米カリフォルニア州、公職者のミームコイン発行禁止へ

トランプ氏の「TRUMP」念頭に

米カリフォルニア州のギャビン・ニューサム(Gavin Newsom)知事が、州・地方の公職者や、所属する州・地方政府機関の入札・契約について意思決定権限を持つ公務員によるミームコインの発行を禁止する州議会法案「AB 2409」に9月27日に署名した。

同州知事室は、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が2025年に発行した公式ミームコイン「TRUMP」を引き合いに出し、公職者がその立場を利用して利益を得ることを防ぐ狙いを強調している。

AB 2409は、アベリーノ・バレンシア(Avelino Valencia)州下院議員が提出した法案だ。同法は、デジタル資産サービス事業者に対し、2027年1月1日以降に発効される。連邦政府の公職者または州・地方の公職者が提供、もしくは公職者と提携して提供するミームコインを、カリフォルニア州の住民向けに売買可能な状態で上場することを禁じる。

なお知事室は発表で「公職者の肖像や画像を使ったミームコイン」の上場を防ぐ法律と説明しているが、成立したAB 2409の最終条文では、対象を公職者が「提供、または提携して提供する」ミームコインと規定している。

上場規制の対象となるのは2027年1月1日以降に発行されたミームコイン。このため、2025年に発行された既存のTRUMPは同規制の対象外となる。また同法は、ミームコインそのものを全面的に禁止するものではない。

違反については、カリフォルニア州司法長官が民事訴訟を起こし、差し止めや不当利得の返還を求めることができる。

また地方検事、市法務官、郡法律顧問も、公職者や対象となる公務員によるミームコインの発行禁止に違反した場合について、同様に差し止めや不当利得の返還を求める民事訴訟を起こせる。

ニューサム知事、トランプ氏のミームコインを批判

ニューサム知事は法案への署名にあたり、「公職者がその職務から利益を得るべきではない」とコメント。州内でこうした利益相反が生じることを防ぐため、保護策を強化するとした。

知事室は今回の発表を「THE OPPOSITE OF TRUMP!(トランプの正反対)」と題し、トランプ政権や同氏の暗号資産ビジネスを批判している。

背景には、トランプ氏の公式ミームコイン「TRUMP」を巡る購入者の損失がある。

米紙「ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)」が7月4日に報じた、ブロックチェーン分析企業ナンセン(Nansen)の分析によると、「TRUMP」を購入した約148万ウォレットのうち、2026年6月末時点で98万8,905ウォレットが損失を抱えていたという。これは購入ウォレット全体のおよそ3分の2にあたる。

これらのウォレットの実現損失と含み損の合計は約38億1,000万ドル(約5,990億円)となる。

一方、49万2,285ウォレットは合計約40億4,000万ドル(約6,360億円)の利益を上げており、利益はトークン発行直後に低価格で購入した初期参加者に集中していたとされている。

またトランプ氏の2025年分の財務開示では、TRUMPに関するライセンス契約から、約6億3,500万ドル(約1,000億円)のロイヤルティ収入が報告されている。カリフォルニア州知事室は、購入者が「30億ドル超(約472,0億円)」の損失を被った一方で、トランプ氏が約6億3,600万ドルを得たとして同氏を批判している。

なおニューサム知事自身も2025年8月、トランプ氏を風刺する「Trump Corruption Coin」と呼ぶミームコインの構想に言及していた。

同氏は当時、トランプ氏の暗号資産ビジネスを風刺する目的で構想を説明していたが、AB 2409の適用開始後は、ニューサム氏を含むカリフォルニア州の公職者自身によるミームコインの発行は禁止されることになる。

暗号資産犯罪の被害回復制度も整備

ニューサム知事は同日、暗号資産を利用したマネーロンダリングや詐欺への対応を強化する上院法案「SB 1208」にも署名した。

同法は、一定のデジタル資産を用いた取引をマネーロンダリング規制の対象に加えるとともに、犯罪に関連するとみられるデジタル資産を捜査当局が令状に基づいて差し押さえるための手続きを整備する。

差し押さえ後、検察当局が没収手続きを開始する場合は、検察当局は所有権を主張する可能性のある人物などに通知し、裁判所で権利を主張する機会を設ける。

その後、没収された資産は被害者への返還に充てられ、分配されずに残った資産は一定の手続きを経て州の被害者支援基金「Restitution Fund」に繰り入れられる。

なお、デジタル資産を対象としたこれらの主要規定は2032年1月1日までの時限措置となっている。

このほかニューサム知事は同日、公演の中止・延期時におけるチケット代金の払い戻しや投機目的のチケット販売を規制する「AB 1349」、飲食店の予約枠の無断転売を規制する「AB 1640」、公営ゴルフ場の予約枠を巡る転売対策を定める「AB 1954」、個人情報保護を強化する「SB 923」など、消費者保護や政治倫理に関する複数の法案に署名した。

参考:カリフォルニア州知事室・AB 2409(最終条文)・ SB 1208(条文)・The Block・Politico
画像:PIXTA
 

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

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