スチュワーズ・オブ・イーサリアム(Privacy Stewards of Ethereum)へのリブランディングとともに、包括的なプライバシーロードマップを9月13日に公開した。

このロードマップは、チームメンバーのサム・リチャーズ(Sam Richards)氏によって編纂され、イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏らからの貢献を受けたという。

同チームは新しいミッションとして「イーサリアムのプライバシーロードマップの定義と実現を支援すること」を掲げた。新体制では、投機的な新技術の探索から具体的な問題解決とエコシステムの成果向上へと焦点を転換するとしている。リチャーズ氏は「イーサリアムは世界の決済層になる道筋にあるが、強力なプライバシーなしでは、世界の自由の基盤ではなく世界的監視の基盤になる危険性がある」と警告した。

新しいロードマップは3つの重点分野を中心に構成されている。

「プライベート・ライツ(private writes)」では、プライベートなオンチェーンアクションをパブリックなものと同じように安価でシームレスにすることを目指す。

「プライベート・リーズ(private reads)」では、身元や意図を明かすことなくイーサリアムからの読み込みを可能にする。

「プライベート・プルービング(private proving)」では、あらゆるデータのプルーフ生成と検証を高速、プライベート、アクセス可能にすることに焦点を当てる。

「プライベート・ライツ」分野では、実験的なレイヤー2を用いたプライベート送金機能である「PlasmaFold(プラズマフォールド)」の開発を継続し、プライバシー転送機能のサポートを追加する計画だ。チームは11月17日にアルゼンチンで開催される開発者向け会議「Devconnect(デブコネクト)」までに概念実証を目指しているとのこと。また「プライベート投票の現状2025」レポートの発表や、機関投資家のプライバシー仕様の設計も予定しているという。

「プライベート・リーズ」分野では、プライバシー保護RPCサービスの実現に取り組んでいる。PSEは、ソリューション評価のためのプライベートRPCワーキンググループも設立している。またトランザクションをミックスネットを通じてルーティングすることでプライバシーを提供する「ブロードキャストプライバシー」の仕様と実装も進めるとのことだ。

「プライベート・プルービング」分野では、日常デバイスでのゼロ知識証明の生成をより簡単で安価にすることを目標としている。オープンソースで中立的かつセキュアなzkTLSプロトコル「TLSNotary(TLSノタリー)」の安定化と最適化を進め、プロダクション準備を整える計画だ。また、モバイル、サーバー、ブラウザ全プラットフォーム間でのシームレスな統合を可能にするSDK(ソフトウェア開発キット)の構築も予定しているという。

チームは「イーサリアムでのプライバシーを例外ではなく標準にすること」をビジョンとして掲げている。技術スタック全体(プロトコル、インフラ、ネットワーキング、アプリケーション、ウォレット)に包括的なエンドツーエンドプライバシーを組み込み、中核的なユースケース全体で広く採用されることを目指すとしている。

参考:イーサリアムマジシャンズ
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

田村聖次

和歌山大学システム工学部所属
格闘技やオーケストラ、茶道など幅広い趣味を持つ。
SNSでは、チェコ人という名義で、ブロックチェーンエンジニアや、マーケターとしても活動している。「あたらしい経済」の外部記者として記事の執筆も。

和歌山大学システム工学部所属
格闘技やオーケストラ、茶道など幅広い趣味を持つ。
SNSでは、チェコ人という名義で、ブロックチェーンエンジニアや、マーケターとしても活動している。「あたらしい経済」の外部記者として記事の執筆も。

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