カルダノ「レイオス」、次期ハードフォーク「ダイクストラ」で導入へ。処理能力15倍への拡大目指す

ハードフォーク後に段階的に有効化、メインネットでの検証結果に応じて処理能力を引き上げ

カルダノ(Cardano)の開発を手がけるインプット・アウトプット・グループ(Input Output Group:IOG)が、同ブロックチェーンの新たなコンセンサスプロトコル「ウロボロス・レイオス(Ouroboros Leios)」を次期ハードフォーク「ダイクストラ(Dijkstra)」で導入する計画を10月20日に発表した。

導入初期には現行の約3〜5倍、その後はメインネットでの検証結果に応じて約10〜15倍まで取引処理能力を拡大することを目指す。ただし、ハードフォークだけでレイオスが稼働するわけではなく、ステークプール運営者による投票用キーの登録などが必要となる。メインネットでの具体的な実施日は示されていない。

コンセンサスプロトコルとは、ブロックチェーンの参加者が取引の記録について合意するための仕組みだ。IOGが示した計画では、レイオスの導入は5段階で進められる。まず、カルダノの憲法に新たなプロトコルパラメータと安全上の制約を追加する。プロトコルパラメータとは、ネットワークの動作を調整する設定値で、憲法の更新によってハードフォーク後にガバナンスを通じた変更が可能になる。

次に、ブロックチェーンのルールを変更するネットワークアップグレード「ハードフォーク」によって、ダイクストラが導入される。これにより、レイオスのプロトコルルールが利用可能になる。その後、ステークプール運営者(SPO)が、エンドーサーブロックへの投票に使用する暗号鍵「BLSキー」を登録する。ステークプールは、暗号資産(仮想通貨)ADAの保有者から委任されたステークをもとにブロック生成に参加する仕組みで、SPOが運営する。

レイオスの稼働開始には、委任済みステークの約90〜95%に相当するBLSキーの登録が必要になる見込みだ。これは、従来のブロックだけでは収まりきらない取引を扱う「エンドーサーブロック」の認証に、ブロック生成に参加する有効なステーク量(アクティブステーク)の75%以上に相当する投票が必要となるためだ。ただし、実際の運用ではオフラインのステークプールや投票の遅延も考慮する必要があり、正確な有効化要件は最終調整中とのことだ。

稼働開始後には、メインネットで計画的に大量のトランザクションを発生させる高負荷テストが予定されている。具体的には、ブロックの伝播時間や投票の応答時間、証明書の生成状況などを検証する。メインネットには世界各地に約2,700の登録済みステークプールが存在し、各運営者の機器や通信環境も異なる。そのため、テストネットでは再現しきれない条件を確認しながら、段階的に処理能力を引き上げる計画だ。

処理能力の拡大には、少なくとも2回のプロトコルパラメータ更新が予定されている。各更新には、ADA保有者から投票権を委任された代表者やSPO、憲法委員会によるガバナンス上の承認が必要となる。一方、追加のハードフォークは不要で、パラメータの変更によって処理能力を調整できる。さらに、今回示された目標を超える拡大については、ネットワーク需要や開発者のニーズ、経済的な条件などを踏まえて判断される。

カルダノは現在、コンセンサスプロトコル「ウロボロス・プラオス(Ouroboros Praos)」を採用している。プラオスでは平均約20秒に1回、ステークプールがブロックを生成する権利を獲得する。新しいブロックは次のブロックが生成される前にネットワーク全体へ伝播する必要があり、メインネットではそのために約5秒が確保されている。ブロックが大きすぎると伝播が遅れ、一時的な分岐が発生するリスクが高まる。そのため、ブロックの容量を増やすだけでは処理能力を大幅に拡大できない。

現在のプラオスの処理能力上限は、約4.5TxkB/sだ。TxkB/sは、1秒間に処理できるトランザクションデータ量をキロバイト単位で表した指標を指す。また、プラオスでは処理待ちのトランザクションを保持する「メモリプール」の容量が約2ブロック分に制限されている。取引需要の急増によってメモリプールがいっぱいになると、ネットワークに参加するコンピューターである「ノード」は新しいトランザクションを受け付けなくなり、ウォレット側で再送信が必要になる。

こうした制約に対応するため、レイオスでは従来のプラオスで使われているブロックを「ランキングブロック」として維持しながら、新たにエンドーサーブロックを利用する。ランキングブロックは従来のブロックに追加のヘッダー情報を設けたもので、処理待ちのトランザクションが自身の容量を超える場合に、エンドーサーブロックの存在を通知できる。一方、エンドーサーブロックには追加のトランザクションそのものではなく、それらへの参照情報が格納される。

各ノードは、この参照情報をもとにトランザクションを取得して検証する。その後、ステークプールによる委員会がBLS署名を使って投票する。BLS署名は、複数の電子署名を1つにまとめられる方式だ。必要な投票が集まると、署名を集約した証明書が生成される。この証明書が後続のランキングブロックに含まれることで、エンドーサーブロックのトランザクションが台帳に反映される。これにより、従来のブロック生成の仕組みを維持しながら、より多くのトランザクションを処理できるようになる。

ただし、レイオスは個々のトランザクションの処理時間を一律に短縮するものではない。ランキングブロックに直接含まれるトランザクションは従来と同じ速さで取り込まれる一方、エンドーサーブロックを経由する場合、台帳への反映には約45〜60秒かかる見込みだ。また、レイオスではメモリプールの容量も拡張する。これにより、取引需要が集中した際にトランザクションの受け付けが拒否されるケースを減らし、利用者が再送信を繰り返す負担の軽減を目指す。

このほか、ダイクストラでは、1つのトランザクションに別のトランザクションを含められる「ネストされたトランザクション」や、アカウント機能の強化、ガードスクリプトなども導入される予定だ。さらに、スマートコントラクトの実行に関する新バージョン「プルータスV4(Plutus V4)」や、投票権の委任を条件としないステーキング報酬の引き出しなども導入対象となっている。これらの機能はハードフォークとともに導入され、レイオスの処理能力引き上げを待つ必要はない。

なお、カルダノの技術開発やガバナンスを支援するインターセクト(Intersect)は8月、ダイクストラの導入を2段階で進める計画を示していた。第1段階ではレイオスを導入し、第2段階では取引確定時間の短縮を目指す「ウロボロス・ペラス(Ouroboros Peras)」を追加のハードフォークによって有効化する予定だ。開発完了の目標時期はそれぞれ2026年第4四半期と2027年第2四半期だが、メインネットへの導入時期はテストやガバナンス上の承認によって変わる可能性がある。

 

参考:インプット・アウトプット・グループ
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

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