米証券取引委員会(SEC)が一定の条件下で民間企業のステーブルコイン発行を許可

米証券取引委員会(SEC)が一定の条件下で民間企業のステーブルコイン発行を許可

米証券取引委員会(SEC)の法人金融部門は、独自のイーサリアムベースのトークンを販売したいと考えているソーシャルメディア企業IMVU社が発行した独自トークン「VCOIN」に対して「執行措置を推奨しない」という旨を記載したノーアクションレター(法令適用事前確認手続)を11月19日に発行した。

ノーアクションレターとは民間企業等国民が、その事業活動に関係する具体的行為が特定の法令の規定の適用対象となるかどうか、あらかじめ当該規定を所管する行政機関に確認しその行政機関が回答を行うとともに、当該回答を公表する手続のことだ。そのノーアクションレターのプロセスに基づき、IMVU社は米証券取引委員会に対して「VCOIN」の発行スキームなどを事前に米証券取引委員会へ確認していた。

米証券取引委員会の法人金融部門は「VCOINが証券ではないというIMVU社の弁護士としての意見に基づき、IMVUが証券法第5条に基づく登録をせずに、IMVUのブロックチェーンプラットフォーム上またはIMVUのプラットフォーム外で譲渡可能なVCOINを提供・販売し、取引所法第12条に基づく株式証券のクラスとしてIMVU社がVCOINを登録しなかった場合もSEC本部は強制措置を勧告しないでしょう」と米証券取引委員会の文書に記載している。

IMVU代表者のパーキンズ・コーイー(Perkins Coie)氏は「ブロックチェーン技術、特にイーサリアムブロックチェーンをアップグレードの基盤として活用することで、クレジットシステムの限界に対処し、プラットフォームの成長のための新たな機会を創出できると確信しています」と記載している。

米証券取引委員会のノーアクションレターによれば、今回のノーアクションレター発行は証券法に基づく執行措置に関する見解を示すものであり、提示された質問や、銀行秘密保護法や反マネーロンダリングおよび関連する枠組みを含む他の法律の適用可能性について、法的な結論を示すものでないとのことだ。

編集部のコメント

米証券取引委員会はIMVU社に対して、独自トークンVCOIN発行に基づきいくつかの注意点や条件を以下のように提示しています。

・IMVU社はVCOINの売却による収益をアップグレードするための資金調達には使用しない。
・VCOINは売却された時点で、その意図した目的のために直ちに使用可能となる。
・IMVU社はVCOINの購入、転換、譲渡に特定の制限を課すこと。
・VCOIN保有者はウォレットを開設する際にKYC/AMLチェックを受け、その後も継続的にチェックを受けること。
・VCOINは無制限の量と固定価格で継続的に利用可能となり、IMVUは常にVCOINの固定価格を維持するのに十分な量のVCOINを供給すること。
・IMVU社は第三者の取引プラットフォームでのVCOINの上場や取引を促進したり、サポートしたりしないこと。
・IMVU社はプラットフォーム上で、またそれに関連して価値を交換する手段として、消費目的でのみユーザーにVCOINを販売すること。
・IMVU社は、IMVUからVCOINを購入するユーザーに対し、投機目的ではなく、消費目的でVCOINを取得していることを確認するよう求めること。

米証券取引委員会がIMVUへのノーアクションレターを与えたことで、米国では一定の条件を満たせば米国でステーブルコインが証券性を帯びずに発行できるようになりました。この一定の条件の中で特に重要視すべきは、その通貨が無制限の量と固定価格で供給し続けられることではないでしょうか。

なぜなら需要と供給のバランスを管理することで、市場が生まれてしまうからです。ちなみに米証券取引委員会は過去にデジタル資産に関して2回ほどノーアクションレターが発行しています。
1つは2019年4月に航空会社ターンキー・ジェット(Turnkey Jet)のTKJトークンは証券に関して。2つ目は2019年7月にゲーム会社のポケット・オブ・クォーターズ(PoQ社)に関してです。ただ過去の2例ともにトークンを法定通貨に変換することは許可されていなかったようです。

コメント:竹田匡宏(あたらしい経済)

(images:iStock/Lidiia-Moor・PhonlamaiPhoto・incohre)

この記事の著者・インタビューイ

あたらしい経済 編集部

「あたらしい経済」 はブロックチェーン、暗号通貨などweb3特化した、幻冬舎が運営する2018年創刊のメディアです。出版社だからこその取材力と編集クオリティで、ニュースやインタビュー・コラムなどのテキスト記事に加え、ポッドキャストやYouTube、イベント、書籍出版など様々な情報発信をしています。また企業向けにWeb3に関するコンサルティングや、社内研修、コンテンツ制作サポートなども提供。さらに企業向けコミュニティ「Web3 Business Hub」の運営(Kudasaiと共同運営)しています。

これから「あたらしい経済」時代を迎える すべての個人 に、新時代をサバイバルするための武器を提供する、全くあたらしいWEBメディア・プロジェクトです。

「あたらしい経済」 はブロックチェーン、暗号通貨などweb3特化した、幻冬舎が運営する2018年創刊のメディアです。出版社だからこその取材力と編集クオリティで、ニュースやインタビュー・コラムなどのテキスト記事に加え、ポッドキャストやYouTube、イベント、書籍出版など様々な情報発信をしています。また企業向けにWeb3に関するコンサルティングや、社内研修、コンテンツ制作サポートなども提供。さらに企業向けコミュニティ「Web3 Business Hub」の運営(Kudasaiと共同運営)しています。

これから「あたらしい経済」時代を迎える すべての個人 に、新時代をサバイバルするための武器を提供する、全くあたらしいWEBメディア・プロジェクトです。

合わせて読みたい記事

アニモカとランボルギーニ、デジタルカーを売買・所有できるプラットフォーム「Fast ForWorld」立上げ

香港拠点のブロックチェーンゲーム開発企業アニモカブランズ(Animoca Brands)が、伊高級スポーツカーメーカーのランボルギーニ(Automobili Lamborghini)と提携し、ランボルギーニの車両をデジタルアセットとして売買および所有できるゲーム体験プラットフォーム「ファストフォーワールド(Fast ForWorld)」の立ち上げを10月2日発表した

【10/3話題】Aptos Labsがハッシュパレット買収、OKJはPLTのAPTに引換え全面サポート、メタプラネットがBTCプット売りなど(音声ニュース)

Aptos Labsがハッシュパレット買収、PLTはAPTに引き換えでELFはアプトス上に移行、OKJがパレットトークン(PLT)のアプトス(APT)引き換え全面サポート、ビットフライヤーは取扱い継続不可のリスク報告、メタプラネットがビットコインのプットオプション売却、プレミアム収入で23.97BTC獲得、米SEC、リップル裁判で控訴。最高裁判例や証券取引法に抵触を理由に、ビットワイズ、米SECに「XRP現物ETF」のS1申請書を提出、FTXが55億円相当の「ワールドコイン(WLD)」を割引価格で売却へ、債権者への資金返済で=報道、SBI VCトレードにニアー(NEAR)上場へ、国内3例目、ステーキングも対応、スイ(SUI)、トークンブリッジ機能「Sui Bridge」のメインネット稼働開始

クリスティーズ、アート作品130点以上にデジタル所有証明書発行、Base採用で

大手アートオークションハウスのクリスティーズ(Christie’s)が、イーサリアム(Ethereum)レイヤー2ブロックチェーン「ベース(Base)」上で、アート作品に対するデジタル所有証明書を発行する。この証明書の発行をする 「ベース」基盤の暗号資産ウォレット「クレサス(Kresus)」が10月3日発表した

OKJがパレットトークン(PLT)のアプトス(APT)引き換え全面サポート、ビットフライヤーは取扱い継続不可のリスク報告

アプトスラボ(Aptos Labs)のハッシュパレット(HashPalette)買収による「パレットトークン(PLT)」の「アプトス(APT)」への引き換え発表を受け、国内暗号資産(仮想通貨)取引所OKJ(オーケージェー)が「全面的なサポート」をすると10月3日発表した