Kalshiと共同創業者2人を刑事訴追
米ユタ州のデレク・ブラウン(Derek Brown)司法長官は10月28日(現地時間)、予測市場大手カルシ(Kalshi)の運営会社カルシEX(KalshiEX LLC)と、共同創業者のタレク・マンスール(Tarek Mansour)CEO、ルアナ・ロペス・ララ(Luana Lopes Lara)COOを、違法なオンライン賭博を助長したとして刑事訴追した。罪状は各被告について14件で、うち13件が重罪(felony)にあたる。
Kalshiに対する州政府による刑事訴追は、3月のアリゾナ州に続き2州目。アリゾナ州の事件が法人を対象とする軽罪での訴追だったのに対し、ユタ州は重罪を含む罪状で共同創業者個人の責任も追及している。
10月28日付の起訴状(Information)は、ソルトレーク郡の第3地区裁判所に提出された。
罪状の内訳は、第2級重罪の「違法行為のパターン(Pattern of Unlawful Activity)」が1件、第3級重罪の「オンライン賭博助長(Online Gambling Promotion)」が12件、A級軽罪の「一般賭博助長(General Gambling Promotion)」が1件。州法76-17-407条、76-9-1404条、76-9-1405条にそれぞれ基づくものだ。
12件のオンライン賭博助長罪は、州の捜査官がおとり捜査で行った取引に対応している。また「違法行為のパターン」は、Kalshiが違法行為を反復し、そこから得た収益を事業運営に利用したとする罪状だ。
起訴状は、マンスール氏が事業判断や戦略を直接管理し、ロペス・ララ氏が製品開発やマーケティングなどを統括している点を指摘。両氏が企業の経営・運営を通じて違法行為に関与したとして、個人の刑事責任を追及している。有罪となれば、両氏は収監される可能性がある。
ブラウン長官は声明で、ユタ州では賭けをすることも、賭博を運営することも、それを助長することも違法だと強調した。
おとり捜査で12件、計114.87ドルのスポーツ取引
今回の刑事訴追の根拠となったのは、ユタ州司法長官事務所の特別捜査官スコット・エッガーマン(Scott Eggerman)氏によるおとり捜査だ。
起訴状によると、同氏は9月13日、偽名と捜査用のVisaデビットカードを使い、ユタ州内の住所や銀行口座を持つ利用者としてKalshiの口座を開設した。
その後、9月13日から24日にかけて、ソルトレーク郡とデービス郡から計12件のスポーツ関連取引を行った。対象にはNFL、大学フットボール、MLB、MLS、NHLの試合結果や選手成績などが含まれる。
具体的には、ユタ大学対ユタ州立大学のフットボールの点差、NHLのユタ・マンモス(Utah Mammoth)の勝敗、NFL選手のパス獲得ヤード数などに関する取引が行われた。
12件の取引に投じた金額は合計114.87ドル(約1万8,000円)で、最終的な損失は25.10ドルだった。
捜査官は各取引の前に位置情報とIPアドレスがユタ州内を示していることを確認していた。また、Kalshi側も最初の取引前に所在地の確認を求め、捜査官はユタ州内にいると正しく申告していたという。
それでもKalshiは取引を受け付け、各取引から0.03〜0.78ドルの手数料を徴収していた。州側は、Kalshiが利用者の所在地を把握できる状態で取引を受け付け、収益を得ていたと主張している。
CFTCとの管轄権争いが激化
ユタ州は州憲法で賭博を原則禁止しており、Kalshiとは以前から規制権限をめぐって争ってきた。
Kalshiは2月23日、CFTCに登録された連邦規制下の取引所には州の賭博法は適用されないと主張し、州による取り締まりの差し止めを求めてユタ連邦地裁に提訴した。
しかし、ロバート・シェルビー(Robert Shelby)連邦地裁判事は8月4日、商品取引所法は州の賭博法の執行を妨げないとして、州側の略式判決申立てを認めた。
Kalshiは控訴したものの、第10巡回区連邦控訴裁判所は9月8日、控訴中の差し止め申立てを却下した。なお、控訴審は継続している。
これを受けユタ州は10月20日、Kalshi関連5社とマーケットメーカーのサスケハナ(Susquehanna)関連2社を相手取り、民事訴訟を提起。州内利用者に関連する取引から得た手数料収入を3,060万〜6,120万ドル(約48億〜96億円)と推計し、利益の返還などを求めた。
一方、米商品先物取引委員会(CFTC)と米政府は26日、ユタ州とブラウン長官を相手取り連邦地裁に提訴し、翌27日に発表した。CFTC登録取引所の監督権限は連邦政府に専属すると主張し、州の取り締まりの阻止を求めている。CFTCが同様の法的措置を開始した州は、ユタ州で10州目となる。
CFTCのマイケル・セリグ(Michael Selig)委員長は27日の発表で、こうした市場を監督する権限は議会からCFTCに与えられていると強調した。
Kalshiは「政治的な行き過ぎ」と反発
今回の刑事訴追に対し、Kalshiは声明で「とんでもない行き過ぎだ。ユタ州は明らかに政治的な動きをしている」と批判。アリゾナ州での刑事手続きを連邦裁判所で阻止したのと同様に、法廷で対抗する姿勢を示した。
CFTCの広報担当者も、スポーツ専門メディアのフロント・オフィス・スポーツ(Front Office Sports)に対し、ユタ州司法長官がCFTC登録取引所に「恥ずべき威圧的手法」を用いたと非難した。
一方、ユタ州司法長官事務所は、CFTCによる提訴と刑事訴追のタイミングが重なったのは偶然であり、数カ月に及ぶ捜査の結果だと説明している。地元公共ラジオKUERが報じた。
なお、アリゾナ州の刑事手続きは、連邦地裁が一時差し止めている。ただし、州側はこの判断を争っている。
ユタ州ではすでに連邦地裁が州の賭博法の適用を認める判断を示しており、CFTCによる新たな訴訟が今回の刑事手続きにどう影響するかが焦点となる。
スポーツ賭博法に詳しいダニエル・ウォラック(Daniel Wallach)弁護士はAP通信に対し、ユタ州の対応が他州によるKalshiやポリマーケット(Polymarket)への規制対応を占う試金石になる可能性があるとの見方を示している。
予測市場をめぐる州と連邦政府の規制権限争いは、最終的に連邦最高裁判所で争われる可能性もある。
なお、日本国内から海外のオンライン賭博サービスを利用して賭博を行うことは、国内法に抵触する可能性がある。海外で合法的に運営されているサービスであっても、日本国内からの利用が適法になるとは限らない。
参考:ユタ州司法長官事務所・ ユタ州司法長官事務所・ユタ州司法長官事務所・CFTC・ CFTC・米政府による訴状(PDF)・Reuters・ AP通信・KUER・Front Office Sports
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