(クリプトガレージ COO&CBO加藤岬造氏コメント追記)デジタルガレージ子会社が機関投資家向け決済プラットフォーム「SETTLENET」と円建ステーブルコイン「JPYS」を開発

追記:6月11日午前6時

デジタルガレージ子会社が機関投資家向け決済プラットフォーム「SETTLENET」と円建ステーブルコイン「JPYS」を開発

株式会社デジタルガレージの子会社で、フィンテック分野におけるブロックチェーン金融サービス事業を展開する株式会社Crypto Garage(クリプトガレージ)が、暗号資産の大口OTC市場に特化したトレーディング会社や取引所、資産運用会社、ブローカー向け決済プラットフォーム「SETTLENET(セトルネット)」の商用サービス開始を発表

SETTLENETは、Bitcoinブロックチェーン関連分野でトップレベルの技術力と知見を持つBlockstream(ブロックストリーム)社が開発したサイドチェーン「Liquid Network」を基盤とし、トークンの所有者が所有権を移転せずに取引を行えることを前提としながら、トークンの即時グロスDvP決済を実現。同時に、事業者間で暗号資産の決済代金の支払いに利用可能な円建てトークン、SETTLENET JPY(JPYS)を発行し、スムーズな法定通貨建ての決済を提供するとのこと。

さらに、Crypto GarageはSETTLENETを構築する上で蓄積した要素技術やツール群を随時提供していく予定のようで、SETTLENETへの統合やサービス管理を簡素化するサービスとして「UTXO Manager」を提供するとのことだ。

あたらしい経済編集部は、クリプトガレージCOO&CBOの加藤岬造氏へ以下のように質問を投げかけた。

―取引所、資産運用会社、ブローカーなどが現状の決済、送金システムにどのような課題を抱いていると考えられ、SETTLENETやSETTLENET JPYを開発したのでしょうか?

暗号資産OTC市場では、共通の決済インフラが存在しないため、極めてマニュアルなオペレーションで個社毎に対応しているのが現実です。また決済の際にも暗号資産と決済代金(米ドルや日本円)を「どちらが先に送るのか」と言う問題に直面することが多いです(取引所ですと、「事前入金」が当たり前ですが、OTCでは通常約定後に決済を行います)。

当然先に送った方は、取りっぱぐれるリスクがあり、そこには大きな決済リスクが存在しています。

通常こうした決済リスクは、第三者を介することで低減することもできますが(例えばエスクローサービスなど)、やはりここにも第三者への信用リスクが生じてしまいます。

SETTLENETサービスでは、non-custodialベース(参加者は弊社に秘密鍵等を預ける必要がない)でデジタル資産の同時交換決済を実現することができ、参加者は共通のプラットフォームで、リスクを低減した形で決済を行うことができます。

弊社は本サービスを通じて、決済の非効率性を解消することで、暗号資産OTC市場の発展に貢献していきたいと考えております。

―一般的なユーザの観点からすると、そこまでブロックチェーンを用いた決済システムの需要が大きくないような気がしています。そこで市場規模などの観点から、どれほどまで暗号資産のOTC市場は伸びていくと考えられますでしょうか?

SETTLENETサービスは、暗号資産OTC市場(業者間市場)をターゲットとしており、顧客は全て法人の所謂プロに限定しております。

業者間市場は一般的には認知度の低い市場ではありますが、コンシュマー向けの販売所や証拠金取引業社が安定的に競争力のある価格を提示し続けるためには、こうした業者間市場が必ず必要になります。

外国為替で言えば「インターバンク市場(カバー市場)」ですし、鮮魚で言えば「豊洲市場」です。

したがって消費者向け市場とOTC市場は常に表裏一体の関係にあり、全体の市場規模の伸びに合わせてOTC市場も拡大することを見込んでいます。

また今後機関投資家等の参入も見込まれており、こうした参加者は直接業者間市場に参加することが多く、これも市場の拡大の一要因になると考えています。

編集部のコメント

SETTLENETの構造を理解する上で、抑えておくべき金融用語「1.即時グロス決済、2.DvP(Delivery Versus Payment)決済」がリリースで出てきましたので説明をします。

即時グロス決済とは、通貨などの決済を1件ずつ即時に行う方法で、決済の停滞が連鎖することによるシステミック・リスクを低減するための決済処理方式の一種です。

DvP決済とは、証券の引渡し(Delivery)と代金の支払い(Payment)を相互に条件を付け、一方が行われない限り他方も行われないようにすることであると日本銀行のサイトで説明されています。これは証券を引き渡したにも関わらず、代金の支払いが行われないリスクを回避するために生まれた仕組みです。

今回、円建てのステーブルコイン(JPYS)を発行したとのことですが、機関投資家などの実需はどれほどあると考えられているのか、知りたいところです。

コメント:竹田匡宏(あたらしい経済編集部)

(images:iStock /Aleksei_Derin・dalebor・antoniokhr)

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