シンガポール金融管理局、ステーブルコイン関連の規制枠組み発表

MASがステーブルコインの規制枠組みを発表

シンガポール金融管理局(MAS)が、ステーブルコインに関する最終的な規制枠組みを8月15日発表した。

この枠組みは、同国で発行されるシンガポールドル(SGD)もしくはG10通貨にペッグされる単一通貨ステーブルコイン(SCS)に適応されるという。

G10通貨とは、世界で最も使用・取引されている通貨に着けられる名称で、米ドル(USD)・ユーロ(EUR)・英ポンド(GBP)・日本円(JPY)・豪ドル(AUD)・ニュージーランドドル(NZD)・カナダドル(CAD)・スイスフラン(CHF)・ノルウェークローネ(NOK)・スウェーデンクローナ(SEK)がそれに該当する。

発行者が満たすべき要項も概説

発表では、SCSの発行者が満たすべき次の4つの要項が説明された。

1つ目は「価値の安定性」だ。SCSの裏付け資産は、構成・保管・監査に関する必要条件を満たさなければならない。

次に「資本」だ。発行者には、債務超過のリスクを軽減し、必要に応じてスムーズな事業清算ができるように、最低限の基本資本・流動資産の維持が求められる。

続いて「額面での償還」が挙げられた。発行者は償還請求から5営業日以内に、SCSの額面金額を保有者に返還することが義務付けられる。

最後に「開示」だ。発行者は、SCSの価値安定化メカニズムやSCS保有者の権利や積立資産の監査結果など、利用者に対して適切な情報開示を行わなければならない。

これらの規制要項を満たす発行者のみが、ステーブルコインをMASに申請でき、「MASが規制するステーブルコイン」として認められるとのことだ。

なおこの認可を取得していないにもかかわらず、偽って認可ラベルを表示すると罰則の対象となり、MASの投資家注意リストに掲載される可能性があるとのことだ。

MASのホー・ハーン・シン(Ho Hern Shin)副専務理事(金融監督担当)は、「MASが規制するステーブルコイン」として認可されたいステーブルコインを発行するSCS発行者に対し、早期のコンプライアンス遵守準備を推奨している。

ステーブルコインをめぐる各国の動き

各国において現在、ステーブルコイン規制に関する動きは盛んだといえるだろう。

英国は昨年4月初旬に、英国を世界的な暗号資産業界のハブにするための計画を発表。同国においてステーブルコインを決済手段として利用できるよう整備及び立法化していく方針が示された。

今年6月に「金融サービス・市場法案(Financial Services and Markets Bill:FSMB)」が英国君主のチャールズ3世国王によって承認され、正式に法制化されることとなったことを受け、イングランド銀行へはシステミックなステーブルコイン体制を構築する権限が与えられた。同行は、システミックなステーブルコインに関する規則を年内に発表する予定だと伝えている。

米国でも米下院金融サービス委員会が、7月に「ステーブルコイン草案」を含む暗号資産に関する法案を採択するかと思われたが、同意には至らなかった。なおこの法案は下院農業委員会でも審議される予定だ。

また8月には米決済大手ペイパル(PayPal)が、独自の米ドル建てステーブルコイン「PayPal USD(PYUSD)」をローンチ。なお大手金融会社が独自のステーブルコインを発行するのは、初の事例となった。

関連ニュース

参考:MAS
デザイン:一本寿和
images:iStocks/Kandl

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

合わせて読みたい記事

【5/21話題】デジタルカーボンクレジット決済に「JPYC」活用の検討、英判事がクレイグライトは嘘ついたと指摘など

デジタルカーボンクレジット決済に「JPYC」活用の検討開始、三菱UFJ信託・プログマ・KlimaDAO JP・オプテージら、自称ビットコイン発明者クレイグライト、主張裏付けのため繰り返し嘘をついたと英国判事が指摘、国内初、バイナンスジャパンに「サイバーコネクト(CYBER)」上場へ、国内3例目のマスクネットワーク(MASK)も、Gala Gamesがセキュリティインシデント報告、50億GALAが不正発行、イーサリアム「edcon2024 TOKYO」、渋谷区と提携し小委員会設立へ、トレント大教授、ブロックチェーンの耐量子暗号システムへの移行の必要性を指摘、ミームコイン作成・取引の「Pump. Fun」元従業員逮捕、約125億円の損失被害後

トレント大教授、ブロックチェーンの耐量子暗号システムへの移行の必要性を指摘

トレント大学の数学教授であるマッシミリアーノ・サラ(Massimiliano Sala)教授は、量子コンピューターがブロックチェーンのセキュリティに重大な脅威をもたらす可能性があると指摘。今後のブロックチェーン技術について洞察を行った。米フィンテック企業のリップル(Ripple)社の記事コンテンツ「リップルインサイツ(Ripple Insights)」にて5月17日報告されている