米上院議員がトランプ関連のETF監督巡りSECに懸念表明
米民主党のエリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)上院議員が、米証券取引委員会(SEC)に対し、ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領が設立・過半数を保有する企業による上場投資信託(ETF)の監督計画について質問する書簡を4月25日に送付した。利益相反の懸念を理由としている。
ウォーレン氏は、ロイターが確認したポール・アトキンス(Paul Atkins)SEC委員長宛ての書簡で、トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ(Trump Media & Technology Group:TMTG)およびトランプ大統領の経済的利益に関するすべてのSECの決定と行動は、大統領および政権からの不適切な政治的干渉や影響を排除する形で慎重に管理されるべきだ」と述べた。
米上院銀行委員会の筆頭民主党議員であるウォーレン氏は、TMTGとETFやその他の投資商品(中にはデジタル資産を含む)を取り扱う予定の暗号資産企業との取引に関するすべての通信記録を保存するようアトキンス氏に要請した。
ウォーレン氏は、TMTGがSEC承認を必要とする投資商品の販売計画を発表したことについて、「現職大統領が自身が支配する機関に対し、自身が支配する投資を承認するよう求めるという、極めて異例の利益相反である」と指摘した。
さらにウォーレン氏は、「大統領はSECのような独立機関に対して、自らの決定権を主張しようとしてきた」とも述べた。
これに対しTMTGはロイターへの電子メール声明で、「ウォーレン上院議員は、株式市場における実際の汚職や違法な裸売りを阻止する行動を取る代わりに、ヘッジファンド経営者や裕福な寄付者を擁護し、アメリカ・ファースト企業を嫌がらせと脅迫で攻撃している」と反論した。
暗号資産分野への転換が注目を集める
共和党が米上院・下院の両院を制しているため、民主党には公聴会や正式な調査を求める権限が限られている。ウォーレン氏の書簡には、SECに対して彼女の要求に応じる法的義務を課す根拠は記されていない。書簡では5月2日までに回答するよう求められている。
TMTGによる暗号資産分野への転換は、トランプ一族がデジタル資産分野で拠点を築こうとする最新の動きであり、大統領自身が「デジタル資産の黄金時代」を約束して、規制緩和と法執行停止を推進している。
こうした動きは、大統領の家族が公式決定から利益を得る可能性があるため、政府倫理監視団体から注目を集めている。トランプ氏の当選以降、トランプ一族の新たな暗号資産事業は、手数料収入だけで数億ドル(数百億円)を得たとされている。
3週間前、民主党議員らはSECに対し、トランプ氏の新プロジェクト「ワールド・リバティ・ファイナンシャル(World Liberty Financial)」に関する記録を保存するよう求めた。これは「トランプ一族のワールド・リバティ・ファイナンシャルにおける経済的利益がSECの判断に影響を与えている可能性を明らかにするため」だという。
ホワイトハウスの報道官は当時、「トランプ大統領の資産は子供たちが管理する信託に預けられており、利益相反は存在しない」と述べた。
またトランプ・オーガニゼーション(Trump Organization)は1月に、「信託が子供たちによって管理されるため、大統領は日々の運営や意思決定には関与しない」と発表している。
TMTGは4月22日、クリプトドットコム(Crypto.com)およびヨークビル・アメリカ・デジタル(Yorkville America Digital)と提携し、小口向け投資商品(暗号資産を含む)を展開する拘束力のある契約を締結したと発表した。
トランプ一族は、TMTG株式の約60%を保有しており、その評価額は現在約30億ドル(約4,590億円)に達している。大統領の貿易戦争の影響で株式市場全体が大幅下落している中、TMTGの株価は4月2日にトランプ氏が関税強化計画を発表して以来、約40%上昇している。
ホワイトハウス、SEC、トランプ・オーガニゼーション、クリプトドットコム、ヨークビル・アメリカ・デジタルはいずれも、コメント要請に即時の応答はなかった。
※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
US senator raises concern about SEC oversight of Trump Media investment products
(Reporting By Michelle Conlin. Editing by Tom Lasseter, Aurora Ellis and Cynthia Osterman)
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
画像:Reuters