米控訴裁判所、オープンシー元従業員によるNFTインサイダー取引の有罪判決を覆す

米控訴審がオープンシー元従業員の有罪判決を覆す

米連邦控訴裁判所が、世界最大のNFTマーケットプレイス、オープンシー(OpenSea)の元プロダクトマネジャーによる詐欺罪の有罪判決を7月31日に破棄した。検察はこの事件について、デジタル資産に関連するインサイダー取引として初になると述べた。

控訴裁は、マサチューセッツ州出身の35歳、ネイサン・チャステイン(Nathaniel Chastain)被告の主張を認め、陪審員への誤った説示により「雇用主に実質的価値を持たない情報を不正利用しただけで、倫理に反する行為として有罪判決を招いた可能性がある」と判断した。チャステイン被告は2023年5月、電信詐欺と資金洗浄で有罪となり、禁錮3か月を言い渡されていたが、それを不服として控訴していた。

今回の2対1の決定を受け、検察が再起訴に踏み切るかは不透明だ。チャスティン被告を起訴した前任者のジェイ・クレイトン(Jay Clayton)連邦検事の事務所の広報担当者は、コメントを控えている。

NFTはアート、画像、動画、テキストなどのファイル所有権をブロックチェーン上に記録する唯一無二のデジタル資産である。 ・検察によればチャステイン被告はオープンシーのトップページに掲載予定のNFT情報を盗用し、事前にそのNFTを購入。掲載後に価格上昇を待って転売し利ざやを得ていたとされている。

裁判書類によると、チャスティン被告は15点のNFTの売買で約5万7,000ドル(約859万円)を稼いだ。各取引で被告は、匿名口座に暗号資産を移した後、売却益を自身の口座へ送金していた。

起訴は、NFT市場規模が年間で約400億ドル(現在のレートで約6兆2,400億円)に達した2022年6月に行われた。

スティーブン・メナシ(Steven Menashi)巡回判事は、「地裁判事が陪審員に対し『電信詐欺で有罪とするには、チャステイン被告がオープンシーに商業的価値を持つ情報を盗んだという証明は必要ない』と指示したのは誤りだった」と述べた。

またメナシ巡回判事は、「地裁判事が陪審員に対し『社会およびビジネスの場で共有される基本的な誠実さと公正さという従来の概念から逸脱すれば、チャステイン被告が詐欺を企てたと認定できる』と説示した点も誤りである」と指摘した。さらに同判事は、もしその基準が適用されるならば「ほとんどすべての欺瞞行為が犯罪になり得る」と述べた。

これに対し、ホセ・カブラネス(Jose Cabranes)巡回判事は反対意見を示し、チャステイン被告の有罪判決を維持すべきだとした。

事件はマンハッタン連邦地裁のジェシー・ファーマン(Jesse Furman)判事に差し戻された。

チャステインの弁護人であるアレクサンドラ・シャピロ(Alexandra Shapiro)氏とデービッド・ミラー(David Miller)氏はそれぞれの声明で「本件は司法の誤りだった」とし、今回の判断を歓迎している。

事件名は「US v. Chastain」、事件番号は第2巡回区控訴裁判所23-7038号である。

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
US appeals court overturns first NFT insider trading conviction
(Reporting by Jonathan Stempel in New York, editing by Deepa Babington)
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
画像:Reuters

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大津賀新也

「あたらしい経済」編集部
副編集長
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

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ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

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