クウェートで暗号資産マイナーが一斉摘発
クウェート政府は、停電の原因となっている電力危機の「主要因」と非難される暗号資産(仮想通貨)のマイニング事業者に対し、取り締まりを開始した。気温が急上昇する夏の到来を前に、電力網への負担を軽減する狙いがある。
同国の内務省の発表によると当局は4月25日、暗号資産マイニングに使用されている住宅を標的とした「広範な」治安作戦を開始したという。同省はマイニング行為が違法であるとした声明を4月22日に発表していた。
同省は「暗号資産のマイニング活動は電力の不法な使用にあたり、住宅地、商業施設、サービスエリアに停電を引き起こすおそれがあり、公共の安全に対する直接的な脅威をもたらす」と述べた。
クウェートでは暗号資産の取引が禁止されているが、マイニングに関する明確な法律は存在しない。
石油輸出国機構(OPEC)加盟国であるクウェートは、人口増加、都市の拡張、気温の上昇、発電所の保守遅延などが重なり、深刻な電力危機に直面している。
同国では電気料金が極めて安く、政府は猛暑の中で冷房需要が高まることによる電力網への過負荷を避けるため、住民に対して電力の浪費を控えるよう呼びかけている。
ただし、暗号資産マイニングが電力危機の「主要因」であるものの、唯一の要因ではないと、クウェートの電力省の関係者はロイターに語っている。
暗号資産のマイニングは膨大な計算能力を必要とするため、コソボやロシアなど各国の当局が電力不足を防ぐ目的でその使用を制限してきた。マイナーは一般的に電力の安い地域や、サーバーの冷却がしやすい寒冷地に拠点を置く傾向がある。
ケンブリッジ大学の研究者らは、2022年時点においてクウェートは世界のビットコインマイニングのうちわずか0.05%を占めていたと推定している。
クウェート国内でマイナーがどれほど電力を使用しているかの正確なデータは存在しないが、暗号資産の電力消費を追跡するリサーチプロジェクト「ディジコノミスト(Digiconomist)」の創設者アレックス・デ・フリース・ガオ(Alex de Vries-Gao)氏は、「世界全体のビットコインマイニングネットワークにおけるごくわずかな割合であっても、電力消費量が比較的小さいクウェートにとっては重大な影響を及ぼし得る」と述べた。
今回の取り締まりは、クウェート南端のアルワフラ(Al-Wafrah)地域にある住宅を標的として行われた。電力省によると、同地域では以前から約100軒の住宅でマイニングが行われており、中には通常の20倍の電力を消費していたケースもあるという。先週の作戦後、アルワフラ地域の電力消費は55%減少したと、電力省は4月26日に発表した。
かつてクウェートの通信・情報技術規制庁(Communications and Information Technology Regulatory Authority)で執行役員を務めていたサウド・アル・ザイド(Saud Al-Zaid)氏は「彼らは政府の補助金、監視の欠如、そして明確な法規制の不在を見て、状況を自らの利益のために悪用した」と述べた。
クウェートの中央銀行は、暗号資産への投資について警鐘を鳴らしている。なおクウェートの対応は、同地域の一部の国々とは異なり、暗号資産業界を積極的に受け入れる姿勢は見せていない。
今週ドバイでは大規模な暗号資産イベントが開催されており、米大統領ドナルド・トランプ(Donald Trump)氏の息子であるエリック・トランプ(Eric Trump)氏も出席している。
※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
Kuwait cracks down on cryptocurrency mining amid power crisis
(Reporting by Ahmed Hagagy; Additional reporting by Elizabeth Howcroft; Writing by Yousef Saba; Editing by Tommy Reggiori Wilkes and Freya Whitworth)
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
画像:Reuters