LTCMAでビットコインの10年リターンを初めて提示
米資産運用大手JPモルガン・アセット・マネジメント(J.P. Morgan Asset Management)が、暗号資産(仮想通貨)「ビットコイン(BTC)」の今後10年間のリターンについて、基本シナリオで年率10.0%を想定した。同社が10月19日に公表した長期市場見通しレポート「2027 Long-Term Capital Market Assumptions(LTCMA)」で示した。
同レポートの米ドル建ての年率複利リターン予測では、米国大型株は7.5%、金は5.5%となっている。ビットコインの基本シナリオにおける想定リターンは、米国大型株と金の想定リターンを上回る水準となっている。年率複利リターンとは、複数年間の運用成果を複利ベースで1年あたりの収益率に換算したものだ。
同社がLTCMAでビットコインの長期リターンの範囲を示すのは、今回が初めてとなる。同社は9月30日時点のデータに基づく分析で、10年間の年率リターンを弱気シナリオではマイナス11.2%、強気シナリオでは16.6%とした。
同社は試算に、「ビットコインの供給増加と米ドル・世界全体の通貨供給との関係」、「金を補完する資産としての投資需要」、「ビットコインのネットワーク利用拡大」の3つの枠組みを用いた。同社は、各枠組みの前提への確信度に応じ、分析結果をそれぞれ65%、30%、5%の比率で加重した。
一方、同社が比較表に示したビットコインの年率ボラティリティ(価格変動の大きさ)は55.0%だ。米国大型株の18.0%、金の17.2%を大きく上回る。同社は、これらのボラティリティを過去のデータに基づいて算出している。
また同社は、ビットコインと他資産との相関が不安定であるため、現時点ではバランス型ポートフォリオの分散投資先としての役割は明確でないと指摘した。同社は、各資産の値動きの関係を分析する主要な共分散行列には、ビットコインを組み入れていない。今回は別の表で、ビットコインと主要資産のリターンやボラティリティ、相関を比較した。
同社はビットコインを、投機的な資産であり、金融緩和に対するヘッジと位置付けた。10年先の予測を作成すること自体は時期尚早としつつ、起こり得るリターンの幅を検討するために今回の分析を行ったと説明している。
同社は、他資産との相関が安定し、ビットコインのボラティリティが低下すれば、資産配分におけるビットコインの有用性が高まる可能性があるとした。規制の明確化や市場の厚み、流動性、価格形成の改善も、その活用を後押しする可能性があると説明している。
なおLTCMAは、同社が今後10〜15年間の戦略的な資産配分の参考として毎年公表する調査だ。世界の90人超の運用担当者やエコノミストらが参加し、200超の資産を20超の基準通貨で分析している。今回が31回目となる。ビットコインの個別分析の対象期間は10年間だ。
JPモルガンAMは今回のレポートで、各国が安全保障や経済の強靱性を重視する「経済ナショナリズム」、AIなどの技術の普及、国内投資の増加に伴う資本の流れの変化を主要テーマに据えた。同社は、AIの普及と設備投資が成長や企業利益を支える一方、インフレの変動は大きくなると見込んでいる。
同社は米国の長期的な実質GDP成長率予測を、前年版の1.8%から2.1%に引き上げた。また、世界の債券の長期リターン見通しは約20年ぶりの高水準になったと説明している。
同社は資産配分の分析で、世界株式60%・米国債券40%のポートフォリオの想定リターンを、米ドル建てで年率7.0%とした。一方、株式と債券の相関が高まるとして、不動産やインフラ、ヘッジファンドなどを含めた分散の重要性を強調している。同社が示した世界株式40%・米国債券30%・代替資産30%の構成では、米ドル建ての想定リターンは年率7.5%となる。
同社はさらに、気候変動による資産の損失がGDPに十分表れない場合がある点も分析した。被害の負担先や価格転嫁の可否、復旧・適応投資の受益企業を見極める重要性を論じている。