スタークネット、L1移行を検討。2027年の完全な量子耐性実現目指す

イーサリアムへの依存見直し、独立したネットワークへの移行も選択肢に

イーサリアム(Ethereum)のレイヤー2(L2)ネットワーク「スタークネット(Starknet)」のレイヤー1(L1)への移行が積極的に検討されている。同ネットワーク公式Xより10月8日に明らかにされた。L1への移行によって、完全な量子耐性を備えた初のネットワークを目指すとのこと。なお量子耐性の実現目標として、2027年が掲げられている。ただし、L1への移行は現時点で検討段階にあり、正式には決定されていない。

スタークネットは、イーサリアムの処理能力を拡張するために開発されたL2ネットワークだ。L1は独立したブロックチェーンとして取引の検証や記録を行うのに対し、L2は取引処理の一部をL1の外部で行い、その結果をL1に記録することで処理能力の向上や取引手数料の削減を図る。スタークネットは、L2側で処理した取引の結果をイーサリアムに記録し、その正しさを示す証明をイーサリアム上で検証する仕組みを採用している。このため、ネットワークの安全性はイーサリアムにも依存している。

今回の発表に関連し、スタークネットの開発を主導するスタークウェア(StarkWare)の共同創業者兼CEOであるイーライ・ベン=サッソン(Eli Ben-Sasson)氏も同日、自身のXアカウントでL1への移行について言及した。同氏は、量子コンピューターの脅威が想定よりも早く現れる可能性を指摘したほか、人工知能(AI)の進歩によって、これまで安全だと考えられていた仕組みが破られる可能性にも懸念を示した。そのうえで、ブロックチェーンには将来の脅威に備える「バンカーモード(厳重な防御態勢)」が必要だと訴えた。

量子コンピューターによる脅威については、将来的にブロックチェーンで利用される一部の暗号技術が破られる可能性が指摘されている。例えば、ブロックチェーンでは利用者が取引を承認するために電子署名を使用するが、十分な性能を持つ量子コンピューターが実現すると、一部の電子署名方式が破られ、第三者による不正な取引が可能になるおそれがある。

一方、スタークネットは、ゼロ知識証明技術の一種である「ZK-STARK」を採用している。ZK-STARKは、計算をすべてやり直すことなく、その結果が正しいと検証できる技術だ。また、量子コンピューターによる攻撃に弱いとされる楕円曲線暗号ではなく、ハッシュ関数を基盤としているため、量子耐性を備えた設計となっている。ただし、ブロックチェーン全体の安全性は、取引結果の証明だけでなく、利用者の電子署名やネットワーク間の通信などに使われる暗号技術にも左右される。

こうした課題への対応に向け、スタークウェアは6月30日、スタークネットの量子耐性を強化する3段階のロードマップを公開した。第1段階では新たな取引やスマートコントラクトなどで使用する暗号技術を更新し、第2段階では既存のスマートコントラクトを量子耐性に対応させるための仕組みを整備する計画だ。また、スタークネットには、利用者がアカウントの電子署名方式を柔軟に変更できる仕組みが備わっている。これは、暗号技術を必要に応じて変更できる「クリプト・アジリティ(Crypto Agility)」と呼ばれる考え方に通じるものだ。この仕組みにより、利用者はネットワーク全体の一斉更新を待たずに、量子耐性を備えた電子署名へ切り替えることも可能となっている。

一方、第3段階では、スタークネットとイーサリアムの間で情報をやり取りするブリッジや、取引データをイーサリアムに公開する仕組みの量子耐性への対応が必要となる。これらにはイーサリアム側の暗号技術が使われているため、スタークウェアは6月のロードマップで、イーサリアムの移行に合わせて対応を進める方針を示していた。

今回、ベン=サッソン氏がX投稿に添付した講演資料には、「イーサリアムの対応が遅すぎるなら、スタークネットはL1になる」との文言が記載された。この記述からは、イーサリアム側の量子耐性への対応が遅れた場合に、独立したL1へ移行することで対応を進める選択肢が示されたと読み取れる。

また、同資料には「移行ロードマップ」の項目も掲げられていた。ただし、今回の発表では、6月のロードマップを正式に変更したとの説明はなく、L1への移行に関する具体的な技術設計や詳細な移行日程も明らかにされていない。

 

画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

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