ドラゴンフライのハシーブ、暗号資産の非金融ユースケースを巡る「長期戦」論に異議

a16zディクソン氏が暗号資産の長期戦略を示す

暗号資産(仮想通貨)の非金融ユースケースを巡り、米投資会社大手のアンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz:a16z)のゼネラルパートナーであるクリス・ディクソン(Chris Dixon)氏の論考に対し、暗号資産ベンチャーファンドのドラゴンフライ(Dragonfly)のマネージングパートナーであるハシーブ・クレシ(Haseeb Qureshi)氏が異なる見解を示した。

発端となったのは、ディクソン氏が2月7日に公開した論考「The long game for crypto(暗号資産の長期戦略)」だ。同氏は、現在「暗号資産における非金融ユースケースは失敗した」とする見方が広がっていることに対し、それは技術の本質や時間軸を誤解した評価だと主張した。

ディクソン氏は論考の中で、ブロックチェーンの本質を「所有権を組み込んだ形で、人と資本をインターネット規模で協調させる新しい基盤」と定義している。その上で、金融分野が最初に発展しているのは自然な順序であり、これは非金融ユースケースの否定を意味するものではないと説明した。

インターネットも当初は通信インフラの整備が先行し、その後にSNSや動画配信といった新たな文化・経済圏が形成された。暗号資産も同様に、決済、ステーブルコイン、分散型金融(DeFi)といった金融ユースケースを通じて、ウォレット、流動性、信頼といった基盤が整った後に、メディアやゲームなどの非金融分野が広がる可能性があるという考えだ。

また同氏は、過去数年にわたる詐欺の横行や規制の不透明さが、トークンや非金融ユースケースに対する信頼を損ねてきた点にも言及している。その上で、明確な規制枠組みが整えば、非金融ユースケースが成立する余地は再び広がり得るとの見方を示した。

クレシは「市場の需要不足」と異議

これに対しクレシ氏は、ディクソン氏の論考を引用する形で自身のXアカウントに独自の見解を投稿した。同氏は、非金融ユースケースが普及しなかった理由を、ディクソン氏の考えである「規制や環境要因」ではなく「市場の需要不足」とした。

もしディクソン氏の主張どおり詐欺や規制が主因であれば、より強い規制圧力や不正行為の集中を受けてきた金融分野こそが先に淘汰されるはずだが、実際にはビットコイン(BTC)、ステーブルコイン、DeFi、現実資産(RWA)のトークン化といった金融ユースケースは、ユーザー主導で採用が進んできたと同氏は指摘する。

一方で、Web3ゲームや分散型メディアなどの非金融領域については、投資家主導の構想やピッチデックから生まれたプロジェクトが多く、ユーザーの自発的な需要に支えられなかったと評価した。同氏は、ビットコイン誕生から約18年が経過している点を踏まえ、「それでも成立しなかった事実自体が市場の判断だ」と述べている。

両者は、現時点で暗号資産の中心が金融ユースケースにある点については共通認識を持つ。一方で、その理由付けには明確な違いがある。

ディクソン氏は、非金融ユースケースの停滞を「制度や基盤が未成熟な段階」と捉え、時間と環境整備によって状況が変わり得ると見る。これに対しクレシ氏は、「十分な試行の結果、需要が存在しないことが示された」と解釈する。論点は、非金融ユースケースが将来に向けた未開拓の可能性なのか、それとも市場によって否定された仮説なのか、という点に集約される。

今回のやり取りは、暗号資産の非金融ユースケースをどのような前提で評価するのかについて、時間軸と市場評価を巡る異なる視点が存在することを浮き彫りにした。非金融ユースケースを「いずれ花開く領域」と捉えるのか、「すでに試され、選別された領域」と捉えるのか。その解釈の違いは、今後の投資判断やプロダクト設計の前提に影響を与える可能性がある。

画像:PIXTA

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