【取材】JCBAがICOトークンに関する会計基準開発を提言、ASBJに

JCBAがICOトークンに関する会計基準開発を提言

一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)が、企業会計基準委員会(ASBJ)にて募集中の「資金決済法上の暗号資産又は金融商品取引法上の電子記録移転権利に該当するICOトークンの発行及び保有に係る会計処理に関する論点の整理」に関するパブリックコメントに対し、意見提出を行ったことを6月9日に明かした。

JCBAの意見書は「ICOトークンに関する会計基準が開発されていないことを理由に、トークンの発行を検討する企業が発行の意思決定ができない状況を解決すること、ひいては日本におけるWeb3産業の推進を目的として意見を述べたもの」とのことだ。

ASBJの「ICOトークン発行及び保有に係る会計処理」に関するレポートは3月16日に公表された。そして、このレポートでは主要な論点として「基準開発の必要性及び緊急性、並びにその困難さ」、「ICOトークンの発行者における発行時の会計処理」、「資金決済法上の暗号資産に該当するICOトークンの発行及び保有に関するその他の論点」、「電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有に関する論点」が取り上げられた。

JCBAはICOトークンの会計基準の開発について「現時点において速やかに基準開発に着手すべきである」と意見した。その理由は「ICO トークンの発行が技術上可能でありかつ法制度の整備が進んだ環境において、会計基準が開発されないことで事業者の意思決定に支障をきたす状況を手遅れになる前に速やかに解消することが、我が国の経済および資本市場を発展させるためには必須である」としている。

また「トークンの発行者における発行時の会計処理」については、「トークンの複合的な性質による現在価値を測定するためのエビデンス及び測定モデルが確立されていないこと、必ずしも等価交換が成立していると判断できない事象/取引が存在していることから、発行時に利益を計上するケースは生じ得ると考えられる」と意見した。

そして「資金決済法上の暗号資産に該当するICOトークンの発行及び保有に関するその他の論点」に関しては、「発行時に自己に割り当てたICOトークンについては、第三者が介在していない内部取引に該当するとして、会計処理の対象としないこと」というASBJの方針に賛成した。

また暗号資産の時価を算出するために必要な「活発な市場」の定義の曖昧さに関しても言及した。

加筆:6月11日14時

JCBAのICO・IEO部会の竹ケ原圭吾氏へ取材

「あたらしい経済」編集部は、JCBAのICO・IEO部会の竹ケ原圭吾氏へ取材した。

−−トークンによる経済取引は、既存の会計基準の枠組みでは表現できないケースが幾分かあると思うのですが、新たな会計基準開発と既存の会計基準に倣うのは、どちらが賢明だと考えていますか?

個々のトークンで想定される経済要素ごとに分解して既存の会計基準の枠組みで検討するというアプローチは考えられるものの、Web3.0とそのエコシステムの基盤となるICOトークンの一般的性質を明らかにした上で、実務対応報告などの形で公表しなければ、会計専門家が判断できず、Web3.0関連企業の会計監査が受けられてない、会計処理の意見が相違することで事業遂行上の障害となる、などの問題が発生すると考えております。

加筆:6月17日9時

JCBAのICO・IEO部会部会長の吉田世博氏へ取材

「あたらしい経済」編集部は、JCBAのICO・IEO部会部会長で、株式会社HashPort代表取締役CEOの吉田 世博氏に取材した。

−−JCBAとして暗号資産の活発な市場とは、どんな市場だと考えていますか?

実務においては、有価証券等の金融商品とは異なり、発行体も含め特定の者の保有割合が高く、その時価を算定するにあたり、市場価格での評価が過大となるケースが多いと考えられることから、そのような場合には「活発な市場」がないと判断すべきと考えられます。

−−また会計方針や基準が、適切に示されることで、業界にとってどんな良いことがあるのでしょうか?

税制・資金調達の環境改善に繋がる可能性があります。

デザイン:一本寿和
images:iStocks/Максим-Ивасюк・Thinkhubstudio

この記事の著者・インタビューイ

竹田匡宏

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。
「あたらしい経済」の編集者・記者。

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。
「あたらしい経済」の編集者・記者。

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