AI活用で暗号資産詐欺が2024年に過去最高を記録か=チェイナリシス

AIがクリプト詐欺の収益増やす可能性

「豚の食肉解体(pig butchering)」と呼ばれるロマンス詐欺の増加と生成型人工知能(Generative AI)の利用拡大により、2024年の暗号資産(仮想通貨)詐欺による収益は過去最高を記録する可能性が高いと、米ブロックチェーン分析企業チェイナリシス(Chainalysis)が発表した。

ちなみにこのロマンス詐欺は、デーティングアプリやSNSを通じて標的を定め、長い期間をかけて信頼関係を構築し、暗号資産投資や取引を促すものだ。詐欺により大金を詐取するために長期間接触を行うプロセスが、豚を太らせて最終的に解体処理・出荷する食肉解体業に類似していることに由来して「豚の食肉解体」と呼ばれている。

犯人が個人と関係を築き、詐欺的な計画への参加を説得する「豚の食肉解体」詐欺による収益は、2024年に前年から40%近く増加したと、チェイナリシスは2月13日に公開した報告書で推定した。

2024年の暗号資産詐欺による収益は少なくとも99億ドル(約1.5兆円)だったが、より多くのデータが収集されれば、この数字は過去最高の124億ドル(約1.8兆円)に達する可能性もあるとチェイナリシスは述べた。

「暗号資産詐欺や不正行為は巧妙さを増し続けている」とチェイナリシスの研究員は述べている。

またチェイナリシスは、「豚の食肉解体」詐欺をサポートするマーケットプレイスや生成型人工知能の利用は、詐欺師がより簡単に、より安価に事業を拡大できる要因となっていると指摘している。

実際、生成型人工知能の技術は「暗号資産詐欺を指数関数的に拡大させる可能性がある」とチェイナリシスは述べている。

詐欺による収益を特定するためにブロックチェーン上の公開取引データを追跡しているチェイナリシスによると、暗号資産詐欺活動は2020年以降、毎年平均24%増加しているという。

暗号資産、特にビットコインは、投資家が大きな利益を追い求め、ブロックチェーン技術への関心が高まったことから、ここ数年で価格と人気が急上昇している。

米国のドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領が11月の大統領選挙で勝利したことで規制環境が緩和されるとの期待から、暗号資産分野は大きく成長した。

チェイナリシスによると、特に利益率の高い詐欺には、詐欺師がブロックチェーンプロジェクトを装い、被害者の暗号資産ウォレットを乗っ取る「クリプト・ドレイナー(crypto drainers)」や、法外なリターンを約束する高利回り投資詐欺などがあった。

2024年1月には、規制当局のXアカウントが侵害された後、「クリプト・ドレイナー」が米証券取引委員会(SEC)を装った事案が発生している。

また、チェイナリシスによると、暗号資産ATMも詐欺の主なホットスポットとなっており、犯人は政府関係者やカスタマーサポートの担当者を装い、被害者に現金をATMに入金させるよう説得することが多いという。

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
Crypto scams likely set new record in 2024 helped by AI, Chainalysis says
(Reporting by Lisa Mattackal in Bengaluru; Editing by Pooja Desai)
参考:チェイナリシス

画像:Reuters

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あたらしい経済 編集部

「あたらしい経済」 はブロックチェーン、暗号通貨などweb3特化した、幻冬舎が運営する2018年創刊のメディアです。出版社だからこその取材力と編集クオリティで、ニュースやインタビュー・コラムなどのテキスト記事に加え、ポッドキャストやYouTube、イベント、書籍出版など様々な情報発信をしています。また企業向けにWeb3に関するコンサルティングや、社内研修、コンテンツ制作サポートなども提供。さらに企業向けコミュニティ「Web3 Business Hub」の運営(Kudasaiと共同運営)しています。

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