米FinCEN、暗号資産のウォレット規制案を撤回。ミキシングのマネロン懸念認定も取り下げ

第1次トランプ政権末期に提案されたウォレット規制

米財務省の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)が、暗号資産(仮想通貨)に関する2つの規則案を撤回すると10月5日に発表した。

撤回されるのは、暗号資産とアンホステッドウォレットが関わる一部取引について、記録保持や本人確認、報告義務を課す規則案と、暗号資産ミキシングを「主要なマネーロンダリング懸念」と認定し、特別措置を課す規則案だ。

両措置の撤回通知は10月6日付の米官報(Federal Register)に掲載される予定だ。

FinCENは今回の判断について、提出されたパブリックコメントを検討したうえで、トランプ政権による規制緩和方針や、デジタル資産規制を目的に見合ったものにする取り組みの一環だと説明している。

1件目は、第1次トランプ政権末期の2020年12月23日に官報に掲載された規則案だ。

同案は、暗号資産取引所などの金融機関を介さず、利用者自身が秘密鍵を管理する「アンホステッドウォレット(セルフカストディ型ウォレット)」などとの取引について、銀行やマネーサービス事業者(MSB)に追加の義務を課す内容だった。

具体的には、対象となるウォレットとの間で1万ドルを超える取引を行う場合、または同一人物による、もしくはその人物のために行われたと金融機関が把握している複数取引の受入額または払出額が、24時間以内に合計1万ドルを超える場合、取引や取引相手に関する情報をFinCENへ報告し、顧客本人を確認することを求めていた。

また3000ドルを超える取引についても、取引や取引相手に関する情報の記録保持と、顧客本人の確認を求める内容だった。

対象にはアンホステッドウォレットに加え、FinCENが指定する外国法域にあり、米銀行秘密法(BSA)の適用を受けない金融機関が管理するウォレットも含まれていた。

今回の撤回通知でFinCENは、2025年7月にホワイトハウスの「デジタル資産市場に関する大統領作業部会」がまとめた報告書にも言及。そのうえで、同規則案について今後追加の措置を取らないとしている。

2件目は、バイデン政権下の2023年10月23日に官報に掲載された措置だ。

FinCENは米愛国者法311条に基づき、「国際的な転換可能な暗号資産(CVC)ミキシング」に関わる取引類型を「主要なマネーロンダリング懸念(primary money laundering concern)」と認定。そのうえで、金融機関に記録保持や報告を求める特別措置を提案していた。

今回FinCENは、この認定と規則案の双方を撤回する。

同案では「ミキシング」を、暗号資産取引の送金元、送金先、金額を不明瞭にする行為として広く定義していた。

複数の利用者やウォレットから暗号資産をプールする行為のほか、送金を複数の取引に分割すること、使い捨てウォレットを利用すること、暗号資産同士を交換すること、利用者が取引を遅延させる仕組みなども例示されていた。

対象となる取引について金融機関には、送金額や暗号資産の種類、利用されたミキサー、顧客に関連するウォレットアドレス、トランザクションハッシュ、IPアドレスなどの情報を報告することが求められる予定だった。

FinCENは撤回通知で、前述の大統領作業部会報告書が「合法的なデジタル資産利用者がパブリックブロックチェーン上でプライベートに取引できる能力」を支持している点を引用した。 

またパブリックコメントでは、ミキシングの定義が広すぎれば正当な取引まで萎縮させるおそれがあることや、金融機関に大きな報告負担を課す可能性があることなどが指摘されていた。 

FinCENはこうした懸念も考慮し、今回の撤回を決めたとしている。

一方FinCENは、不正行為者が捜査を妨げる目的でミキサーなどを利用しているとの認識は維持している。

今後もミキサーに関連する活動について、マネーロンダリングやテロ資金供与、その他の不正金融の兆候を監視し、必要に応じて将来的に適切な措置を取る可能性があるとしている。

コイン・センターは撤回を歓迎

今回の撤回について、両規則案に長年反対してきた米暗号資産政策団体コイン・センター(Coin Center)は歓迎の意向を示している。

一方、暗号資産メディア「ディクリプト(Decrypt)」によると、コイン・センターのエグゼクティブ・ディレクターであるピーター・ヴァン・ヴァルケンバーグ(Peter Van Valkenburgh)氏は、同様の規則を将来的に策定するための法的権限そのものは残っていると指摘している。

参考:FinCEN発表・報道
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

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