アーサー・ヘイズ、FIMA活用による円高シナリオ提示。ドル流動性拡大でBTC上昇予想

アーサー・ヘイズがFIMA活用による円高シナリオ提示

暗号資産(仮想通貨)取引所ビットメックス(BitMEX)共同創業者で、投資会社メイルストローム(Maelstrom)の最高投資責任者(CIO)を務めるアーサー・ヘイズ(Arthur Hayes)氏が、「Yen-quake」と題したブログ記事を8月11日に公開した。同氏は、日本円の上昇を巡る見方と、それがビットコイン(BTC)など暗号資産市場へ与える影響について論じた。

ヘイズ氏は、長年の金融緩和によって円安が進み、円が世界の資金調達通貨として利用されるようになったと説明した。その結果、低金利の円を借りて海外資産へ投資する「円キャリートレード」が世界の金融市場を支えてきたとの見方を示した。一方で、現在は日米双方で円安を是正する動きが強まっており、その実現方法が今後の金融市場を左右するとの見方も示した。

そのうえで同氏は、日本円を押し上げる方法として、「日銀による大幅利上げ」「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)など国内機関投資家による海外資産の売却」「日本の財務省(MOF)が管理する米国債を活用した円買い支え」の3つを挙げた。

同氏は、「日銀による大幅利上げ」について、日銀が大量の日本国債を保有しているため、急速な利上げは国債価格の下落や評価損の拡大につながることから現実的ではないと説明した。また、「国内機関投資家による海外資産の売却」についても、GPIFは日本の公的年金を運用する世界最大の年金基金であり、そのような機関が大量の米国資産を売却すれば米国市場への影響が大きいため、実現は難しいとの見方を示した。

一方、ヘイズ氏は3つ目の「米国債を活用した円買い支え」を最も現実的な選択肢と位置付けた。その中核となるのが、米連邦準備制度(Fed)の「FIMAレポ・ファシリティ(Foreign and International Monetary Authorities Repo Facility)」だ。

FIMAレポ・ファシリティは、ニューヨーク連邦準備銀行(ニューヨーク連銀)に保管口座を持ち、Fedの承認を受けた外国の中央銀行などの公的機関が、同連銀に保管する米国債を一時的にFedへ売却し、満期時に買い戻すことでドルを調達できる制度だ。取引期間は翌日物または7日間で、現行の1取引先当たり利用上限は600億ドルとなっている。

ヘイズ氏は、日本の財務省が管理する米国債を活用し、FIMAレポ・ファシリティを通じてドルを調達するシナリオを示した。具体的には、そのドルを外国為替市場で売却して円を購入し、円高を促す構想だ。さらに、調達した円を日本国債や日本株への投資に充てる構想も示した。

また同氏は、米財務長官スコット・ベッセント(Scott Bessent)氏が、FedによるFIMAレポ・ファシリティの1取引先当たり上限引き上げの検討は合理的だと発言し、日本政府の利用意向を歓迎したことや、日本財務省が米国当局と協調して円高を進める姿勢を示していることから、このシナリオが現実味を帯びているとの見方を示した。ただし、現時点でFIMAレポ・ファシリティの上限引き上げや利用対象の拡大は決定していない。

ドル流動性拡大でBTCやETHに強気見通し

ヘイズ氏は、今回のシナリオで重要なのは円高そのものではなく、FIMAレポ・ファシリティの利用によってFedのバランスシートが拡大する点だと説明した。同氏は、FIMAの利用残高が存在する間はFedのバランスシートが拡大し、一時的なドル流動性の増加につながるとして、ビットコインや金などの価格を押し上げるとの見方を示した。

また同氏は、日本の米国債保有額を1兆1,430億ドル、GPIFの保有分を約2,300億ドルとして、合計約1兆3,730億ドルと試算した。ただし、1兆1,430億ドルは米財務省の国際資本統計(TIC)における日本全体の米国債保有額であり、日本政府のみの保有額ではない。このため、GPIFの保有分を単純に加えると重複計上となる可能性がある。

また、現行制度では1取引先当たりの上限が600億ドルで、ヘイズ氏自身もGPIFを利用対象に含めるには制度変更が必要だと説明している。このため、1兆3,730億ドルは現行制度で調達可能な金額ではなく、上限撤廃や利用対象拡大を前提として同氏が示した理論上の規模となる。同氏はこの規模を、新型コロナウイルス禍でFedのバランスシートが約4兆ドル拡大した局面と比較している。

個別銘柄では、イーサリアム(Ethereum)について、2025年に過去最高値を更新できなかった主要暗号資産である一方、現実資産(RWA)のセキュリティレイヤーになるとの見方を示した。

また、合成ドル「USDe」を発行するエセナ(Ethena)のガバナンストークン「ENA」にも言及した。同氏は、ドル流動性の増加を受けてビットコイン価格が上昇し、現物と先物の価格差から得られるベーシス利回りが拡大すれば、USDeへの資金流入が進み、ENAは5〜10倍上昇する可能性があるとの見方を示した。

一方、ヘイズ氏は現時点では、自身らのドル残高を最小限まで減らすほど本格的な投資には踏み切っていないと説明した。FIMAレポ・ファシリティの利用上限や適格取引先に関するルールが変更されるまでは、本格的なポジション変更を待つ考えも示した。

参考:ブログ
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

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